ランジェ日記 + !

ローゼンバーグで活動するランジエの日記  公式イラスト400枚以上収蔵 プチ情報や検証 ランジエチャプターを小説風に公開など 様々なコンテンツにも取り組んでおります

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Chapter 0

EP2 チャプター0 The Vortex

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「ん? 本を読んでいると思ったが・・・何だ?せっかく入れてきたお茶が冷めているのに ページは進んでいないな」

「いえ ・・・少しぼうっとしていました」

「ほー お前でもぼうっとするときがあるんだな 珍しい」

「大丈夫ですよ こう言う時は・・・長い間止まっていた世界がやっと動き始めたこの時間は 存在しないも同然ですから」

「むむ また訳の分からないことをつぶやいてるな とにかく子供が大人ぶるなんて ちっともかわいくないからな! ちぇ とにかくお疲れさん!」


(ふぅ とにかく長かったというべきか それともまさに刹那だったと言うべきか)

インフェイズフェノミンに関する記録はこれが全て ガナポリー栄光の記録が災いに変わったとき それも悲嘆に満ちた呼気に混ざり散らばってしまったからだ

振り返ってみると元より記憶とは歪曲であり 真実は神話の垢をかぶり色あせていくもの

人間の全ての歴史がそうではなかったか?

消失した文字の羅列は 結局灰のような物 未練を捨てて目を開け その扉が再び開かれる日がくるだろう

誰も知らない場所で音も無く ひとつの時代が終止符を打つ日が

「あぁ・・・直に会えるのだろうか・・・」






-ケルティカアジト-

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扉を開け 一人の兵士が入ってくる

「何だ 子供一人か? あの貴族の坊ちゃんはどこにいる?」

「こんにちは 貴族の坊ちゃん・・・・とは誰のことなのかお伺いしても宜しいでしょうか? 」

「何だ知らないのか? まったく俺は子供相手に 答えていいものか・・・とにかく民衆の友もひどいものだな 苦労したことの無い子供が一人で留守番とは はぁ」

「何か御用だったのでしょうか?」

「まったく 資料を提供するのにこんな内密になんてな チェッ 人を何だと思ってるんだか 苦しい決断をして提供しようと思ったのにな・・」

「申し訳ありません」
(貴族の坊ちゃんとはギルデンスターンの事の様だな・・ まぁこの人に自己紹介する事も無いか)

「まぁ お前みたいな子供にこんな事いってもなぁ お前たちに大人の世界はわからんだろう はぁ やっぱり提供するのやめようかなぁ~」

「・・・・ 力になれなくて申し訳ありません もしかしてカルツ商談の私兵の方と付き合いのある とても重要な方とはあなたのことでしょうか?」

「おぉ~ チビも知ってるのか? ふむ じゃあ話が変わってくるな ハッハッ それじゃあやっぱり出直してくるか ハハッ」

「さようなら」
(やはりカルツ商談の情報を持っている警備兵とはあの人か・・ 重要な話なら聞き逃しては困るが また機会があるだろう・・)



「さて 先にフルヴィオ様の所にでもいってみようかな」



-ケルティカ市民街-

外に出ると地下室に篭っていた為か 眩しいくらいに日差しが強く感じる 広場には人が多く街には活気が溢れている

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「おや お久しぶりですね お忙しかったのですか? 具合が悪いのかと心配してましたよ」

声をかけてきたのはフルヴィオ 茶色の髪をした物腰穏やかな青年である

「こんにちはフルヴィオ様 あなたは私の身の上をよくご存知じゃないですか 頻繁に訪ねてくれますがフルヴィオ様には良い事は無いと思いますよ」

「もちろんあなたの仕事に参加したり関与はしませんよ でもやはり隣人として心配くらいはさせてください 私にも大事な人はいるので危険の可能性の有る事はしませんが」

「責めているわけではありません そういうふうに聞こえたのなら申し訳ありません」

「それより面白い話を聞きましたよ 世の中に苗族というものが存在する話 伝説とされているようですが 実際に信じてる人もいるそうです」

「あぁ・・聞いたことがあります 暗い褐色の肌 紫の瞳 そして銀髪を持つ・・・と」

「見た人がいませんからね とりあえずケイレス砂漠の方には暗い肌の人が多いと聞きます 銀髪も確かに珍しいですがそこまで異彩ではないと思います そして噂ですが苗族には生存者がいるようです 後継者がいて何かを探しているとか」

「苗族に生き残りが?」

「物好きな人が残した作り話かもしれませんが・・・ 星がこの地に降りて来たような子供と呼ばれる 苗族の引導者が生きていたら まさに幻想的な童話の再現ですね」

「苗族の伝説によると星の死とともに生まれる赤子はこの地上に降りてきた人と呼ばれ 神聖な物と考えたそうですね 」

「よりによって生存者が神の武具を守ることを任せられた人だなんて・・・・」

「神の武具やら まさに信じがたい事ですね ハハ」

「調べてくださってありがとうございます おっしゃる通りただの夢のような昔話なのに 煩わせてしまったようですね」

「いいえ これくらい大したことではありません」

「また何かあればお願いします それでは・・・」

「ユスティン君! そういえばナルディーニさんが新しいお茶を手に入れたと言ってましたよ 一度行ってみてはどうですか?」

「ナルディーニさんの新しいお茶ですか・・・ それ信じても良いのでしょうか?」

「今度は大丈夫そうですから 行ってみてください 飲める代物でなければユフェミア嬢が必死に止めてくれますから」

「そうですか いつもありがとうございます」


(カモミールカフェに行ってみるか)


-カモミールカフェ-

扉を開けると賑やかな声が聞こえ 温かく優しい香りがたちこめている

ここはナルディーニがマスターをしているケルティカ広場のカフェ

ここの地下にはアジトがあるが 地下室を貸してくれている本人は特に興味がないようだ

店の中へ進むと明るい声で可憐な瞳の女性が声をかけてきた

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「カモミールカフェへようこそ! 私はカフェを管理しているユフェミアです あ こんにちは久しぶりですね? 時々お茶を買いにいらっしゃる方ですよね?」

「こんにちは」

「どうしましょう 今日はちょっとした事故があって先生がいらっしゃらないんですよ なのでお茶が品切れになっちゃって・・・」

「事故だなんて何があったんですか?」

「いえ いつもと同じパターンですよ・・まったくもう・・・ 新しいお茶を作るとかで 変な薬草を混ぜ合わせたお茶を召し上がって そのままバタンと倒れたんです はぁサビットまで一緒に具合が悪くなるなんて もうやってられませんよ!」

「・・・ 重症でなければ良いのですが 付き添わなくてもいいのですか?」

「まぁ また話が長くなってしまったわ 申し訳ありません 先生なら大丈夫ですよただの腹痛のようなので 何しろよくあることなので私も慣れてしまいました」

「そうですか・・・ それではお茶はいつ頃来れば手に入りますか?」

「お急ぎですか? 確実にいつとは言えないのですが・・・ 材料があれば用意できる・・・かも? うーんうーん」

「返答が難しければ出直します」

「あの よかったら私の頼みを聞いてくれませんか? お客さんにこんなこと無礼だとは思うんですが・・いいお茶を差し上げますから ですからちょっと手伝って下さい ねっ?」

「難しい事でなければお手伝いしますよ 私に出来ることなら」

「ウワ~ 本当にありがとうございます! 助かった~! そんなに難しい事ではありません えーっと必要な物は・・・」

「ふむ キウイシロップとフラワーゼリークリームですね・・・これぐらいなら難しくありませんね さっそく行ってきます」

「申し訳ありません お願いしますね~」

(フラワーゼリークリームなら街を出てすぐ手に入るか・・・ シロップは店で買おうとしよう・・)


-歌う森-

ケルティカから広がる大きな森 木々は揺らぎ広大な緑はどこまでも続く

精霊が住む森とも言われ 満月の夜には精霊が歌うという

最奥にはどこかへ続く道があると言われるが 広すぎる森の中でその道を見つけた者はいないという

「さて フラワーゼリッピを探すか・・・」

広く広く大きな森は自然に満ち溢れ 木々からは溢れるほどの生気を感じる

凶暴なモンスターもいないので 森の中を散歩をしている人もいるようだ

「・・見つけた! ・・・ よし・・・あとはお店でシロップを買って戻ろうか」



-カモミールカフェ-

「あ おかえりなさい! 急に無理なお願いをしてハラハラしてましたが・・ ありがとうございました」

「いえ ではお渡ししておきますね」

「あ~助かった~ これでお作りできます~!」

「お役に立てて嬉しいです」

「では少しお待ちを すぐに出来ますので!・・・・・・ ・・・はい! では約束どおりこれを差し上げますね」

そういってユフェミアが柔らかいミルクティーを差し出す ほんのりと淡い香りが広がった

「ふ~ 本当にありがとうございました 一安心です 同じ学生さんなのにどうしてこんなに違うのかしら 毎日うちでおしゃべりしている学生さんたちは 店がつぶれそうになっても見向きもしないんですよ?」

「・・・・・」
「・・・・・・・♪」

遠くの席で話を続ける学生が二人 

「知らんぷりよ まったく・・・ はぁ 毎日おしゃべりばっかり ネニャフルだか何だかはそんなにヒマなのかしら? フンッ」

「はは・・・ それでは失礼しますね」

「あ はーい! 今日はありがとうございました」

(さて 薬を貰いに病院へ行くか)


「・・・ん? どうしたのリアナ?」

「ウォルポール 今出て行った人見た? あんなに綺麗な服の人・・学院で見たこと無いわ」

「そ・・卒業生とかじゃない? うーん?」

「そうかしら? まだ若く見えるのに卒業生?」


「こら!リアナさん!ウォルポール君! 飲み終わったコップは片付けて下さい!」

「あら~ ユフェミアお姉さま 私たちこう見えてお客さんですよ~ お客さん!お忘れですか?」

「まったく・・・・同じ学生なのにどうしてこんなに違うのかしら・・・・・・」



-ケルティカ病院-

商店街の一角に並ぶケルティカ病院 小さくはあるが評判のいい病院として

貴族も訪れるといいケルティカの人々からは親しまれている

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「こんにちは セラフィス様 薬を頂きたいのですが」

「時々薬を貰いに来る方ですよね? この前の処方があったはずですので 少々お待ち下さい」

「その節はありがとうございました 急に往診に来てくださったのに まともにおもてなしもできなくて 申し訳ありません」

「大事に至らなくて幸いですよ はい どうぞお薬です」

薬を受け取ると 奥から二人何かの香りに誘われ出てくる

どうやらカフェのマスター ナルディーニと学生のようだ

「うん? この香りは天涼香? 何のお茶だ? ザビット君 何か香りがしないかね?」

「あ 本当だ でもお茶の香りではないようですよナルディーニさん」

「あ うちの店に時々きていた学生さんですね? それは何ですか? このナルディーニにも知らないお茶でしょうか?」

「こんにちは ユフェミア様が随分と心配してらっしゃいましたよ お元気そうで幸いです」

「いや・・そんなことよりなんですかそれは?」

「あぁ・・・これは・・・」

渡された薬を勝手に開けだすナルディーニに 薬師が割って入る

「二人とも!! いい香りがするのは全部お茶だと思ってるんですか!? あれはお茶ではなく薬です 薬! セラフィス様が開発した素晴らしいお薬ですっ!」

「本当に? こんな香りのいい物が薬ですって? わぁ 薬は好きではありませんが あんなにいい匂いなら僕も試飲したいくらいですね」

「とりあえず天涼香が入ってるのは確かですね? 私の鼻はごまかせませんよ」

「ハハ ナルディーニさんは本当いつ見ても活気に溢れていますね ユフェミア嬢はお困りのようですが」

「そうですね」

「邸宅の外に姿を見せないはずの大貴族の令嬢が 実はそんなことはないとか・・・ そういう話みたいに愉快ですね」

「はい」
(フォンティナ家のお嬢さんの話だな 単純な噂だと思っていたが 敢えて言及するって事はそうではないという意味か)

「学生さんには美しいお嬢さんの話がぴったりだと思ったんですがね 貴婦人がとても遠いところに外出なさるなんて 物好きな人達にはこれ以上にない話の種ではないでしょうか?」

「若い学生に物好き 何だかあっという間に複雑な立場の人間になった気分ですね」

「ハハハ そうではありませんただ関心があるかと思って申し上げただけですよ」

「お気遣いありがとうございました それでは これで・・・」

「患者がいるのはミユロゼの近くでしたよね? 今日は暑い日になりそうで心配です お薬はお湯と混ぜてくださいね 暑いでしょうが気をつけて下さい」

「はい ありがとうございます」



-病院前-

(貴族の令嬢の外出 やはりフォンティナ家のお嬢さんの話だろう しかしこんなに噂がたつような事ではないから逆に根拠は無いと考えてはいたが・・)

(セラフィス様が敢えて言及するということは事実のようだな ・・フォンティナ家らしくないな 噂が漏れているなんて 誰かが故意に流しているのか?)

(それとも単純に派手に外出でもしたのか・・・? 情報が足りないな 判断は無意味か・・)

(とにかくランズミのところに戻ろう・・・)



-ランジエ家-

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「お兄ちゃん 帰ってきた」

「おや? やっとかい 待ちくたびれたよ! まったく連絡も取れないしどこほっつき歩いてたの?」

「こんにちは メイリオナさん」

「いつも思うのだけどランジエ君 かわいい妹を一人にしていいの? 何かあったらどうするの?」

「私は大丈夫 プリンがいるから」

「あの犬のこと? 長い家族だっていうのは分かってるけどね でもランズミは体も弱いし 面倒を見てくれる人がいたほうがいいでしょう?」

「心配してくださるのはありがたいですが 家政婦を雇うことになるのであまり気は進みませんね」

「それなら ギルのやつに頼んで手伝える人を送ってくれと言えばいいじゃない どうせあいつ金はいくらでもあるんでしょ?」

「ああ見えて利用・・・ いや頼みごとは断らないやつだよ 思う存分頼めばいい」

「大丈夫です 何よりカスタードほど私たちを理解してくれる存在はいませんから」

「ふ~ そういっても犬じゃない」

「プリンはただの犬とも違います メイリオナお姉さん 私もプリンとお兄ちゃんさえいえれば他の人は要りません」

ランジエは話途中に外へと出て行く

「ちょっと水を汲んできますね」



「そもそもさ~ ネーミングセンス悪くない? 黄色だからってカスタードプリンって何?」

「随分前の事ですが その時はお腹がすごくすいてて お兄ちゃんがそうつけたみたいです」





その日はとても寒い日で暗かったんです 街へ通じる道が見つからなくて 何時間も彷徨いいつのまにか夜になってしまって




私は具合が悪く 少しずつしか進めませんでした なんとなく誰かに追われてるような気もするけど・・・・


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「雨が降りそうだな 大変だ・・・ ランズミ 寒くない?」

「うん 大丈夫 お兄ちゃんごめんね」

「うん?」

「私がもう少し元気だったら こんなふうにならなかったのに」

「いや 僕が道に迷ったからだよ ランズミのせいじゃない」

「コホン・・コホン・・」

「困ったな ランズミが風邪を引いたら大変だ」

「お兄ちゃん お腹空いてない?」

『ガササッ!』

「!・・・お兄ちゃん・・・今の何の音?・・・」

「だ・・・誰だ!!」

物陰から飛び出してきたのは 大きな大きな犬であった

「ワン!」

「!」
「!」


「か・・・・」

「か?」

「カスタードプリンの色だ・・・・」

「・・・・お兄ちゃん お腹空いてるんだね でもあったかい・・・」



それから プリンが道を教えてくれるよう街まで案内してくれました だから私とお兄ちゃんにはプリンは家族のような存在なんです



「へぇ・・・そんな事があったの それは不思議だね 言葉がわかるのみたいだね?」

「そうなんです 私たちの言ってる事を理解してるんです

「私は動物とまったく相性があわないから うまく付き合ってる人をみると物凄く不思議なんだよね ふ~む でも一つ学んだよ お兄さんの変なメーミングセンス」

「そ・・そうでしょうか? 私はとても似合いと思いましたが・・・カスタードプリン」

「断固として 絶対 完璧 明白に! ・・・おかしいよ」

水を汲み終えたランジエが家の中へ戻ってきた

「何がそんなにおかしいのですか? メイリオナ様」

「全部! あ 戻ってきたのかい そういえば薬とお茶を貰いに行ってたんだよね?」

「さぁ ランズミ 薬だよ 飲んだら少し休もうか」

「ありがとう お兄ちゃん」


-ランジエ家 外-

「ギルのやつに連絡するけど 頼む事は本当にない? いくら黄色い犬が利口だとしてもランズミの面倒を見る人はいたほうがいいでしょ? あいつに頼むのが嫌なら私の家のメイドでも来させるよ」

「いえ あの人にはそれ以外に頼む事がありますから」

「何? ああ~また何か一人で企んでるようだね ふん 好きにしな 私には関係の無い事だから」

「ところで今日は何か御用があったのでしょう? 理由無く外出する事はなかったでしょう」

「あ そうそう 用件を忘れるところだった この前頼んでいた物もってきたよ」

「ありがとうございます」

「ところでギルの頼みって何? あいつ今ケルティカにはいないよ 連絡は出来るけどここに戻ってくるには相当時間がかかるよ?」

「いえ 私がいくつもりです そうすれば問題ないでしょう 約束の場所だけ連絡して頂ければいんです ここに・・・」

「わかった 私のしったこっちゃないからね  これこの前貰った設計図通り作ったけど これじゃ動かないよ それでも大丈夫なの? 安全性も微妙だし助言者の頭が切れる方だってことは分かるけど 今回のは失敗作みたいよ? 他のフレームは私たちのアジトにしかけておいたよ でもやっぱり何の反応も起きなかった ここに一番いいエルカナンを使ったのに色も全然変わらなかった」

「・・・・とりあえず変わったら困るでしょう メイリオナ様の腕は間違いありませんから 信じて任せたんです 残りは自分の役目です」

「なら好きにしな 私はもう研究に戻るよ それ まともに動いたら何処へいくつもり? まさか本当にギルに会いに行くの?」

「その為だけじゃありません 私ももう少し確認する必要があるのですが 気になる噂がひとつあるので行ってみようかと これが思い通り動いてくれたら 無理はなさそうです」

「それ ちゃんと動いてくれるかな? 科学者の名誉にかけて言うけど 設計図の理論が成功する確率は5%未満だよ」

「確立がゼロでないのなら実権の価値はあります それに実際アカデミーや魔法院では実用化されたワープ装置が作られてるじゃないですか」

「ふん まぁそうだね でもそれは物凄い量の魔石と金と技術が集約されているんだよ ラン・・いやユスティン君のように小さい装置を携帯して何かをするなんてめったに考えないからね バインドなんかを使うのとまた違うじゃん」

「試してみる価値はありますからね」

「まぁ好きにしてみて すぐに民衆の・・・いやアジトにいけばマッチング実験はできるはずだよ あ そうだ その実験中イスやら箱やらが2つほど壊れちゃったんだよね~ そしたら上の階のカフェの子が訪ねてきたよ 扉をドンドン叩いて怒ってたなー」

「カモミールカフェのナルディーニさんは借家人に対して無関心で助かっていますが メイリオナ様・・・ 私たち一応公式的には隠れて暮らしているというのをお忘れのようですね」

「ふぅん じゃあうちにくればいいじゃん! ギルの家は遠いけど うちは近いよ!なんでうるさい女の子が働くカフェの地下なんてアジトにしたのさ? 湿気も多くて実験には向いてないし」

「メイリオナ様にこれ以上お世話になる事はできませんから 招かれざる客や 計算外の状況にぶつかったら大変でしょう?」

「だからカフェの地下がちょうどいい? 何がちょうどいいってのさ みんなの国なんて雄大なニックネームが笑うよ! どんよりした地下室が国なんて」

「重要なのは理想の大きさだと メイリオナ様もおっしゃったじゃないですか」

「でもさ~それでも私は派手で立派で広いのがいい・・・ 研究室って言うのはフラスコが20個くらいいっぺんに割れても 気にしないくらい広ければならないもんなんだ あー!とにかく私は知らない! 助言者君もギルのやつも自分勝手だよ ふん!」

「そうします とにかく今はランズミに会いに来て下さりありがとうございました メイリオナ様は几帳面な方です 連絡もお願いしますね それではまた・・・今度」

「・・・・人を伝書鳩とでも思ってるの? 私は鳩でも子犬でもないよ! ふん 知らない!忘れてやる!」

(頼りにしていますよメイリオナ様・・・・)



--ケルティカ広場-

(私が聞いた噂はフォンティナ家のお嬢さんがナルビクへ外出する・・というというものだったが この略式ワープサポーターが期待どうり動いてくれたらナルビクに直接いけるだろう)
 
(南部アノマラドの活動の中心地なのに一度も言った事はないからな・・・見回す価値は充分ある)

(まずは地下室に行ってみるか)




-ケルティカアジト-

アジトに戻ると ヒゲを蓄えた中年の男が待っていた

「随分久しぶりですな? 忙しいのにお越しいただけるなんて なんと言ったらいいのかわからないよ ハハハ」

「お元気でしたか」

「ああ 周りに並べているのは何だね? 例の実験だか魔法だかか? ワープ装置に意欲的だそうだが そんなことで尊い人材を無駄にしたくはないね 可能性のある事と無い事の区別が出来ないほど頭が悪くないだろうに」

「不必要な消耗が無いよう 格別に注意します」

「噂は聞いたか? 我々の助言者様 よもや知らないはずはないだろうが」

(皮肉るのはやめて欲しいな・・・)

「フォンティナ公爵の令嬢が外出するという噂だ 知らないのか? ともかく今のケルティカは平穏な時期だから 貴婦人の外出ひとつで波乱が起るんだな」

「確実でない情報かと思いましたが 先生がおっしゃるということは間違いないようですね」

「どういう風の吹き回しか分からないが・・・・いいよな 公爵のご令嬢は願うだけで何でも叶う地位なんだから そんな人間の眺める世の中はどんな姿か知りたくないか? ナルビクの支部長がケルティカに呼び出され エシェルト伯爵の噂 こんな時期なのに平穏とは面白い事だ」

「今すぐナルビクに行くのは無理ですが あちらの情報院を通じて大体の雰囲気を把握しています エシェルト伯爵の突然の死亡に関しては現地の動向よりもケルティカ内部の反応が政治的に より重要と判断した為・・・」

「うまくやってくれたのだろうよ 君は賢い人間だから」

(いちいち疲れるな・・・ しかし情報通り令嬢の目的地はナルビクで間違いないようだ)

「この優れたワープ装置を使ってナルビクに飛ぶ事は出来ないのか? ネニャフルにはどこからでもケルティカに飛んでこれる装置が既に用意されているのだぞ」

「そういうものがあれば一番いいのですが 広場のサービスは使用者の情報が簡単に公開される構造になっています なので出来れば私は露出の少ない方法を・・・」

「うん うん 分かった うまくやってくれるのだろうと思ってる ハハ また新しい情報が手に入ればすぐに教えて上げよう その素晴らしい実験 頑張ってくれたまえ」

男はそういって立ち去った

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「はぁ 本当にめちゃくちゃな部屋だな メイリオナ様・・・頼むから後片付けする方の身にもなってくれればいいのに」

(私達の夢見る事は 掃除する下人が存在しない世界だと何度も申し上げたが どうも根本的な部分を理解してらっしゃらないようだ)

「さてと・・・ 装置を動かすのに必要な物は・・・うーん ・・・手持ちの物で済みそうか これならすぐ始められそうだ」

装置を作動すると 薄く光がこぼれ 反応を見せる

(この最後の構造は古代の遺跡の侵入路に使用されたという 魔方陣の配列から取ってきた構図だったが・・・)

(6つの方位に6つの属性 そして属性を象徴する6種の色・・・)

瞬間 空気が重く感じ 空間が収縮していく




-ライディア-


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「・・・・・・」 


「・・・・・・・・・」


「うわ かなり高いな・・・・ ここは・・・?」

辿り着いたのは大きな葉の上 ライディア地方に分布するロベディアの木のようだ

「どうやって 降りようか・・・・ 高所恐怖症じゃなくてよかった・・・」

下から誰かが呼ぶ声が聞こえる

「こんにちは~ 初めて見る方のようですが冒険者さんですか~? そんな所でなにやってるんですか~?」

「あ いえ・・・ ところでここはどこでしょうか?」

「ライディアですよ冒険者さん ようこそ~おいでました 気をつけて降りて下さいね~」


(ライディア・・・は アノマラドの南部地域の町だったかな? 近くまでは来たようだが・・・)


(なぜこのような結果に・・ 魔石の不安定のせいか? ちゃんと計算したはずだが・・ しかしエルカナンの消費も予想以上だし どうも成功したとしても採算が合わないな・・)


(単純な確立の問題なら もう一度試せば成功する可能性もあるか・・・・・・ その前に・・・・ここから降りようか・・・・)



「装置自体は修理する必要はないか・・ よし もう一度試してみるか」

再び装置を作動し 計算を少し変えてみる 先程と同じように光がこぼれ 瞬間





-リフクネ家-

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「・・・・」

「あ・・・あなた誰!? ど・・泥棒!?」

「あ・・・あの・・信じがたい話ですが私は泥棒ではありません・・・ 単純な事故です」

「・・・とりあえず そこから降りてくれる? かわいい泥棒のお兄ちゃん ただでさえボロいベットなの へこんだらどう責任を取ってくれるつもり? 食べ物を盗みに・・いや借りに行った弟たちが帰ってきたら傷ついてしまうわ」

「申し訳ありません・・」
(泥棒だと思うのは仕方ないが 普通はもうちょっと驚くとか慌てるとか怖がるものじゃないか? 珍しい子だな)

「とにかく~ 手ぶらで家に入ってきた訳じゃないよね? 泥棒お兄ちゃん!」

「だから・・・泥棒じゃありません」

「あ お兄ちゃんは合ってるのね? もしかしたらお姉ちゃんかとおもった」

「両親や保護者はいらっしゃらないのですか?」

「そんなのいない あ でも泥棒お兄ちゃんとおなじぐらいの年のお兄ちゃんはいたわ でも生きてるのか死んでるのか全然連絡がないの」

(お兄さんがいるようだが連絡が途絶えた? かわいそうに心配してるようだ こんな幼い妹さんを一人にして連絡もないなんて そのお兄ちゃんはひどい人だな・・女の子一人で大丈夫だろうか)

「あっ! ・・・ってことであなた! 食べ物を持ってきてよ どう? 当然不満はないでしょう? 」

「はい?」

「他人の家にきて手ぶらで帰るつもり? 不法侵入でどれだけ驚いたか! それくらいは当然じゃない? そうでしょ泥棒お兄ちゃん」

「失礼ですが食べ物は後ろの棚にたくさんあるようですが? 」

「そ・・それは 今日どっかのバカな いや・・どっかの変な と・・とにかくおせっかい者が通りすがりにおいて行ったの! あなたとは関係ないでしょ! それに食べ物は多いほどいいでしょ!」

「ああ それはそうですね 食べ物はたくさんあるほうがいいです」

「フフッ あなた気に入ったわ 話が通るじゃない うーん じゃあブルーベリーなんてどう? 私は寛大だから~ これくらいならタダ同然よね! ね?」

「ブルーベリーよりホワイトベリーの方が甘くて良いと思いますが?」

「フフ 大人は甘さ控えめのブルーベリーを好むってバカなお兄ちゃんが言ってたわ」

「それは ブルーベリーの方が安く手に入るから そういったのだと思います」

「い 言いがかりつけないで 早く持ってきて! 寛大で親切なイルマ・リフクネ様も しつこいと怒るよ! フン!」

「分かりました ブルーベリーですね 約束しましたので持ってきます」



-広場-


(ブルーベリーか・・ この辺りにメリーベルの木が生えていればいいが・・・とにかく町の外に出てみるか)



-町の外-


(この地方は温かいな・・・モンスターもゼリッピしかいないようだ この気候なら木が生えていてもおかしくはないが・・・)

(それにしても穏やかだ・・・ 海が近いのか潮の香りもする・・・ ん? もしかしてあそこに見えるのは・・・)

(あ・・・よかった メリーベルの木だ ・・・それにしても随分と大きな木だな 実りもよさそうだ・・ 早くもって行ってあげるか・・)



-リフクネ家-

「戻りました」

「あ・・あれ? 何よ 泥棒お兄ちゃん 本当に帰ってきたの? あなたバカじゃない?」

「はい? 約束ですから おっしゃったとおりに持ってきただけですが」

「何よ 何よ・・うちのバカなお兄ちゃん意外にこんなバカな人は初めて・・・いえ2人目だわ! 何よ最近は病気でも流行ってるのかしら?!」

「・・・・」

「しっかりして! 泥棒お兄ちゃん! そんなまともな顔して・・・そんなことでこの厳しい世の中でどうやって生きていくつもり?」

「幼い女の子に食べ物を持ってきてあげる事がそこまで変に感じるのなら それは私より世の中の方に問題があると思います 保護者が不在でも最小限の保護は受ける権利が子供にはあるのではないですか?」 

「な・・・何を言ってるの? 自分のことは自分でやる それがリフクネ家の子供たちの決まりだよ」

「ふんっ バカなお兄ちゃんは手紙一枚残して家には帰ってこないし 友達だか何だかって言う変な人や泥棒お兄ちゃんは食べ物を置いていくし なんなのかしら・・ 」

「不快でしたらお詫びいたします とにかくその食べ物は受け取ってください」

「ちょ ちょっと! まって! ・・・これあげる 蜂蜜よ まぁ後で何か祟りがあっても不安だわ」

「ありがとうございます それではこれで・・・」

「はぁ~ 本当にあなた心配だわ 世知辛いナルビクで そんな風にしてたらすぐ無一文になっちゃうよ!」

「あ もしかして ・・・ここがナルビクですか?」

「・・・・まったく本当に呆れちゃう 病院でも行ったら? ここはナルビクよ!どこだと思ってたのかしら? 心配でしょうがないわ・・・」

(そうか・・・ワープは成功したようだな ・・・とりあえず クエストショップにでも行ってみよう リカス&ムートだったかな?)

「気遣って下さってありがとうございます さようなら」


-広場-

(そうか さっきは気が付かなかったが海がすぐ見える 海風吹く港町とはよく言ったものだ)


-リカス&ムート-

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「ようこそ! ここは初めてか? キミたち冒険者に新しい冒険を紹介するガイドだ!」

「こんにちは 変わったお店ですね 船を改造して事務所として使うなんて独特です」

「フッフッ この船は冒険者としての人生が詰まってるのさ 名前はリカス&ムート! とても美しい船さ!」

「そうですか ではあちらにいるのがあなたの仲間ですか?」

「ワフ!」

「そいつが俺の冒険の友 愛犬ムートだ! フッフッ 今は年を食っちまったけど俺にとっては最高のパートナーさ」

(ムート?平凡な名前だな ・・・バナナムースとかティラミスとか レアチーズ・・ 黄色いしずっとこんな名前の方が似合いそうだ)

「とにかく 何のようだ? 見たところ旅人のようだがどこから来たんだ?」

「・・・・・みんなの国から来ました」

「!!・・・ ふむ・・ 何を行ってるのか分からないな そんな地名聞いた事無いぞ」

「ああ 信じられないですよね」
(わたしの顔を知る者は同志の仲でも極少数だ 一人で働いているこの人には私の事を信じるのは難しいな)

「ブツブツ・・・どうなってるんだ?・・・ブツブツ・・・ そんな連絡は受けてないが・・・」

「薔薇の香りを辿って来ました 信じられなければ情報を得るのは無理でしょう でしたら私をただの平凡な冒険者の一人として接して頂けませんか?」

「フッ・・・ なるほどないい事を言う いいだろう 俺としては君の正体がなんであれ構わないことにしよう 彼らに対して義理を守るほどの仲でもないしな ハハッ」

(確かに聞いたとおり熱誠的な一員ではないな・・・ 情報屋としては良い人だが・・・)

「さて じゃあ質問を聞いてやろう 情報の対価は必要だがこの際いいだろう 何が知りたいんだ?」

(どうするか・・・単刀直入に聞いてみるか・・・ その方が早いかもしれないな)

「・・・では ・・・公爵家の令嬢のナルビク訪問について聞きたいです」

「お・・・おい・・・ ほら若者・・・ ちょっとは遠慮してくれよ・・・いきなり大物を狙うんだからまったく・・見た目は花の茎さえ折れないような顔立ちなのに あ~恐ろしい」

「難しいでしょうか?」

「いや まぁ大丈夫だろう どうせウワサは広がってるしな それにまだ到着はしていない」

「まだ・・・ですか・・・」

「まだだ・・ しかしもうじき到着するはずだ だが迂闊に近づくなよ 烏合の衆が集まったら 何人もの首が飛んじまうぞ? 傭兵達がうろうろしているそうだしな」

「ふむ・・・」

「アクシピターの支部長もケルティカに呼ばれ 内部は大慌てさ アクシピターが麻痺状態で警備隊もバラバラさ どうやら目的地はエシャルト伯爵の邸宅だそうだ」

「そうですか・・・ありがとうございます」

「あそこに行くつもりなのか?やめたほうがいい 警備兵だって形式で立ってるわけじゃない」

「ご忠告ありがとうございます」

(これだけ噂が流れていると言う事は あまり統率は取れていない状態なのだろう フォンティナ家の令嬢が知ったら嘆くだろうな・・・だがこちらとしては幸いだ)

(今の話からすると ナルビクの警備隊は楽に落とせそうか 一度エシェルトの邸宅まで行ってみよう)




-エシェルト邸-

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「いいかお前たち! もうじきお嬢様がいらっしゃる時間だ! 背筋を伸ばせよ?」

「はい!」
「はい!」

「気を張っていけよ! 何か不始末があれば大変だ・・・・・ん?」

「誰だ貴様!!」

「ここは一般人立ち入り禁止なのを知らないのか?」

「まだ若いようだが場を弁えるんだ さっさと消えろ」


「あ こんにちは はじめまして ・・・・見た所まだ準備は終わってないようですね? 本当に困りました」

「な 何だと・・?何を言っているんだ」

「しかしご安心を 幸いな事にまだお嬢様は到着しておりません それまでに確実に準備を整えて頂けたらと思います」

「誰だお前! 怪しいやつめ!」

「おやおや お分かり頂けません? 私 ケルティカの言葉を使っているのですが」

「・・そういえば・・ 話し方が少し違いますよ 隊長」

「お嬢様が到着する前に現場の安全を確認するのが私の役目です 仲間でちゃんと確認は取れていますか?どうやらかなり広い建物のようですね」

「そ・・それは・・・多分 大丈・・夫 だと思うが・・」

「はぁ そんな事では困りますね 本当に お嬢様が不快に思わないよう確認させてもらいますよ」

「隊長・・どうしましょうか・・時間もないですし確認はした方が・・」

「フォンティナ家に睨まれると大変ですよ・・・」

「う・・うるさい オッホン! そうだな フムフム若者よ 君も大変だな 入って確認するといい」

「ご配慮感謝いたします それでは・・・」

(よし・・・ もたもたはしてられないな こんなところで本物に出くわすのは色々困る)


-エシェルト邸宅 書斎-

n19.jpg


(ふぅむ これは予想以上にすごいな エシェルト伯爵が謀反罪に巻き込まれたと言う情報は聞いたが 魔法について感心を持っていたと言うのは あながち虚勢ではないようだ) 

(だがしかしこれだけでは終わらないはず 間違いなく何かを隠しているだろう でなければわざわざ公爵家の令嬢が見物にくる理由が無いじゃないか・・・・ん)

背部から冷たい違和感を覚える 空気が圧縮されたような感覚

「これは・・・ 何かに反応したのか? どうやらここには何かありそうだ・・・」

(よし あの空間の歪に行ってみよう)



-?-

歪から飛ばされてきた暗く湿気た部屋には2匹の魔物がいる

魔力の力が失われたような部屋は あちこちが崩れていた

「あれ・・・ 思ったより広い空間だな 何かのトラップか? あちこち崩れ落ちて今ではモンスターの遊び場のようだな」

「さて 面倒だがあいつらを片付けるか・・・ 出来ればあまり動きたくは無いが・・・!」

腰から一丁銃を取り出すと同時に モンスターを撃ち抜く
 
「グァー!・・・」

あっという間の出来事だったのか 一瞬悲鳴をあげたラルヴァだったが すぐに息途絶えた

異変に気付いたもう一方のラルヴァが牙を立てこちらに向かってくる

「グォォォ!!」

華麗に牙を交わしたランジエは魔物の腹に蹴りを加える 鮮やかな一撃によりラルヴァは身を強張らせ横に倒れる

「時間がないんだ 邪魔はしないで欲しい」

そういうと魔物の眉間に銃を向け とどめの一発を見舞う

『ダン!』

「グァ・・・ァァァ」


魔物が消え トラップが解除されたのか 奥に続く部屋の扉が開く



-秘密の実験場-

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「はぁ ・・・・こんなところもあるなんて すごいな ・・・・高級羊毛紙にサイモペイン・・・ 珍しい魔石だな・・・・ 全部集めて使ったのか・・全て使用済みのようだが・・・」

「しかし勿体無い 惜しむ事を知らない人間だったんだな 100倍は価値のある事に使えただろうに」

「ん これは・・・? 普通の羊毛紙だが何か魔力を感じる・・」


インフェイズフェノミノンに関する記録はこれが全て ガナポリーの栄光の記録が変わったとき それも慈悲に満ちた呼気に混ざり散らばってしまったからだ

しかし振り返ってみると元より記憶は歪曲であり真実は神話の垢をかぶり色あせていくもの 人間の全ての歴史がそうでなかったか?

消失した文字の羅列は結局灰のようなもの 未練を捨てて目を開け その扉が再び開かれる日がくるだろう 誰も知らない場所で音もなく 一つの時代が終止符を打つ日が


羊毛紙を読み終えると文字が揺らぎ 全てが無かったかのように文字が消えていった 


「!・・・文字が ・・・消えた・・・ なぜ? 読み終わった途端消えてしまうなんて・・・記録が消える事もインフェイズフェノミンによって引き起こされる現象なのか・・?」

(とにかくここから出るか あまり長居できる状態でもないからな)




-エシャルト邸-

「どうだ! 異常は無かったか?」

「はい お話通り危険なところはなさそうです ご苦労様でした さすがはナルビクの警備隊の方々 ご立派です」

「そ・・・そうか ハッハッハッ」

「この事はお嬢様には内緒にして下さい 必ずです 他の人にも言及しないようお願いしますね」

「ハッハッ 任せてくれたまえ やはり大貴族の雇う人はどこか違うな」

「それではこれで・・・・・・」

(さて これで私の用事は終わった フォンティナ家の令嬢に対面するわけにはいかない 好奇心だけでは動く理由にはならないからな ・・・舞台は他のところにしても十分だ)




-リカス&ムート-

「お 戻ったのか 例のことはどうだった? 無事に帰って来たのを見て安心したぞ」

「おかげさまでうまくいきました ありがとうございます」

「それはよかった あ そうだ 一件依頼が来てるんだが受けてみないか? どこかに帰るつもりなら仕方が無いが ちょっと大きな案件なんだ」

「どのような内容でしょうか?」

「ゼリーキング討伐令が出たようなんだ こんなに大きな案件はめったにでないぞ? 今はアクシピターもシャドウ&アッシュも忙しいから よそ者でも手柄を取れるかもしれない」

「ゼリーキング? ああ 母体としてゼリッピを生み出し続けるモンスターですね? しかし以前にこの辺りで出現して 討伐されたと聞きましたが違うのですか?」

「それがちょっと変なんだ こんなことは俺も聞いた事はないが また現れたんだ どうしようもないだろ?」

「それなら以前に討伐に成功した人にまた頼めば簡単ではないですか? こういったことは経験が重要ですから」

「それがな 何かおかしいんだ 以前に討伐された記録はあるんだが 誰が討伐したかまったく記録に無いんだ 当時騒がせた伯爵邸の襲撃をした人達の記録も無いそうだ めちゃくちゃだよまったく」

(記録が消えた・・? これは何かありそうだ 覚えておくか それだけじゃない誰も知らないと言う事は記憶まで消えたという事になる ゼリーキングも邸宅襲撃も大きな事件だったはずだが 誰一人知らないのはおかしすぎる 先程忽然と消えてしまった文字のように何らかの理由でこの世界から消えてしまったのかもしれない)

「どうだ? 興味があれば一度アレンさんの所に行ってみろ 仕事を紹介してくれると思うぜ それにしても変だよなあ? アレンさんといえば几帳面で有名なんだ そのアレンさんの記録簿にもないようだし 摩訶不思議だよ ハハッ まぁとにかく行って見るがいい 興味が無いのなら仕方ないがな」

「わかりました 一度話しだけでも聞いてきます ありがとうございます」


-アクシピター-

ナルビクを管理する組織 アクシピター 騎士を初め 警備隊や傭兵なども束ねる

大陸随一の組織で 貴族や王族ともつながりがある 外観はまるで小さな城のようだ

n21.jpg


「忙しい・・・忙しい・・・ なんでこんな時に支部長がいらっしゃらないんだ・・・どうにかなりそうだよ・・・」

「こんにちは」

「あっ はいこんにちは お会いできて光栄です お初のようですが・・・もしかしてアクシピターに加入されたいのですか? 申し訳ありませんが今は色々とありまして新入生を受ける事が出来ないんです」

「いえ ゼリーキング討伐の話を聞いてきたのですが 宜しければ説明を聞かせて貰えますか?」

「討伐をお一人で? う~ん 実力が分からない方が挑戦するのは非常に危険なので 勧めたくはありません 本来はギルド員のみを対象にする事なんです・・・申し訳ありません」

「信頼されてないようですね 分かります どうしても安全に気を遣わざるをえないのでしょう しかし私はこの仕事に興味があります 危険性に関しても十分認知していますので憂慮なさる状況は起きないでしょう」

「ふむ・・・まあいいでしょう そこまで言われるのなら 挑戦の機会はみんなに平等に与えられているものですから」

「ありがとうございます」

「簡単な説明させて頂きますと ゼリーキングの突然の出現に人々が困っています その被害を最小化する為に 王室では公式的にゼリーキング討伐を支援する事にしました ゼリーキングは普通のモンスターと異なり この魔物の羅針盤を使って探しださなければなりません」

「これが・・・羅針盤ですか」

「はい 出現の地域はクライデン平原の南部という情報がありますので これを使って探し出さなければなりません」

「わかりました 詳しく説明して下さりありがとうございました」

「あと注意点ですが ゼリーキングは特別な証をもっています 討伐したら必ずそれを持って帰ってきてください それが達成の条件となりますので あと討伐後にその証を狙う者もいるかもしれませんので気をつけて下さいね」

「なるほど・・・では準備が出来次第クライデン平原に向かいます」

「くれぐれも お気をつけて・・・」


-クライデン平原-

ナルビクの街から北部・西部・東部へと広がる大きな草原地帯 

気候は暖かく生息する生き物や木々は多い その広大さ故 

大陸はセルバス平原とクライデン平原から成り立つとも言われている



羅針盤を頼りに目的地を目指すが針の示す方向には普段と変わらない景色が広がっている 

「おかしいな この辺りを示してはいるが何もないようだ・・・」

「・・・? ん 赤いゼリッピに青いゼリッピ・・・おかしいな この地域には珍しい種類のゼリッピだ・・・」

『色とりどりのパネル・・・美しいですね まるで相手と自分が互いに与えた影響が重なっていくように』

「・・・頭の中に声が響いている・・・ 誰だ?」

『あぁ 同じ色どうしを合わせると綺麗じゃありませんか? あの色とりどりのゼリッピを同じ色のパネルに乗せる事ができたらいいのに!』

「・・・・無礼な人だな あのゼリッピ達をパネルの上に乗せればいいのか?」

平原の中に不釣合いな4色のパネルが見える そして4色のゼリッピ

「子供のお使いじゃないんだから・・・」

n22.jpg

ランジエは手際よく ゼリッピをパネルに誘導する

「ふぅ こんな感じか?」

全てのゼリッピを誘導し終えると また声が響く

『おめでとうございます やはりこれぐらいの問題は難しくないようですね 次は少し難しいですよ?』

「・・・あまり気は乗らないが選択の余地はないか とにかく進もう」

少し進んでいくと8個の石碑が並んでいるのが見える 


「・・・・・なんだこの内容は」
 
『いやぁ またお会いできましたね こんにちは』

声がする方を向いてみると いつかのあの男が立っていた

「実にお久しぶりですね?お元気でしたか?フフッ」

「こんにちは そんなに久しぶりですか? ナルビクでもお会いした気もしますし」

「あぁ~まったく! 大人の事情っていうのがあるんですよ 相変わらず難しい方ですね」

「それよりゼリーキング討伐に興味があるのですか? それとも私にまだ何か用ですか? それとも渡してしまった事を後悔してらっしゃるのでしょうか」

「おや・・・何ですか?ローゼンクランツ様 他の人のほうが相応しいといったら あなたが手に入れた物を喜んで放棄するようにおっしゃいますね そのオーバード 返して欲しいといったら返して下さるのですか?」

「私に資格がないのなら そしてこれを返してもっと望ましい結果が出るのなら 喜んでそうします」

「おやおや・・・そんな風に素直におっしゃられたらつまらないじゃないですか 奪われ無い様にするほど より奪いたくなるのが人間ですから」

「逆に執着しなければ誰も欲しがらない物です」

「違いますよ~ 全ての感情とその逆が同時に成立する訳ではありませんから 例えば美しい花が咲いているとします その主人はそれを取るに足らないものと見て 手放すかもしれません しかし他の誰かからすればその花が欲しくて手に入れたいと思ってるかもしれません 人間は美しい物が好きで・・・」

「何がいいたいのでしょうか・・? 私に下さった物 お返ししましょうか?」

「結構です 本当だったら返してもらって超~高額で売り飛ばしたい所ですが・・・仕方がありません一度決めた事には反故にしない主義でしてね それにローゼンクランツ様にしか扱う事が出来ない物ですから・・・まぁこれも面白みといったら面白みですがね」

「・・・」

「ローゼンクランツ様は必要でない物には関心がない方のようですから あなたが持っているものにどれくらい価値のある物か知ったら その時は私が返してくれと言っても断ると思いますよ?」

「そうでしょうか・・・」

「それよりどうですか? あれらの石碑 熱心に読んでいたようですが感銘深い文句でもありました?」

「彼らは皆 彼ら自信と戦ったのです そういうことは滅多に見られませんからね まるで物語の中にでも出てきそうな そんな話です」

「彼ら自信? あぁ・・・ドッペルゲンガーのようなものですか? 何と答えるべきかわかりませんね 深く考えたことがありません 経験した事のない事について評価するのは危険ではありますし 何よりも石碑の下で横になっている方々に迷惑でしょうから ・・ただ・・・・」

「ただ・・・?」

「いいえ なんでもありません」
(見覚えのある名前が刻まれていたようだが ここでは深く考えないで置こう)

「とにかく~ 経験から学習するのは良き事です 私は人を苦しめるのが好きではありませんが 苦難を超えて成長する人をみるのは好きです」

「・・・聞き方によっては 問題が多い発言のようですよ」

「そうでしょうか? フフッ 問題が多い客に 問題の多い商人 良いコンビではないですか さて・・・私はそろそろ帰らなければなりません ゼリーキング退治頑張ってくださいね」

そう言うと 男は木々の陰の中に吸い込まれるよう消えていった

その後すぐ 最後から気配を感じる

「・・・・困ったな」

n23.jpg


振り向くと同じ姿の人物が立っている

「残念ながら経験から学ぶという言葉は好きではありません」

鏡に映った自分自身の姿 ドッペルゲンガーとはこの事を言うのであろう

「自分自身の経験だけが頼りならば 一体誰が他人の真の苦痛を理解出きると言うのです?」

ドッペルゲンガーは銃を取り出すと こちらに向かって狙いを定める

「はぁ・・・ あなたも この戸惑う気持ちを理解してくれれば 戦わずに済むだろうに・・・」

既にドッペルゲンガーは引き金に手をかけている 狙いは真っ直ぐに感情は読み取れない

無表情のまま弾を放つ!

『ダン!ダン!!』

二度銃声が聞こえたが 撃ったのはランジエの方であった

ドッペルゲンガーが引き金を引く瞬間 神風の如く目標を撃ち抜き ドッペルゲンガーは砂となって跡形も無く消えてゆく

「・・・同じ経験で 同じ結論を得るわけではありません 人間というものは意外に複雑ないきものですから 望み通り動かそうとする試みは辞めて下さい」

何もなかったかのように辺りは静かであったが 消えたはずの男がまた 目の前に立っている

「不快です・・・」

「望み通り動かすなんて 言い方がひどすぎますよ 期待値が高いと言ってください 同じ表現もソフトに・・・ローゼンクランツ様の特技でしょう?」

「私は他人の意思に従って動きません それと表現をソフトにして効果があるのは 相手がこちらの気持ちを知らない場合のみです あなたは既に私が不快なのを知っているでしょう」

ランジエの赤い目が輝く 抑えてはいるが瞳からは怒りが込み上げる

「おやおや・・どうやら嫌われたようですね」

「何が望みでまた現れたんですか? 先程の不運な事件に対する感想をお望みですか!?」

「あのですね ローゼンクランツ様~ 申し訳ありませんが私は先程のようにタチの悪い悪戯で人を苦しめる人間ではありませんよ? 私はいくつもの品物を主人に探してあげるベテラン冒険者なのです そんな目でみるなんてひどいですよ~」

「・・・・・」

「とにかく 結論から言うと ローゼンクランツ様にとってドッペルゲンガーと戦う事は大きな問題ではなかったでしょう? それが重要なのですよ~ 過ぎ去った過去のことですから 結果オーライです!」

(確かにドッペルゲンガーと言っても 私に似た事物と変わらないんじゃないか 例えるなら鏡を割るくらいの感覚だが・・・)

「私があなたを苦しめるつもりだったなら 何も言わず何もみせず ただ口をつぐんだまま どこかに隠れてしまってますよ 貴重なアーティファクトも渡さなかったでしょう はぁ・・・本来ならこんなことは引導者がしなければならないことなのに 色々事情があるんですよ~ 煩わしいですが子供たちというのはどうしようもありませんから」

「子供たち・・・? あなたは私の知らない事を知ってるようですね しかし教える気はまったくないのでしょう」

「知ってますよ あなたが一生懸命探してる文字やさまよい求めている力とか そういったものも 誰でも言えないことはを持っているものです あなたもそして私も同じです」

「・・・誰もが悪意なく秘密を隠しますが それを見抜く事こそ私がしなければならない事です 例えば あなたのウソは・・資格という言葉ですね 私には資格があると言いますが そうではないでしょう?」

「ほほ~」

「少なくともそのアーティファクトの主人があなたの言う資格を持っているのなら 世界には私以外にも同等の位置にたった人がもっと存在するはずです」

「面白い推理ですね まるで他のアーティファクトを見た事があるようにおっしゃって驚きましたよ」

「驚いた顔ではないですよ 本当にあなたはポーカーフェイスですね 私のアーティファクトはいうのはこのオーバード・・・でしょう? これを握った時の感覚 私には覚えがあります」 

「わお~! 素敵なことを知りましたね? おめでとうございまーす! 私の役割はあなた達を舞台に立たせる事 あなた達には理解し難いでしょうが・・・悲しいですね あぁ悲しい・・・」

男の声が急に遠くなってゆく

「ちょ・・ちょっと! まだ話は終わってませんよ! まだ何ひとつはっきり・・・・」

引きとめようとしたが 既に姿は無かった


「まったく勝手な人だな・・・ 仕方ない目的を進めるか・・・・」


遠くにゼリッピが集まっているのが見えた あの中にゼリーキングがいるに違いない

ゼリーキングは体は大きいが強さは大した物ではない ただ無限に生み出されるゼリッピは厄介で

際限なく生み出された場合処理が面倒なので 嫌う冒険者も多いと聞く

「あれがゼリーキングか? 困ったな 初めて見るが時間がかかりそうだ・・・」

人間の数倍はある大きさで ゼリーキングは高みからこちらを眺めている

向かってくる人間に対し危機感を覚えたのか 大きく飛び跳ね 地面に体を叩きつけた

『ドーン!』

叩きつけられた衝撃で無数のゼリーが飛び散る 直ぐに飛び散ったゼリー達は意識を持ちこちらへ集団で向かってきた

「うわ・・! 相手をするのは厄介だな・・!」

『ぴぴっ! ぴー!』

1匹がランジエの腕に纏わり付き 続いて2匹目が足を狙って飛びかかった

「くっ!・・・」

『ガッ!』

しかし2匹目は飛び掛った瞬間 素早い足蹴りに合い無残にばらばらになる

腕に絡みついたゼリーは形を変え 締め付けようとするが それより先に小さな声で詠唱が始まった  

「・・…・・・・・・・・・・・…・・!」

『ぴぃぃぃ!』

絡み付いたゼリッピは形を変える前に 冷気に見舞われ氷の塊となってばらばらと崩れていく

「これではきりがない 一気にいかせてもらう!」

素早く二挺の銃を取り出すと ランジエはゼリーキングに向かって走り出す

『ピィィィ!!』

驚いたゼリーキングは再び飛び上がるが ゼリーキングが最長点に達すると同時に二挺の銃が向けられていた

「マルチショット!!」

『ダダダダダッ!』

『ぴぃぃぃ!』

『ピイイイイ!!』

無数の弾丸がゼリーキングたちに降りかかり ゼリッピの数は10を超えていたが全てに弾丸が命中する

ゼリーキングにもいくつか急所に命中し 一瞬にして全ての魔物が散っていった

「・・・・・・」

辺りにはゼリーや液体が無残に散らばり 魔物の影は全て消えていた 

「ふぅ・・・・・・しかし・・・こんな事をしようという目的ではなかったな・・・まぁいいか」

「だが 重要なのはインフェイズフェノミノンに関する記録が消えるとともに特定の人々に関する記憶も蒸発している これこそが現在重く深く考えるべき現実だ」

「さっきのあの人の言葉も詳しくは無いし 何よりどこまでが比喩でどこまでが事実なのか判断がしにくい しかしここまでが事実と仮定すると・・・」

「アーティファクトと呼ばれる物をもつ資格を有する人達と エタが言ったインフェイズフェノミノンの発生の間には何か関係がある事になる」

「・・・ずっと前に 握ったあの剣・・・ あの時私は何かを感じた 今ははっきりと分からないが このオーバードを持った時と同じような感覚だったことは確かだ」

「・・・つまりは・・・・私にあるという資格 あの人にもあるという意味だろう・・・ そして他にももっと多くの人達に・・・・」

「私は苗族の言う神の武具が エタの伝える古代人と関連があるとおもってきた 彼らの生存者がどこかにいて その人が引導者ならば私にとっても役に立つだろうと・・」

「ならば 彼らが言う神の武具や彼らが見つけなきゃならない守護者の存在が アーティファクトとその主人という意味と同一である可能性も考慮すべきだろう」

「・・・・考えるんだ 出来るだけ資格のある人達を手中に収める方法を・・・」

小さく一人で呟いていたランジエは 足元の証を拾い上げる

「・・・・・ひとまずは このゼリーキングの証をアレン様に届けるか・・・」


-アクシピター-

「おや? 無事に帰ってきましたね ゼリーキングが討伐されたと聞きましたが ・・もしや!?」

「あ はいアレン様 期待に応えられたのかは分かりませんが 受け取ってください」

ランジエはアレンにゼリーキングの証を手渡した

「うわ・・・ ほ・・・本当にあなたが?! いやぁ感激しました 素晴らしいです!」

(期待していたというより 私が事故死していないか心配だったのだろうな・・・)

「本当にすごい実力を持った方だったんですね それではお礼を差し上げなければ・・・ あの何と書けばいいでしょうか? お名前や所属は?」

「あ つまらない名前なので記録しておくほど価値はありません」

「それでも素晴らしい事をなさったのですから 書きませんと 謙遜なさらないで下さい」

「謙遜ではなく事実です 何より私はすぐにここを経つ予定です 記録が残るというのは負担になりますので・・」

「まぁ・・・そうおっしゃられるのでしたら仕方ありません・・ しかし報酬は受け取って下さいね 残りは私が適当に書いておきますので」

「ご配慮ありがとうございます」

「いえ こちらこそありがとうございました ゼリーキング討伐だの急に大きな案件が出てきて困っていたところでしたが助かりました では道中お気をつけて」

「はい さようなら・・・」




-ナルビク広場-


(ひとまずは片付いたか・・・ さて約束通りあいつに会いに行くか・・・・)

(・・・・・ん ・・・あれは!?)

遠くに二人の男女が見えた 髪の長い長身の男 マントで隠してはいるが背中には大きな大剣が見える そして小柄で銀髪に暗い肌の女 

街に溶け込んだ格好ではあるが どこか異彩を放つ雰囲気の二人に ランジエは見過ごすはずは無かった

(アーティファクトを持っているのは私だけではない 当たり前の事だ・・私はあの感覚を覚えている・・・忘れるはずがない 絶対に!)

(もしあの人が私の知っている人ならば あの剣をたやすく他人の手に渡したりはしないだろう 彼が正当な主人ならば・・それならば彼は私の捜し求める人という意味になる)

男女は何事もなく 街の奥へ消えていった

(誰も覚えていない見た事の無い熟練した冒険者 消える記憶 インフェイズフェノミノンの明かされていない2番目の段階・・・大体分かってきた・・・)

(本当にあの瞬間 世界は動き始めたんだ そうなるとまずはあの二人を動かす事ができそうだ・・・・)

「約束の場所へ急ごう・・・・」

約束の場所クライデン渓谷に向けランジエは歩みだす 大きな雲が流れ空が淀み湿った空気が包む 雨の気配がした


-クライデン渓谷-


『ザーーーッ』

日は暮れ雨が辺りを打ち付ける 

(すごい雨だな・・・・・)

(しかしさっきは思い掛けない収穫だった あんな所であの人をみかけるなんて そしてあの女性・・・苗族の生き残りだろう・・ 偶然にしては出来すぎた話だ)

(あれほど目立つ外見なのに誰も苗族との関連を考えなかったのだろうか いくら大勢の人が苗族に関する事を伝説や風聞と思っていると言っても・・・)

(・・・・・)

(そういえば あの時もそうだった・・・あの人と別れたあの日も雨だった・・・ 今のように激しく 前が見えず世界に二度と朝が来ないような そんな大雨)

あの人に会った時突然と思った 変えられるかもしれないと

ただ生き残るのではなく 何かの為に生きる事ができるかもしれない そんな恐ろしい考えを

あの剣を持って行ったのは それがどこに隠されているか私が知っていたからだ 同じ年頃のかわいそうな子供に 同じようなものを感じて助けてあげたかったのか

それとも他に理由があったのかは もう思い出せない

確かなのはあの剣を握った時 あの衝撃 何か変えられるかもしれないと気がして 自分でも身震いするほど驚いた事

あの剣を渡し 自分でも気付かないうち彼の剣を握って驚くほど力強い声で言った事  鮮明に覚えている


「お前が一緒にいれば 僕も戦うことが出来るかもしれないから」

「お前と一緒に戦う事は出来ない お前の求める物と 僕の求める物は違う」

「・・・・・」

「お前は強く純粋だ しかし僕はお前と一緒にはいけない」

「僕はただ・・・お前を守りたかったのに・・・・なのに・・・・お前は確かに間違ってはいない 悪い訳ではないのに・・・」

「僕たちは別の方向を向いている ・・・それだけだ」

彼には探すべき物があったが私には無かった 私には守るべきものがあったし それだけでも幼い私には手に負えなかった

倒れないように 歯を食いしばった 

n24.jpg


「僕はいかなければならない 探すべき物がある」

しかしあの剣を握った時 彼の手にその剣を返した時ふと思った この手でも何か出来るのではないか 何かを作り 振り回し 変える事が出来るのではないか

儚い考えを押し出そうとしても 芽生え始めた夢は抑えるどころか勢いを増し たちまち幼い私の中でひとつの炎となった

去ってしまった彼をみないようきびすを返し 一人で森を引き返す間 全身がびしょ濡れになっても寒さを感じなかった

肩を打つ冷たい雨粒にも体の熱気が冷めず 青ざめたまま呆然と空を見上げた

あの日 その別れから私は夢を見始めたのだ

いつか全てを変える事が出来るかもしれないと

世界から勝利をおさめる方法はそれを壊すことのみ 世界を読み 世界を理解し そして新たな物語を書いていく方法のみだから

そう夢を見始めた 新たな世界という物語を



雨が止み乾いた風が顔を撫でる 日が差込みさっきまでの大雨が嘘のようだ 

雨が止むのを待っていたかのように 男がランジエに話しかける

平民の格好ををしているが どこか気品を漂わせる彼はギルデンスターン

ケルティカ王族と繋がりのある貴族である


「いらっしゃい よく訪ねてきてくれたね」

「・・・・・・」

「はは そんな怖い顔をするなよ かなり怒らせてしまっているようだね しかし私もそちらへ動く余裕がなかったんだ お前も知っているだろう? さぁお茶でも飲もう」

「くだらない話をしにここまで来たのではありません 何かが起きている いや 起きた フォンティナ家のお嬢さんが動き始めたという話を聞きました」

「ふむ 金持ちのお嬢さんの好奇心じゃないのか? 昨日は薔薇色のドレス 今日は琥珀色のドレスがいいとねだるのが貴族さ その程度の衝動ってことじゃないのか」

「私が知る限り まともな貴婦人は理由がなければティースプーンさえ手にしない人々です ナルビクには精巧なダイヤモンドもないし 刺繍されたドレスもない フォンティナ家のお嬢さんが何もない南部都市に興味を持ちますか?」

「きまぐれでは? フォンティナ家のお嬢さんくらいならありがちなことじゃないか?」

「甘く見ては行けない 春にだけ飛び回る蝶とばかり思っていたら 鋭い牙を隠した獅子かもしれない・・・・」

「くくっ さぁ 私に会いに来た目的を話してくれるか? 聞こうじゃないか 賢明な助言者が私を訪ねてきた理由が何なのか」

「ギル・・・・あなたケルティカに行く予定ですね? そしてパーティーに参加する事が出来るのは招待された貴族だけではないという事を私は知っています」

「・・・! そ・・それは・・・おい お前! もしかして入り込む気か? はぁ・・・・・・・ まぁいいだろう それほど気になるのならそのお嬢さんを遠くから一度見ておくといい」

「お願いします」

「しかしお前のようなシャペロン(付き添い)がいると 今日から不安で眠れそうに無いな 誰が誰に付き添うのやらまったく ふふ だがナルビクからケルティカだぞ? そう簡単にいくものでは・・・」 

「これを使います これの為に相当なエルカナンを消耗したという事は私もよくわかっていますが・・」

「略式ワープサポーターか・・・ふむ 世紀の大発明だな ハハ」

「皮肉らないで下さい 反省はしています・・・」

「全部メイリオナ嬢がこっそり抜いてきた物なんだろ 反省する必要はないさ しかしどういう原理で作動するんだ?私たちのアジトに仕掛けをしてそれを軸に反応させる という事ぐらいは聞いたが」

「この地の奥深くにはコアという物が存在していて 全てのマナはそれに反応して世界に留まる・・・そんな理論です」

「ふぅむ まぁそういうことにしておくか たいくつな魔法講義を聞くつもりはなからな」

「ああ それと聞いておきたいことがあるのですが」


険しい顔をしていたランジエであったが 途端に温和な表情になる


「何だ?」



「この地域の特産品は何でしょう?」



「え・・・と・・・特産・・・品?」

「ええ 特産品です」



「・・・・た・・・食べ物?」

「食べ物です」



「・・・・笑顔でそう言われてもな・・・念の為に聞くがそれは・・・?」

「せっかく苦労してここまで来たのですから 当然お土産を買っていかないと♪ 喜んでくれますよね?ランズミ」



「・・・・はぁ・・・やっぱり・・・・」


アーティファクト 資格のある物たち 苗族の生き残りと あの日の彼 大きな目的を抱え

今一番の心配事は 遠き地の幼い妹 ランズミの事だけであった


「特産品はなんですか? 教えてくださいギル!」


「はぁ・・・わかったよまったく・・・ お前の目的は一体なんなのだか・・・」


呆れた表情のギルデンスターンではあったが やれやれという顔で

ナルビク地方の特産品の話を始める

先程の大雨で出来た水たまりには 大きな虹が映っていた





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