ランジェ日記 + !

ローゼンバーグで活動するランジエの日記  公式イラスト400枚以上収蔵 プチ情報や検証 ランジエチャプターを小説風に公開など 様々なコンテンツにも取り組んでおります

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EP2 チャプター2 Alone

Chapter 2 Alone




イウェリド・エタはガナポリーの栄光が灰となった日を記録している これはすなわち 彼がエタを移すにあたって自分の感想を書いたという意味になる

インフェイズフェノミノンに関する記録はこれが全て ガナポリーの栄光の記録が災いに変わった時 それも悲嘆に満ちた呼気に混ざり散らばってしまったからだ

イウェリド・エタはイウェリドが記録を残し付け加えたものにしか見えない イウェリドはどうしてエタそのものを移さなかったのか

なぜなのか 人々はある可能性を語ってきた 息を潜め内緒話をするように 身震いするように用心深く

エタの力こそガナポリー滅亡の原因だったのではないか・・・と

原因不明のメテオインパクトがインフェイズフェノミンの一段階という 陰謀論に過ぎないが仮説に可能性があるのならこれらの真相はエタにかかっているはず

黒い預言者組織の崩壊・・ それによって彼らの伝えてきた情報を手に入れることが出来た 誕生石 アーティファクト 黒い預言者

そしてエデルと呼ばれた古代文明の伝説までも

全ての情報は不完全で不確実なもの どこまでが真実なのか 何も明かされてはいない

エタが示す エデルを発言させるための力 アーティファクト 少なくとも存在するのなら それら全てが一貫性を持っていることは確か

彼らがアーティファクトを持っていて 黒い預言者達の言う審判者なら エタの痕跡を追う為にも会う必要があった







3人は言葉を噤んだままであった 向き合ったまま誰も動こうとしない

一刻の僅かな時間が長く長く感じる

最初に言葉を発したのはランジエであった



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「別途 紹介の必要はないようですね」
(どうせ私とあいさつを交わすつもりはないようだし・・・)

「・・・ ごめん レイ 先に出てる・・・」

「ボリス?」

(冷たいな・・・)

ボリスは目を合わさず 外に出て行った

「そちらのお嬢さんは あの人をしっているの?」

カーラがナヤトレイに問いかける

「知らない」

「じゃあどうして あなたも あなたの仲間もあの人に誰かと聞かないのかしら?」

「私は知らない でもボリスは・・・ 知ってる ボリス 動揺してた だから・・ ボリスに聞けばいい あの人は 私は知らないから」

そう言ってナヤトレイも外へ出ようとした

「お待ち下さい 彼が私の話に関心が無いということはよく分かりました しかしあなたはどうです?」

「・・・私?」

「はい 私が招待したのはお二人です 一人が敵意を見せたからといって もう一人もそうだろうとは限りません」

「私は・・・」

「二人が一緒に来て下さるなら 申し訳ありませんが強要することは出来ません あなた一人でも大丈夫です 詳しい話を聞きたいのでしたら尋ねてきてください」

「じゃあね」



「・・・あの二人に会いにエルティボまでおいでになったの 助言者様?」

「あ それだけではありません カーラ様にあらかじめ連絡も無しに訪れて恐縮ですが・・ 少し実験してみたいことがありまして」

「実験? あなたはまるで技術者のように言うわね とにかくその実験が成功するように祈ってあげるわ」

「ありがとうございます」

「ふむ クラブの裏事情に深入りするつもりはないから 実験であれ何であれ詳しく話してくれる必要は無いけど・・ どこに行くつもり?」

「永久に発つわけではありません ふたりに会いにまた戻ってこなければならないでしょうから」

「考える時間を与える? あの二人が永久に発ってしまうとは考えないようね すごい自信 トリビューンらしい堂々とした態度だわ」

「トリビューンか・・ そうですね 便宜上そのような名前が付いていますが 特別な呼称が特別な地位を意味するわけではありません」

「どうかしら ・・特別な地位を持つと言っても私はあまり不満がないけど 縁があって秘密を共有するようになっただけであって 私は政治争いに興味はないから」

「アハハ 何度も迷惑をかけることになり申し訳ありません・・・ それではそろそろ失礼しますね また会いましょう」



(技術的な事だから・・・ ハルトヴィン様に会いに行くか・・・ 万年雪の山荘だったかな? 少し遠いから急いだ方がいいだろう)






-エルティボ ヒンデミット家-

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「シラクの兄貴 この家で合ってるんですか? 貴族の家にしては物静かですが・・・」

「間違いない 町のやつらにも確認したからな 出入りする人がいないのはちょっと変だが・・ まさか子爵ともあろう人間が夜逃げするはずもないしな」

「アニキ でも本当静かすぎませんか? 中を覗いてもちびっ子たちしかいないし・・・ 本当に貴族の家なんですか?」

「チッ! シャドウ&アッシュのやつら 使える情報があればオルランヌに売り込む気なんだろうが もうちょっと調べてから人を送るべきじゃないか?」

「子供しかいないのに騒ぐ訳にはいかないし・・・ 状況をみて何も無いようなら適当に撤収しなければ・・・」




家の影からその様子を伺う複数の影があった

一人は町人の格好をした無愛想な男 残りは装束を羽織った兵士のようである

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「・・・・」

「怪しくないですか? 子爵の方も気付いたのかも・・・」

「身なりからして傭兵のようだ 上品な性格のオルランヌの女があんな傭兵を雇ったとは考えられない」

「し・・しかし我々も元々は王室近衛隊所属です なのにこんな傭兵の変装をしてますし・・」

「所属については口に出すなと警告しなかったか? どこが話が漏れるか分からないぞ あそこのやつらのように堂々と動き回ると追跡されるのがおちだ 分かるか?」

「はっ!」

「軍人の行動はいつも敵を念頭に置いとくものだ どんな状況でも どんな敵でもな 見たところ特別な事情を知る傭兵には見えない すぐにここからは去るだろう」


「・・ヒンデミット子爵は大魔法使いを逃がしたといってるようだが 実際は隠しているのかもしれない あの方の望みは正確な事実確認・・・ 少しのミスで大きな戦争の勝敗が分かれるもの オルランヌにレンム 両方のスキを見つけ出せれば今の苦労も惜しくはないだろうが・・・」

「戦闘も政治も結局は忍耐力の戦いだ 私は主人の命令に忠実であればいいのだ・・・」




-白い森-

エルティボに隣接する森は 厳しい土地ながら原生する木々は多い

川は凍り森には雪が降り積もるが

雪原に生息する生き物からは生命の力強さも感じ取る事が出来る




「・・うーん また道に迷ってしまった この方向で合ってるはずなのに・・・うさぎに聞くわけにもいかないしな・・・うーん」

「ワープサポーターも故障しているし・・・ 何が間違ったのかな・・・」

「万年雪の山荘は これほど時間のかかる距離ではないはずだから 多分もうちょっと行けば着く・・・はずだろう」

うさぎが森の奥へと飛び跳ねて行く 着いて行こうとも思ったが

足の悪さに 着いていくほどの余裕はなかった

「慣れないな・・・雪道は・・・」

数刻ほど道を進むと 川と川の繋ぎ目に小屋が立っているのが見えた

「はぁ・・・やっとか・・」



-万年雪の山荘-

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「いらっしゃい 私はここの主人ハルトヴィンだ」

(暖かい・・・ 随分と寒気に当たった様だ)


「はじめましてハルトヴィン様 ラッセル様の友人で 彼と同じ仕事をしている者です」

「おお 良く来たな 私の大事な友人ラッセルの友なら 私の友でもある ハッハッ 秘密の旅行でもしているようだな よそ者が多い町といっても 目立たず静かに過ごせる場所はなかなかみつからんだろう」

「初対面なのに迷惑をかけることになってしまい申し訳ありません」

「いやいや気にするな ラッセルのやつも居場所がばれるといけないといつも注意深かった やつとは仕事の関係で親しくなったのだよ そう何回も会えなかったが 本当にいいやつだった」

「技術的な助言を下さったと聞きました」

「技術というほどのものではない ハッハッ 手に入れたいものがあるとかで手伝ってやっただけだよ」

(ランケン・メルカルト様に関して聞いてみようか? しかしランケン様とはつながりが薄いだろうか・・・ あの方は閉じこもって研究ばかりする人だしな・・ まぁいいか ヒンデミット家に関しての情報が得れればそれでいい)

「何日でも泊まって構わないから2階を使いなさい 生活をするには苦労をしないだろう ハッハッ」

「本当に助かります ありがとうございます  ・・・ん?」

トントンと戸を叩く音が聞こえた

「うん? こんな人里離れた所に来るなんて どんなお客さんだ?」

「少し身を潜めますね・・・」

ランジエは小声で伝え 物陰に隠れた


「こんにちは 突然の訪問ですいません ちょっとお聞きしたいことがあるんですが」

中に入ってきたのは赤毛で長身の男だった 背中に槍を背負い風貌からは腕の立つ冒険者であることが感じられた


「・・・・・ ・・・・・・で ・・・・・・・・・ことが・・・・・・ ・・・」

「・・・・ ・・・・」

物陰からは聞き辛く 会話の内容までは読みとれない


「ありがとう では待っているよ」

そうハルトヴィンが礼を伝えると 男は去って行った


「お知り合いですか?」

「最近よそ者がちょっと増えたんだ いくら雪の饗宴が近いといっても 妙に見慣れない冒険者達をよく見かけると私までそわそわするよ」

「そうですか」
(用件を聞いた方がよかったかな? かなり端正な冒険家のようだった もしかすると有名な方だったかもな・・・)

「それはそうと 何処へ行くつもりだ? 助けが必要ならいつでも言いなさい 出来るだけ力になるよ」

「お言葉感謝致します あ・・・ところでヒンデミット家に出入りすることはできるでしょうか? 中に知り合いがいるとか 単純な使いの人でも構いませんが」

「むぅ 残念ながらあそこの家はこの頃雇用人を使わないのだよ」

「貴族の家なのに 雇用人がいないなんて理解できませんね」

「子爵が急に全員を解雇したそうだ ウワサだけだからわからんが子供達の乳母までいないそうだよ 家の事情までは分からんが 子供達は大丈夫なのか心配だな」

「そうですか・・・」

「洋菓子店の主人もしんぱ・・・あ! 洋菓子店! あそこへ行けばもしかしたら方法があるかもしれん 子爵家のおぼっちゃまにお菓子を作ってあげているようだからね 上手くいくかもしれんな」

「わかりました ではさっそく行ってみるとします」





-エルティボ 洋菓子店ヘンゼルとグレーテル-

店に入るとバターの香りが立ち込めてきた 店の中にはパンやお菓子が並び

奥には色鮮やかなケーキが並べられていた

「いらっしゃいませ~ 甘い洋菓子店へ! 私はエーリッヒ お菓子同様あま~い男です フフフ」

「こんにちは 素敵なお店ですね」

「店よりもステキなのは私のお菓子です ミルフィーユもサバランもレディ達の虜です 甘い言葉よりもステキなお菓子たちですよ」

「お話がお上手ですね ・・あ このベリーをのせたタルトなんて すばらしいですね この地方ではベリーは希少なのでは?」

「なかなか材料集めも大変ですが 良いお菓子を作るためには仕方の無いことなのです フフ ・・ところでお菓子をお求めですか? 旅の方のようですがプレゼントとか? あなたのような方にプレゼントを貰うレディは幸せ者ですね~」

「レディ達も甘いものが好きですが 子供達の方がもっと好きでしょう? ここに来る途中に通りで遊んでいる子供達をみかけました」

「ああ~ そうですね 子供達は一番大切なお客様です 子供達の口はウソをつきませんからね~ 特にヒンデミット家のおぼっちゃまは私の作るゼリークリームケーキが大好物でした」

「子爵夫人は最近どうですか? 客人も多いと聞きますが」

「えっ? ヒンデミット夫人の事ですか? うーん・・・子爵夫人が出入りする客を嫌がって 急に雇用人を解雇したとは聞きましたが それからはあまりお客さんの話は聞かないですね」

「急に雇用人を解雇したなんて 何かあったのでしょうか?」

「さあ・・私にはよく分かりません カールお坊ちゃまとコゼットお嬢様がちょっと心配ではありますが・・ 私にはお菓子を送ってあげる事しか出来ませんから・・」

「・・仕事を探そうと思っていたのですが そのような事情では難しそうですね」

「あ お仕事を探しにこられたんですか? それなら依頼を受けて下さりません? ちょうどお菓子を作っているので」

「・・・もちろんです お菓子を届ける仕事ですか?」
(事が簡単に進みそうだな)

「引き受けてくれますか!? ありがとうございます いつもは兵士の方に任せているのですが 最近は忙しいようで・・・ 旅行者さまは危険な人ではないようですしね」

「はい では届けて参りますね」

「それではお願いします~」





-ヒンデミット家-

部屋に入ると男の子と女の子 そして主人らしき女性がいる

外は酷い寒さにも関わらず 家の中は冷たく暖炉の灯は薄らいでいた

焼き上げたお菓子の暖かさが 逃げていくような気がする


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「失礼します」

「・・何の用? あたくしの名はミレイユ このヒンデミット家の主人だ ・・・今はまだ・・・ね」

(今はまだ・・?)

「仕事を探しにきたのなら帰りなさい あたくしが雇用人を解雇したのは 誰かを雇う為ではないから」

「ああ それは残念です しかし私はこのお宅にお菓子を渡しにきただけです」


「・・・わぁ 甘いにおい~! やっぱりエーリッヒのお菓子の腕は天才だなぁ ボクの口にぴったり合うしな! ほらコゼット見てごらん!」

「えへへ おいしそうなにおい お腹空いてたから・・よかったね」

「ふん・・・あのパティシエも余計な事をするね 配達人まで雇ってお菓子を届けるなんて・・・ こんなことをしてもあたくしから得られるものなど何もないのに・・」


(他者の干渉を拒絶しているようだ 何があったんだろう? このような反応と大魔法使いが関係しているとは考えられないが・・・)

「寒さのせいで頭がズキズキする・・ はあ この国の寒さは何年経っても適応できないわ・・・」

「お母様・・寒いです 燃料がもう・・なくなりました」

(女の子は体を冷やすとよくないのに・・・)

「コゼット! ほらお菓子があるからこれを食べろ 温かい物を食べれば寒くないはず エッヘン!」

「・・・ぶしつけですが子爵夫人 火を使えるなら簡単なお茶やスープでも作った方がいいと思います お菓子ばかりでは子供達にもよくありませんから」

「お・・・お母様を叱らないでっ! だ ダメ お母様 お怒りになるわ・・・」

「お母様! ボクが守って差し上げます さあ早くこの家から出て行け! お・・お菓子を持ってきたのは・・ほ 誉めてやる!」

「失礼な事を言ったのならお許し下さい もう帰りますので」
(こんな状況でも親に怒る事が出来ないのか ・・親が心から自分自身を憎悪することもあると言う事実 子供達はどうして捨てられる瞬間まで受け入れられないのだろう?)


「・・・・ ・・ 立ち振る舞いから貴族に仕えることに慣れているようね この国の出身ではないようだな? 暖かい国を背に向け この不毛の地へ来るとは・・ 何をするつもりか知らないけど信用できるようね エーリッヒに配達報告をしたらすぐ戻ってくるように 話を聞こうか」

「はい わかりました それではエーリッヒ様に報告を終えたら またお目にかかりましょう」





-エルティボ 洋菓子店ヘンゼルとグレーテル-


「あ 配達から戻ってきましたね 待っていました お二人は喜んでくれました? はあ~やっぱりお客様の感想が気になります 焼きたてのマフィンを取り出す時のようにドキドキするんです!」

「はい エーリッヒ様のお菓子が本当に好きなようでした」

「そうですか~ 次は栄養を考えてサンドイッチでも作ろうかと思います 子供達には甘い物ばかり食べさせる訳にはいかないでしょう?」

「・・・・そうですね」

「昔はお優しい方だったのにどうしてしまったのでしょう 何が子爵夫人を変えてしまったのでしょうか・・・あ そうだ 少ないですが御礼をしなければ 受け取ってください」

「ありがとうございます では さようなら・・」


ランジエは礼を受け取ると 急ぎ足でヒンデミット家に戻っていった


-ヒンデミット家-


「・・・もう寒さはうんざり 引っかくような風の音も 全て覆ってしまう勢いで振る雪も・・・ うんざり・・ 何をぼうっと見ている? そなたは珍しい召使だな 目をそらさず堂々としている」

「・・・・」

「まあいい 手紙を書くからシルクを持ってくるように・・・」

「手紙? ・・・わかりました」

「はあ・・・あの雪は一生やまないようだ・・・ うんざり・・・ こんな憂鬱な所 もううんざり・・」

(夫人は精神的に疲れているようだ その原因・・・何かあるはず・・ それが大魔法使い あるいは政治的問題の関連がある可能性も大きいのか?)

「何も・・・出来ないのに どうして・・あたくしは・・・」

(とりあえずはシルクを用意しよう 手紙を書くのにシルクか・・ やはり貴婦人らしく贅沢だな ・・・子供達も寒そうだ 燃料も買ってこよう・・)





一刻程の後 邸宅に戻ると夫人の姿は無く 子供達が寒そうに身を寄せ合っていた



「あ ・・・・お母様は今別の部屋にいらっしゃるの あの つまりは・・・病院に行かれるの・・・」

コゼットは震える声でそう伝えた

「そうですか 教えてくださってありがとうございます コゼット様 ではカール様 頼まれていたものを持ってきたので 代わりに受け取って頂けますか?」

「エッヘン! このカール・フォンデミット様が代わりに受け取ってやろう 礼儀正しいやつだな エッヘン!」

「クシュン!・・・すごく・・寒い」

「それくらい我慢できてこそ真のレディーと言えるのだ だろコゼット?」

「うん・・・ でもさっきスワランおじさんが持ってきたのを貰えばよかったのに・・・」

「何かあったのですか コゼット様?」

「さっき警備兵のおじさんとスワランおじさんが一緒にきたの 薪をいっぱい持ってきてくれたのに お母様は見知らぬ人を連れてきたって すごく怒ったの・・そしたら何も必要ないって 誰も入れてあげなくて・・・」

「・・・・」

「あたし達はとっても寒いのにお母様は怒ってばかり・・・ お母様 体の具合でも悪いのかしら? ・・その後おじさん達は窓の外から手を振ってくれて・・ スワランおじさんが今日会った冒険者はあたしみたいに小さくてかわいいレディーだったって 銀髪でとてもか弱く見えて・・これからが心配だって」

(銀髪・・? ふぅむ レイ様ののようだが どうして一人で依頼を受けたのだろう? 誰も一緒にいないのか?)

「ふん! お母様のおっしゃるとおりだ 真の貴族は寒さなんてへっちゃら・・・ くしゅん!」

「お母様も寒いでしょうに・・・ ぐすっ」

「・・・・子爵夫人が依頼したものではありませんが 燃料を持ってきました コゼット様 カール様 失礼でなければこちらに火を起こしても宜しいでしょうか?」

「ほ・・本当? うわ~ 寒くて死んじゃいそうだったの!」

「エッヘンエッヘン! 寛大に許可してやろう ウムウム」

「では・・・少しお待ち下さいね・・・」

そう言って 暖炉に薪を投げ火をつけた

「わぁ・・・あったかい・・・」

「そうだ これはお母様が下さったお礼だ 受け取るのだ エッヘン!」

「ありがとうございます・・ ミレイユ様はすぐ病院に行かれるようですね 付き添いがなくても大丈夫ですか?」

「うん 準備が出来たらすぐ行くはずよ 召使いはみんないなくなっちゃったけど 警備兵のおじさん達が交代でお母様に付き添うから大丈夫 でも病院はすごく遠いみたい・・・」

(ふむ・・・ならば午後はずっと留守ということだな)

「お母様 早くよくならないかな・・ くすん」

「泣いちゃだめだコゼット 貴族は泣いたら負けだ~!」


(さて・・どうしようか 略式ワープサポーターの整備をしないとならないから 一度カーラ様やハルトヴィン様の助けを借りるのも悪くないだろう しかし気になる・・・ボリスと一緒にいた少女が私の考え通り苗族の生き残りだとしたら・・・)

(確認してみる価値はあるんじゃないのか? 漠然とはしているがエルティボの人々の依頼なら ほとんどが白い森に行く確率が高い 一度いってみよう)


「あの さっきのあなたを見て ママ・・いえお母様はちょっと気分が良くなったようだわ 礼儀正しくて落ち着いているとおっしゃったの」

「ありがたいお言葉です コゼット様 カール様 それでは失礼しますね またお会いしましょう」

「さようなら~!」

「ウムウム 気をつけろよ」






-白い森-


「苗族は決まった運命のために生きている 絶対に気持ちがブレないという・・・しかし運命に従うという言葉は すなわち決められた事以外は選択できないという意味」

「もしあの方がたったひとりの生き残った苗族ならば また私の考え通りの引導者ならば あの方こそナヤトレイだろう そうなると私があの方をこの盤上に引き入れるために掲示すべきカードは明白だ」




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「・・・あなたは・・たしか」

「こんにちは・・・ お忙しいようですね」

「・・・・あなた ボリスと知り合い?」

「・・・・ いいえ」

「じゃあ 私に用があるの?」

「警戒するのも当然ですね まずひとつ確認しておく事があります 私がエルティボに来たのはお二人に会う為ではありません」

「どういうこと? 手紙を送ったのも メリッサに話をしたのもあなたでしょう?」

「そのように誤解されても仕方ありません そして詳しくお話も出来ません・・・ しかし手紙を書いたのもメリッサという方に話を切り出したのも私ではありません 私は調べる事があってここに来ただけです」

「調べる事?」

「もっと正確に言うと 確認しなければならないこと・・・でしょうか」

「確認しなければならないこと?」

「私や あるいはお二人なら出来ますが 他の人々には出来ない事 人には出来る事と出来ない事がありますから仕方ありません 直接来るつもりも全くなかったのですから」

「・・・??」

「こんなふうに例えたらどうでしょうか 星を見ているあの人の未来を占います 星は全ての人の頭上に公平にありますが 読法を知らないもの達にはただの無数に点滅する砂と変わりありません」

「・・・何を言いたいのか分からない あなたの言葉は難しい」

「進むべき道を知りたい時 ひとりで果てしない夜空を見つめるだけでは答えが得られません そういう時は星を読む人を探してみた方が効率的に解答を得られます」

「あなたのこと? あなた まるで預言者のように話すのね」

「私は預言者ではありませんが あなた達よりは多くの星を読めるの人間です だから私にはこれから進むべき道がもう少し明確に見えるのです あなたがまだ探せずにいる あなたの星も見えますよ ナヤトレイ様・・・」

「!!」

(この反応・・ やっぱりこの人が引導者だったか そして苗族が保管してきた神の武具も今この人の手にあるのだろう)

「・・・・私はあなたとは関係ない」

「少なくとも私を敵だと見てはいないようですね 武器を取り出して私の首に当てたらどうしようかと思ってたんです 安心しました」

「確認する事があってここにきたのでは」

「あなた達の知らない事を私は知っています 傲慢なことを言おうとしているのではなく 情報量が多いということです 世界の異変について知りたくありませんか? もしあなたが私の志に賛同して下さるのなら喜んで歓迎します」

「・・・・」

「私には ・・力が必要なのです」

「必・・・要・・?」

「私はあなたにやるべき事が何なのかお教えすることが出来ます もちろんあなたの自由意志を制約するつもりはありませんが 必要ならば助言くらいはして差し上げられます」

「・・・・」

「話が長くなりましたね・・ お手間を取らせたのならお詫び致します それでは・・・・」

「・・・さようなら」


(言うべき事は全て言えたか・・ 決断を下すのは私の役目ではない 少なくともこの状況では・・ 後のことはナヤトレイ様にまかせて そろそろエルティボに状況を確認しに行こう)






-ケルティカアジト-

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「・・・間違いなくオルランヌ公女の誓約書といいました それが事実なら死んだと思っていた公女が少なくともその時まで生きていたという事になります」

「ちっ・・ カルツ商団があの時ナルビクにいたとは知らなかった・・ くそ・・! そして誓約書とやらを手に入れたって? 何がどうなってるのかさっぱりだな」

「とにかくこの事は助言者に知らせた方がよさそうです」

「そうだな これは価値のある情報だ オルランヌの状況が今後どうなっていくか見守る必要があるからな それとお前の言うとおりならカルツ商団はすぐにその誓約書を公開するつもりは無いという事だな?」

「私が聞いた所によるとそのとおりです 決定的な利得が見えなければ動かないつもりのようで」

「ふむ・・ カーディフを握っている者の誓約書ならばかなり影響力のあるものだろうに・・・ なぜすぐ動かない?」

「きっと大穴でも狙ってるんでしょう 大商人ドメリン・カルツの心の内まで全て読めるなら 私がここでこんなザマだと思いますか?」

「なるほど 少々不安要素ではあるが いずれ我々の役に立つかもしれないな 毎回危険を顧みず手伝ってくれて感謝する 我々の助言者が帰って着次第 伝えよう」

「口先だけの礼ならいりません 私も一度その偉い助言者様にお会いできませんかね? 仲間内でもその顔をしってるやつは殆どいないそうじゃないですか 本当に存在する人物なんですか?」

「はっはっは 存在する人物かだと? 面白い仮説だな とにかく助言者には伝える お前も知っているだろう? 危険なのだ・・ 彼は・・・ そろそろ戻ったほうがいいだろう 長く商団を抜け出すと疑われるかもしれないぞ」

「借金取りに会うと言ったら みんな同情する目で見てきましたよ・・ ・・それでは」


そういって情報を伝えた男は立ち去っていった


「オルランヌ公女とカーディフの権力者の誓約書? 吉と出るか凶と出るか・・・ この情報が東方貿易権を狙ってるやつの耳に入ったら 目をギラギラさせ飛びつくだろう いつまでもつか・・」







-エルティボ 街外れ-

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「まったく! お嬢様どうして一人でこんなところにいらっしゃるのですか? 風邪でも引いたらお母様が心配しますよ!」

「・・・・」


(ん・・・あれはヒンデミット家のお嬢様だ 何かあったんだろうか?)


「コゼットお嬢様~ 私を困らせる気ですか まったく・・・」

「・・・・ あ・・・」

「ん? お知り合いですか? あのお宅には召使はいないはずだが・・」

「以前子爵夫人のお使いをした事があるんです それでコゼット様が覚えてらっしゃったようですね」

「そうですか~ ふぅ よかった こっちへ巡回にきたらお嬢様が一人でぽつんと立っていらして 腰が抜けるかと思いましたよ 白い森の方にでも行ったら・・」

「そうですね」

「一体何があったんでしょう? とにかくお嬢様を家まで送ってあげて下さいませんか? 私はまだ巡回しなければなりませんから」

「分かりました 安心して下さい さあコゼット様 家に帰らなければなりません カール様も心配してるのでは?」

「うん・・でも 怖くて・・ お母様もいらっしゃらないのに・・怖い・・ だから・・ ・・・」

(何かあるのか・・・?)

「うん・・・ カールお兄様も一人でいたら怖いと思う・・・だけど あたし・・・一人ですごく怖くて・・・」

「私も一緒に行きますから安心して下さい さあ 家に帰りましょうか」

「お兄さん一緒に行ってくれるの? よかった・・・あたし・・もう怖くない」

「コゼット様は強いお方です それではご自宅までご案内いたします」




-ヒンデミット家-


家に入ると男が一人 部屋の中で何かをさがしているようだった

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「何だ? 魔法使いはいないのか ふん 見当違いだったか」

(・・・ 誰かいるとは思わなかったな・・ 尾行かもしれない 一応気を付けるか)

「コ・・コゼット~~! どこに行ってたんだ~」

(・・・誰か見知らぬ人が来て怖くなって外に出たようだな しかしあの人の話し方・・・聞き覚えがある もしかしてアノマラド出身か?)

「この家で働く者はいけないと聞いたが 使いの者か? お前だ お前 家主もいないのになぜうろついてる あやしいぞ!」

「あ・・・私ですか? このお宅のお嬢様が道に迷われていらっしゃったので 警備の方に頼まれてお供をしてただけです」
(あの話し方 ケルティカの喋り方だ・・・)

「そうか・・・ 時間を無駄にしたな・・ 隊長の言うとおり 町を見回った方がよさそうだ」

「・・・・」

(ケルティカからここまでミレイユ様の身辺を調査しに来たのか? エルベリーク様の消息を聞いて単純に監視に来たのか それとも何かの取引があったのか・・ 定かではないな)

(私は情報に関してそれなりに早い方だと自負しているが アノマラド王室の情報網も侮れないな・・ それにしてもアノマラドでエルベリーク様を探しているとしたら その理由はなんだろう?)

(エルベリーク様は著名な大魔法使いだったが 長い間消息が絶たれた あの方が黒い預言者から身を隠す時に持っていったという栄光の笏についても 知っているのは現在の所 私達だけであるはずなのに・・・)


「・・・あ あの・・」

「あ 大丈夫ですかコゼット様 見知らぬ人は出て行ったようですね あとは門を閉じてミレイユ様が帰ってくるのを待ちましょう」

「うん・・・ あなたは・・いい人みたい だから助けてくれる? あたし・・頼みたい事があるんだけど 話したらみんな笑いそうで・・ ずっと話さなかったの・・」

「もちろん コゼット様の頼みなら・・・・・・ ん?」
(何の音だ・・? 外から何か・・・しかし ケルティカの兵士に違いない人物が変装してここにいたことは確かだ 予想していない状況だけに 周りを確認する必要はあるな)

「・・・・? あの あたしの話聞いてる? やっぱり困るのかな・・・」

「そうではありません コゼット様 だた 今は困るだけです 今ではなくしばらく後ならコゼット様のお話を聞きに来るでしょう」

「今は・・・だめなんだ・・・」

「はい しかしすぐに代わりの人たちをここに来させます まずはその人たちに話して下さい」

「お兄さんの友達なの? その人たちは笑わないかな?」

「お約束します 笑わないでしょう」

「うん・・・わかった やっぱりあなたはいい人ね エヘヘ 嬉しい」

「それでは私を信じてお待ち下さい」

(コゼット様の話を聞いておく事は重要だ ミレイユ様は情緒不安定のため役立つ情報を得るのは難しい カール様やコゼット様の話を聞いて 有益な情報を見つける以外道はないだろう)

(・・・さっきのケルティカの者が何か感づいた可能性もある 確認しておかなければ・・)




-ヒンデミット家前-


(やっぱり・・・足跡が散らばっている 少なくとも3人・・ それ以上が徘徊していたようだ ・・・ケルティカのコイン・・だ こんな物落としていくなんて意外とそそっかしい人たちだな)

(ここで出入りする人たちを観察いていたのかもしれない 今はどこかに行っているのか・・ 先ほどの兵士もやはり・・・ ん・・・人の気配・・?)


ランジエは素早く木陰に身を隠す


「変わらず問題ありません シラクのアニキ どうしましょうか? このまま撤収しましょうか?」

「シャドウ&アッシュのやつらも特に根拠もなく オレ達をここまで送ったんじゃないのか? どうせあいつらも結果を期待していないだろうし ずっとここにいるのもな・・」


(・・・シャドウ&アッシュ・・の傭兵か・・・ 広く知れ渡っているとみなければならない ウワサだけで傭兵を送ったようだが・・・)

(あの人たちの口調はケルティカのものではないようだ さっきの兵士は傭兵と見るには違いすぎるか 集団生活に慣れた正規の兵士のような立ち振る舞いだったな ・・・ならばミレイユ様の身辺を監視しにきたのは二つのグループと考えるのが妥当か)


「ったく もどかしいな 魔法使いやら何やら知らねぇよ こうなったらいないと報告する事にして 何か適当な仕事でも新たに探してみなかればならないな くそ・・! まともな仕事はないのか」

「でも アニキは別に追っているものがあるじゃないですか?」

「ああ だがもどかしい あの剣の行方も知っているような気がするのに・・・いくら思い出そうとしても同じ所をグルグル回ってる気分だ」

「アニキ そろそろ撤収しましょうよ ここは寒くてしょうがないですぜ」

「そうだな どうせマダムも病院かどっかに行ってるしな」


(あの人たちは目的もなく訪問したようだから気にしなくていいか 問題はあの兵士だ 今ここにいないという事はミレイユ様を付けているのか?)

(コゼット様の事もあるし もう少し家の中も調べる必要もあるのに・・・ 困ったな こんな状況では余裕がない・・・一度カーラ様の所に行ってみよう 修理の件もあるしな・・・)








-エルティボ雑貨店-


「あら 待っている人はまだ来ていないようだけど どうするのかしら・・・ それより大丈夫なの? 助言者様が公然と歩きまわれる雰囲気ではないようだけれど」

「ああ・・・予想外の状況で私も少し驚きました しかしあの方達も忙しいようでしたよ・・・ 私のような者 おそらく目に入らないでしょう」

「まあ 下らない傭兵達だったみたいね クラブのトリビューンがここにいるとを知ったら目つきが変わるだろうけれど そんな情報を知っているような連中には見えなかったわ・・・」

「ええ あまり気にする事はなさそうでした」

「それはともかく オルランヌの奥様はもう気付いているようだけど どう思う?」

「少なくとも子爵夫人を監視しに来たのは二つ以上の集団です 一方は仰るとおりの取るに足らない連中でした しかしもう一方は・・少し危ないようですね 一人くらいと話が出来たらいいのですがね あまりにも危ないですね アハハ」

「かわいい顔して ひやっとする事を言うね ・・はあ とにかくオルランヌの女 ちょっとかわいそうだね S&Aも動き出すなんてね なんでも商売にしようとするのね」

「ミレイユ様もある程度は予想していたのではないでしょうか? 使用人をみな追い出したのは 単純に感情の問題だけではないはずです」

「あの女についてはよく分からない 豪邸の奥様だから 私にはさっぱりだわ でもやっぱり気になるわね・・ うーん・・・」

「オルランヌにはこんな事に気を使う余力は無いはずです 不幸な事ですが 状況から推測すると もう一方はアノマラドが送ったようです レンムはオルランヌにとって最も重要な友好国だったのに 昔とは違うのでしょうか」

「まあ しったこっちゃないわね 私はただ周りがうるさくなるのが面倒なだけだから」

「あ そうだ もしよろしければこの装置を見ていただけませんか? 接合部に亀裂が出来て作動しないみたいなんです」

「・・・・ほう 面白いわね 誰が作ったのか知らないけど なかなかの技術だよ こういうのは専門外だけど これぐらいなら見て上げれるよ ちょっとまってね」











(・・・・ ミレイユ様が嫁いだのは十数年前 オルランヌとレンムの親交を固める為の特別な政略結婚だった カランタン男爵領の主人であるビゼ卿の令嬢だったか)


(ミレイユ・ブラン・ド・ローレンと言ったっけ・・・ 記憶が曖昧だが 暇な貴婦人のウワサ話を聞いた事がある プライドの高いオルランヌの令嬢がこんな政略結婚を受け入れたのは 一種の使命感の為だったのだろう)



(そう考えると ・・・意外に答えは簡単な事なのかもしれないが・・・・)



(・・・ ・・・ ・・・・・)





「ねぇ・・・ねぇ ちょっと! 聞いてる?」


「あ・・はい?」

「ダメだわ・・ 少し複雑すぎて思ったようにいかないわ うーん どうなってるのかしら?」

「そうですか・・・ でもいくつか修理について心当たりがありますから ご心配なく 他を当たっ・・・」


ナヤトレイとボリスが雑貨店に入ってきた


「あなた 見た目より行動が早い」

「これは ナヤトレイ様 ジンネマン様 それほどではありませんよ 私の予想よりお二人が早く戻られてしまい 仕事がまだ終わってないのですから」

「さっき 世界の異変について話すと言った 私が知らない事実ってなに?」

「ああ まず私は片付けなければならない別件があります その問いをずっと待つことをお願いする事もできませんし よろしければヒンデミット家に立ち寄ってみませんか?」

「ヒンデミット?」

「あのお宅のお嬢さんが 困った事を抱えているようです」

「依頼?」

「そうとも言えますね」

「あなたが行けば?」

「今は無理です」
(監視者がまだいるかもしれないしな やはりあの人たちの位置を把握しない状態で 私が動くのは危険だ)

「レ・・レイ 本当に行くつもりなのか?」

「なぜ? 行っちゃダメ?」

「い・・いや お前が行くなら俺も行く」

「ボリス ・・変 いこ」


そう言って二人は店の外へ出て行った


「ふふん かわいいペアね 助言者は一人で寂しくないの?」

「お気遣いなく 決まったペアがいない代わりに 私には守らなければならない人がたくさんいますから」

「ヒンデミット邸に二人だけを行かせたのは あっちにうろついてるヤツらが気になるからかしら? まあ あなたはむやみに動ける状況ではないわね」

慌しく扉が開き 突然傭兵の格好をした男が入ってきた

「おい!時間がないから修繕道具とハーブをありったけ出せ!金はつけておけ 仕事が終わったらゆっくり持ってきてやるから」

「初対面なのにお客としての礼儀も守れないのかしら? 見たところよそ者だけど 無礼な振る舞いには頬をひっぱたくわよ」

「私を誰だと思ってそんな・・・ ええい 面倒だからガマンするぜ ほらよ! 金を出せばいいんだろ?」

「金さえ払ってもらえれば 望みの物を売ってやるわよ ほら さっさと消えて 用もないのにうろつかれると迷惑よ 平凡な傭兵のくせに偉そうね」

「よ・・傭兵? くそ~ 任務でさえなかったら・・・」

(任務? 興味深い ちょっと探りを入れてみるか)

「あの 失礼致します アノマラドからいらっしゃった方ですよね?」

「なんだお前は? 私に言ってるのか?」

「・・怖い怖い あまり興奮しないで下さい 私は重要な情報を差し上げようとしただけなのに いきなり脅すなんてひどいですよ」

「・・・重要な情報だと?」

「ヒンデミット子爵夫人にお会いに来たのではありませんか? 私は時々あそこでお手伝いをしてるんです 変だな 私の顔見覚えありません? 今日も昼過ぎに配達に行ったんですよ」

「と・・・ところで私たちがアノマラドから来たと言う事をどうして知ってるんだ? こ・・これは極秘なのに・・」

(はあ・・・ そのあまりにもはっきりとした ケルティカの話し方で分かりますが・・・・)

「なぜ知らないと思うんですか? 可能性はたくさんあります 例えばヒンデミット子爵夫人も既にアノマラドの皆様に気付いてらっしゃるとか」

「なにっ!? その話詳しく聞かせてくれ!」

「人目が気になるので外に出ましょうか? ではカーラ様 失礼します」

「あ・・・ ああ そうね 気を付けて・・バイトの・・お使い屋さん」





-雑貨屋近くの町外れ-

「そうか・・・つまりお前の話によると 子爵夫人がもうオルランヌと連絡を取っているということだな?!」

「はい そうでなければ ただの使い走りの私がそんな話を全て聞いたでしょうか?」
(適当に 聞きたがる情報を与えておくか どうせ伝わらないんだろうから・・・・)

「はやく 団長にお知らせしなくては うーん・・・」

(団長? もしかして長髪の若い騎士の事か? ほほに大きな傷のある・・・)

「手には使い込んだ鞭をお持ちにだったような その方ではないですか?」

「おお 団長をどこで見たんだ? いや~本当に記憶力のいいヤツだな」

(おっと 困ったな・・・はあ あの方の目に触れたらかなり面倒だ・・・ うーんそれはともかく あの方が直接いらっしゃったと言う事は ヒンデミット家に何かあるのは間違いないようだ)

(エルベリーク・ジュスピアン様が あのお宅に泊まったという情報も間違いのない可能性が高くなる ふむ・・)


「こんな事も知っています ・・・大魔法使い様は あそこにはいらっしゃいません」

「ほお~ 私たちが大魔法使いを探している事も知っているのか? 本当にすごいな で 大魔法使いは何処に行ったんだ?」

「あ 私もそこまでは知りません いくら目ざといと言っても バイトのおつかい屋にすぎませんから」

「チェッ・・・やっぱりそうだよな? はあ~ さっき子供達がいる時に探してみたんだが特に何もなかったんだ 貴族とは思えないようながらんとした家だったし」

「それで子爵夫人が病院に行った時 他の場所へ行くかもと疑ったのですね わぁ やっぱりアノマラドの方はすごいですよ」

「そりゃそうだ うちの団長は大変信任を得ているからな 知ったら驚くぞ ヘッ」

(そうでしょうね あの王妃陛下の直属護衛騎士でもあるのだから 知りたくなくてもとてもよく知っています 残念ながらね・・)

「ところで さっき耳にしたことがあるんだが お前知ってるか? 情報通みたいだから聞くが・・・」

「どんな情報ですか? 分かるなら喜んでお答えしますよ」

「団長が調べろと言ってたんだが さっきのあのムカツク女の事だ あの女アノマラドと何か連絡しているウワサはないか?」

「カーラ様が連絡を? まあ 商人ですから取引はしてらっしゃるとは思いますが 特に変わったことは聞いてませんね」

「そうか さっき港の船乗りから聞いたのだが あの女 アノマラドと連絡しているようだと 変だな あとでまた調査してみるか」 

(・・・・カーラ様を調査する事になれば 私達についても話が出る確率が高い こうなった以上エルティボに長居するのはよくないだろう そしてカーラ様に疑いがかからないようにしなければならない)

「ともかくちょうどいい! お前ヒンデミット家に私と一緒に行って案内してくれないか あそこは子供達が騒いで大変なんだ あとは地下室だけなのにまともに見ることが出来なかったぜ」

「・・・・・」

「まぁ 私と行動して損はないはずだ 団長が帰ってきたら私が上手く言って紹介してやるよ 今よりはずっと稼げるぜ!」

「それは光栄ですね もちろんヒンデミット家には行きますが しかし・・・・」

「?」

「しかし 私は子供ではないので 一緒に行ってくださる必要はありません」

「な・・なんだと!? こいつ・・!」

「申し訳ありません ヒンデミット家には私一人で行きます」

「!!」

『ターン!』

乾いた銃声が森の方に響き渡り 男が静かに倒れこんだ

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(こんな方法で口を塞ぐのは心苦しいが・・・ あの方の所属の近衛兵はプライドが高く 抱き込む事は不可能だからな)



「まったく・・思い切った事をするのね」

「カーラ様 お騒がせしたようで・・・ 本意では無いのですがが 仕方ありませんでした」

「まぁ・・・後は任せて頂戴 時間も無いんでしょう?」

「はい 申し訳ありませんがお願いします」


(さあ もたもたしてる時間はない あの方が帰ってくるまでがタイムリミットだ すぐにヒンデミット家に行こう)







-ヒンデミット邸宅-

邸宅の前ではカールとコゼットが立っていた 

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「カール様 コゼット様 どうしてそんな所にいらっしゃるのですか?」

「わあ 来てくれたんだ ぐすん・・・また変な人たちが来たかと思っちゃった」

「さて 風邪を引きますよ 中に入ってください もうその知らないおじさんは来られないでしょうから・・・」

「ぐすん・・ばあやに会いたい しくしく ばあやだけは残って欲しかったのに・・ぐすん」

「お母様は故郷から連れて来たメイド達まで公平に追い出したんだ コゼット 貴族として模範を示さなければならないのだよ!」

(オルランヌから連れて来た人まで? それならば何らかの事実が オルランヌに知られるのを恐れてそうした可能性もあるな 問題はそれがどんな事実かだ)

(ミレイユ様のプライドが傷つけられたこと オルランヌに知れたら困る事 そして ヒンデミット子爵が現在エルティボにいないこと・・・ そしてあの方がアノマラドから調査にここまで・・・ そうなるとおそらく・・・)

「ぐすん」

「コゼット様 カール様 さあ泣くのをお止めになって 家に入りましょう お父様もそろそろ帰ってくる頃でしょう? こんな姿を見たら悲しみますよ」

「そ・・そうだ! お父様がケルティカから帰ってきたら りりしい姿を見せなくちゃ!コゼット! 早く中に入ろう フムフム!」

(やはり子爵はケルティカか・・・ これで答えは確実の物となったか レンムはオルランヌと手を切って アノマラドに目を向ける事にしたんだろう)

「ぐすん 寒いけど・・・ それでも家の中は怖いの・・しくしく」

「お母様ももうすぐ戻ります 私も一緒にいましょう」

「ほんと! うん! じゃああたしも入る!」

「カール様 コゼット様 魔法使い様がいらっしゃった地下室を少し見ても宜しいでしょうか? カール様が現在このお宅の主人ですから 許可を頂きたいのですが」

「フムフム! 許可する! いくらでも見ろ エッヘン!」

「魔法使いのおじさんが地下室にいたこと どうして分かったの? お兄さんすごいねー あたし誰にも話さなかったのに へへ」

「では 中に入りましょうか 大分冷えてきましたね・・」




-ヒンデミット家 地下室-


「・・・意外だな 平凡な地下室だと思っていたのに こんな水準の高い結界を何重にも張っているとは・・・町を守る為の結界と似たパターンだ 不安定ではあるが基本は確かなオルランヌ式・・・」

「エルベリーク様の実力と見るには 部分部分が滑らかではない だからこれはミレイユ様が作ったものと考えるのが妥当か」

「ミレイユ様はオルランヌの貴族家の令嬢だ 魔法に造詣が深いのも当然だ しかし・・・これほどの水準の結界を構築できるとは・・・」

「いくつかの魔法円・・・ 地下室とは思えない程の大きさ・・・ あ・・ あれは・・本!?」

無造作に置かれた本であったが 触れようとすると電気が走った

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「・・・これは大魔法使いが張った禁制だな 誰かの訪問に備えて残しておいた記録・・・暗号なら推測出来る物があるから一度試してみるか」

「・・・誰が触れても反応を示すのでは結局は見ることが出来ない これを託したのであれば 恐らくは・・・ エルベリーク様の一人娘というティチエル・ジュスピアン」

「関係は大いにあると考えるべきだ この様式で 暗号・・・・ これで・・・どうだ・・・?」

解読された本は 何事も無かったかのように静かに置かれている 触れても先ほどのような反応はないようだった


「よし 正解だったか これで見る事が出来・・・! なんだこれは・・・ 本から光が・・ 不思議な現象だ 何かが見える・・ 何かを伝えようとしているのか?」


真っ暗な地下室に霞のように光が現れ 映像を映し出す




-過去 ヒンデミット家-

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「何も言わずにかの国に行かれたようですわ そろそろ帰って来てもいい頃ですのに」

「ご主人の事が気になるようですねミレイユさん 天気が荒れそうなので心配です」

「やはりあの人は あなたを売り渡すつもりなんです アノマラドに・・・・」

「大丈夫です 少なくとも人間の国にとどまる事が出来るなら それも悪くないでしょう」

「あたくしは大丈夫ではありません! あの人があなたをアノマラドに渡したら あたくしは・・・あたくしの祖国は! 祖国のオルランヌは・・・!」

「人間の国はいつも変わりませんね 私が人間に背を向けた時も 今も まったく変わっていない」

「魔法師達はどうして 隠された知恵の探求にそんなにも穏やかでいられるのでしょうか? 裏切りも 貪欲も そんなに切ない表情で眺められるのでしょう・・・」

「子爵夫人?」

「しかし・・わたくしは違います あたくしは平凡な人間だから 主人も恐らく平凡な人間だから 恩人であるあなたを何も考えず売り渡す事が出来るのでしょうけど」

「・・・・」

「ああ ・・・・こんなところに嫁がなければよかった・・・ 祖国の安泰に寄与するというプライドでさえ すべてあたしの錯覚に過ぎなかったなんて・・・」


外からは荒々しい言葉が聞こえる

「おい!! 今すぐにここを開けろ!」


「どうやら 来たようですね」

「あたくしも魔法大国オルランヌの女です 人ひとり隠せるくらいの結界を作るのは難しくありません」

「大丈夫です エルハルト軍に捕まって 久々にケルティカ見物をするのなら それもまたいいでしょう」

「地下室に身を隠して下さい ずいぶん前に学んだ結界魔法が役に立つとは思いませんでした 急いで下さい!!」


ミレイユは指輪を一つ取り外し 藍色の宝石の部分を握り 素早く魔法を発動させた


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ミレイユが結界を張り終えると同時に エルハルト子爵と 兵数人が駆け込んでくる


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「レディー! 大魔法使いをどこに隠したんですか?」

「さぁ 何の事ですの? 隠したと言うのなら勝手にお探しなさい あたくしは知りませんわ」

「はあ まったく レディーは貴族出身だといっても 現実をよく知ってらっしゃる方だと思いましたが まことに残念です」

「それはあたくしの台詞ですわ! あなたが・・・まさかあなたがアノマラドの犬になったとは知りませんでしたわ こんなことなさるなんて・・ あたくしの祖国オルランヌは! あたくしは何の為にこの遠い地まで嫁ぎに来たと言うのですか?」

「レディー どうか現実をまっすぐ見てください レンムもオルランヌも自国の問題を解決するのに精一杯なのです こんなときうわべの友好など役には立ちません」

「・・・・ ・・・・魔法使いはここにはいません 絶対に・・・ あなたの思い通りにはいかないでしょう」





「絶対に」











-ヒンデミット家-


「・・・・ ・・・・ これがエルベリーク様が誰かに渡そうとした記録か? レンムとアノマラドの親交か・・ 事実ならばミレイユ様があんなに絶望したのも理解できる」


階段を上ると コゼットが駆け寄ってきた


「お兄さん どう? 探し物は見つかった? 魔法使いのおじさんはもういないのに がっかりしなかった?」

「気遣ってくださるのですか? アハハ 優しいですね ・・ ・・それより魔法使いのおじさんと言う方はもしかして・・・」


家の外に馬車が止まる音が聞こえ 子爵と付き添いが入ってきた 


「あら 何事? あたくしの子供達に用でも?」

「あ・・あ・・ お母様 あの あのね・・・」

(あの馬車護衛・・・ どうやら変装して潜り込んでいるな ミレイユ様は気付いてないようだ)

「失礼しました コゼット様が頼むことがあるので再びお伺いしました」

「う・・うん あの そう あのね」

「コゼット様 欲しいものがあるとおっしゃってましたよね?」

「うん・・ そう! 頼みたい事が・・・ あったの! ミラクルグラスが欲しいの! それがあればあたしのぬいぐるみも 目がよく見えると思うわ」

「はあ あの子はいつまでぬいぐるみ遊びをするつもりなのかしら 頭が痛いわ・・・」

「それでは失礼致します ご主人様がいらっしゃらないお宅に訪問した無礼 寛大にお許し下さいませ」


-ヒンデミット邸宅前-

(ふむ・・・コゼット様の機転のおかげで 怪しまれずに済んだか・・・ ミラクルグラスを入手して 一旦出直した方がよさそうだ)







-ヒンデミット家-

再び邸宅に戻ると 夫人の姿は無かった

「お待たせしました コゼット様 どうぞこれを」

「あっ 本当に来てくれたんだ 嬉しい・・・ ありがとう 本当に持ってきてくれるとは思わなかった これ欲しかったの」

「ところでコゼット様 お聞きしたい事があるのですが お答えして頂けますか?」

「なぁに?」

「私の友達がどこへ行ったか知りたいのですが 心配なので教えて頂けませんか?」

「そっか 友達だったのね 教えてあげるから 早く友達を追いかけて行ってあげて 一人で残されたら寂しいでしょ?」

「ええ そうですね」



コゼットはあの日の記憶を語りだした 寒い寒い夜の話 かわいそうなウサギの話を



あのね あたしぬいぐるみをたくさん持っているの ぬいぐるみは一人で置いておくとかわいそうだから 寂しくないように部屋に集めているの

あたしは家から出られないから 時々こうしてこっそり出るの でもこの前 雪がたくさん降った日 灯台の前で捨てられたぬいぐるみに出会ったの

とてもかわいそうな子だった 雪でぐっしょり濡れて まるで泣いているみたいだった だからあたし抱きしめてあげたの かわいそうなウサギの子だった

でも魔法使いのおじさんが来て その子をみて持って行っちゃったの お母様はその子が連れて行かれるのに何も言わなかった

二度とその子については話すなとだけ言って・・・ かわいそうに あの子はまた捨てられるのね・・・ でもね

その後魔法使いのおじさんが その晩そのウサギのぬいぐるみと一緒に 白い森に行くのを見たの それであたし こっそり後をつけたの

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でも とても寒かった 暗くてあまり見えなくて 白い森に入ってからはすごく怖かった・・・

でも森にはたくさんソリが捨てられているの 使わなくなったソリにはたっぷり魔法がかけられて 森において置くのだって

そうすればモンスターたちがエルティボの町の中に入ってこれないって

しばらく歩いていくと モンスターがたくさんいたわ でも壊れたソリが一台あって そのおかげで モンスターは近付いてこなかった

魔法使いのおじさんはすごく早足で あたしはついていくのに必死だった 寒くて手も凍えそうだった

その後は白い森の奥のほうに進んで行ったわ そこにはまたソリが捨ててあって 近くには凍った大きな川があった気がするの

ソリの後ろには垣根があって 木が2本あった 片方は雪で真っ白に見えて もう片方は真っ黒に見えたわ

その後は静かな場所に出て 川に沿って歩いた気がする・・・ でもとても暗かった

川辺には雪だるまが3つあったの まるで家族のようだったけど 雪だるまは悲しそうに見えた

お父さんはいなくて お母さん雪だるまが二人の子供たちと泣いているようだった あたしにはそんな風に見えた

そこで魔法使いのおじさんを見失ってしまったの いくら探しても見つけられなかったわ

すごく怖くて泣いてたわ ずっと泣いていて そうしたら急に変なうさぎが現れたの

かわいくて 優しい子たちだった そのうさぎはあたしを案内しているようだった

あたしは泣いたままだったけど 優しいうさぎ達はあたしを家まで送ってくれたの 本当にいいうさぎ達だった

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「そうですか 大変な思いをしましたね」

「うん でもあたしがこの話をいくら一生懸命しても カールお兄様は夢だって言うの でたらめだってバカにして聞いてくれなかった しくしく」

「先ほどもそのようなお願いをしたのですか?」

「うん あなたの友達に行ってくれるよう頼んだの もしウサギのぬいぐるみを見つけたら あたしの所まで連れて来てって 捨てられるのは悲しい事だから ・・そう頼んだわ」

「そうですか コゼット様は優しいですね ・・・では私も友達を探してきます もちろんコゼット様のぬいぐるみも一緒に」

「ありがとう 気を付けてね」


(エルベリーク様は 白い森に行かれたようだ コゼット様の話からすると 普通に森を歩いたのではなさそうだな)









-白い森-



「エルベリーク様は何かご存知だったようだ 何の理由もなく コゼット様のぬいぐるみを持っていくわけがないから・・・ エルベリーク様は黒い預言者に身を投じるまで 一世を風靡した大魔法使いだった 黒い預言者の残党から入手した情報によると エルベリーク様は特別な物を持って消えたらしいが・・・」

「それは 間違いなく何らかの特別な意味がある物だろう ならば今回のそのぬいぐるみも どんな形であれ特別な物だから隠そうとしたのだろう」

(・・・・ しかし一体ここはどこだ・・・ 地図のような物は丸ごと覚えられるが どうしても自ら歩くと いつも迷ってしまうんだ・・・)

「コゼット様がおっしゃった位置は・・・ 壊れた垣根の後ろにソリが捨てられてあったと言う・・・ こっちだろうか・・・・ふぅむ」

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「これの事だろうか 確かにコゼット様のおっしゃったとおりの光景だな・・・・ ということはこの奥か? しかし迷っているうちに時間を浪費してしまいそうだ 彼らに追いつけるだろうか・・・」


「目の前に川があって・・・ ソリがこの位置に・・・ 木が2本あって こちらだろうか・・・?」


「・・・話の通りか・・・ と言う事は道は正しいと言う事になる・・・ しかしコゼット様の記憶力はすごいな」


「次は・・ モンスターのいない場所 ・・・万年雪の山荘の方向と考えるのが正しいな・・・」


「雪だるまが3つ すぐに見つかりそうだ 迷子にならなければ の話だが・・・ ふぅ」


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「・・・・ お父さんはいなくて・・・ 子供と一緒にいるようだと言った これの事だな・・・ とにかく目的地は近い この奥が目的地と言う事になるはずだが・・」







-フォンティナ家-

天井まで本で積み上げられた大きな書斎には フォンティナ公爵とヒンデミット子爵の二人が会話していた

明かりは薄いランプの光だけ 相手の表情を読み取る事が出来ない程に部屋は暗かった

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「エルベリーク・ジュスピアン・・・ 行方不明と聞いていたが まさかエルティボにいらっしゃったとは・・ とにかく残念な事になりましたな ・・ヒンデミット卿」

「・・・逃してしまった以上 信用してもらえなくても仕方ありません」

「いやいや レンムの長年の悪縁を絶って友譚を誓おうとする気持ちは理解している エルベリークがいようといまいが それは外交において重要な問題ではない ・・最近友邦であるオルランヌとはどうかね? 相変わらずあちらは慌しいようだが」

「レンムは現在戦争中です 国境の些細な争いと片付けてしまうには あまりにも有名な話なのではっきり申し上げます」

「ほう 女傑のジナパ嬢が出征なさって エルティボの美しい王城には何年も帰ってきてない 近いうちに平定されるのではないか?聞いた所 野蛮人達にも恐れられる程の知力と武芸を兼ね備えた方だそうじゃないか」

「ジナパ姫様は名将ですが・・・・しかしエルベでもたったひとりの野蛮人に苦戦したのです もう将帥の資質の問題ではありません 辺境の騒乱は既に長期化の局面に入ったのです このままだと決着がつくまで どれくらい歳月が必要となるか・・ こんな時にオルランヌの問題まで 私が関与することは不可能です」

「オルランヌ・・・いい所だった 美しい詩と音楽 すぐれた魔法力を誇っていた国だが 大公の後継者の地位が不安定なのが心配だな」

「大公爵だったクラレット卿は 失踪された公女を死亡したものと既成事実化しようとしているようですが・・ 現オルランヌ大公は およそ十年間アノマラドの公式書簡に何の返事もしていないと聞いています」

「クラレット卿か・・・」

「しかしアノマラドとしては どう考えてもクラレット卿が大公になるのは願わないでしょう? 彼は名分のない継承に正当化を与える為に オルランヌの王国復権を主張しているようですから・・・」

「ハッハッハ これはこれはヒンデミット卿 危険なお言葉ですな 誰が大公の位を受けようと 他の誰かが後継者になろうとも よその国が関与することではありません アノマラドが外国の政治に直接介入する事はありえません」

「そうですね・・・」

「それより エルベリーク・ジュスピアンに関する話に戻るが・・ 子爵のご夫人はオルランヌ出身と聞いているが ご夫人は子爵がオルランヌについて傍観的なことを知ったら寂しく思うのではないか?」

「ああ・・どうでしょうね・・ 私的な問題に捕われて 大儀を誤るほど愚かではありません それは皆同じでしょう・・・ おっともうこんな時間ですか 刻が経つのは早いですね」

「そうですな・・・ それでは次の約束は 場所を移して・・・・・」



-白い森-


「ここ・・・みたいだな  ・・・・ん? うさぎ・・・・ こっちに近付いてくる・・・ あ・・・行ってしまった」

「ウサギが出迎えか 本当に物語の中にいるようだ・・・・ さて進んでみるか」



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「あれだろうか・・・レイ 見えるか?」

「うん 見える」


二人に追いついたランジエが後ろから話しかけた


「あれがコゼットさんのウサギのぬいぐるみのようですね」

「!」

「どうして今になって現れる?」

「おや ・・・私の助けが必要でしたか? むやみに困難な事を押し付けておいて知らん振りは出来ませんよ それにしてもあんな物に会うとは思いませんでした」

「とにかく 二人よりは3人がいい 行こう」

「レイ 行くって何処へ?」

「あのウサギのぬいぐるみ 連れて帰らないと」

「言葉が通じる相手ではなさそうだけど・・・」

「残念ですが あのぬいぐるみは もうモンスターと判断しなければならないようです」

(エルベリーク様・・ どんな理由であれぬいぐるみが変貌する事を予測してらっしゃったのだろうか・・・)

「じゃあ ぬいぐるみなら連れて帰る モンスターなら倒せばいい」

「流石です 何もせず躊躇うよりは 遥かに積極的で肯定的な姿勢ですね」

「・・・・」




-白い森 奥地-

ウサギの形をした大きなぬいぐるみだった 大きな熊ぐらいはあるだろう大きさだ

手には針を持ち 目はボタンで出来ていた 

しかし針は錆 あちこちは綻び縫い目も痛々しく感じた


大きなウサギに近付くと 幼い子供のような声が聞こえてきた

『ここは寒い・・・・ 誰もいなくて・・・ 寂しい・・・・ 孤独で・・・・』


『孤独・・・捨てられた・・・ 醜いといって君達は投げ捨てた・・・ 遠い所に・・・幽閉・・・・』


『幽閉・・・ 幽閉・・・ 幽・・・・』


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「・・・・モンスターのようだが 力は果てているようだな」

「ぬいぐるみじゃない」

「ああ 私達には何も出来ない」

「コゼットさんには申し訳ないですが 連れて帰ることはできませんね」


『こんなに・・・ 孤独で・・・・』


最後にそう発した大きなウサギのぬいぐるみは 静かに横に崩れて行き 雪の様に散っていった

最後に残ったのは 光る一枚の破れた紙切れだった


「・・・消えた?」

「これ」

「ん・・・これは・・!」

「これ この前見た・・・」

「知っている物ですか? 他の場所で同じ物を見たことがあるようですね」

「・・知っているくせに知らないフリをしているのか? それとも本当に知らないのか?」

「ここへ行けと言ったのは私です 知らないフリをしてると誤解するのは不思議な事ではありません しかし残念ながら 私もこんな紙切れの存在までは知りませんでした ・・・ジンネマン様の疑惑に対する釈明になりましたか?」

「ふたり ケンカしてる?」

「いや それより・・・ あのぬいぐるみ どうしてあんなふうに変異してしまったのだろう? もしかしたら昔のように誕生せ・・・・・ いや とにかくなんだったのだろう」

「分からない でも魔法使いのおじさんという人は ああなることを知っていたみたい 会って聞かなきゃ」

「でも誰かもわからないし どこへ行けばいいかも分からないんじゃないか」

「あなた 誰かしっているのでしょう? コゼットのところへ行けと言ったのもあなただった」

「はい コゼットさんのぬいぐるみを持ってきたのは エルベリーク・ジュスピアンという方です」

「!?・・・・エルベリーク・ジュスピアン?」

「その人 どこに行ったの?」

「それは私にもわかりかねませんね 私は預言者ではありませんから ・・ひとまずはヒンデミット家に戻って コゼットさんに報告した方がいいでしょう」

「わかった」

「・・・お前は何を考えているんだ? レイになにかさせるつもりか?」

「? ふたり またケンカ?」

「いや・・・ケンカじゃないって・・・」




-ヒンデミット家-


「・・・・ ・・・・ そっか 結局あの子は戻ってこないのね・・・」

「ごめん ウサギのぬいぐるみを取り戻したかったが ・・・失敗した」

「そのウサギ もうぬいぐるみではなかったの」

「れ・・レイ その話は・・しないで・・」

「なぜ?」

「いや それは・・」

「コゼット様 あなたの望みを叶えてあげられなくてごめんなさい」

「・・ううん 大丈夫 本当は戻ってこないと思ってたの 魔法師のおじさんがあの子を連れて行くとき なんとなく永久にさよならなんだって思ったの でもあたしの話を信じてくれてありがとう 本当にありがとう」

「・・・・・」

「それでも 寂しいでしょう」

「寂しい あのウサギすごく好きだった もう会えないなんて寂しい でもレディーは泣かないの 辛くても耐えなくてはならないってお母様も言ってた だからあたしは泣かないの」

「大事な物と別れるのは悲しい事だよ 悲しい時は泣いても・・・ それはいいんだと思う・・・・」

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「ありがとう・・・ お兄さん達やさしい・・ 難しい事をお願いしてごめんね」

「いいよ」

「そんなことは気にしなくていいから お母さんのそばにいてあげなさい・・・ じゃあね・・」




-ヒンデミット邸宅前-


「ねえ どこへ行くつもり?」

「もしよかったら万年雪の山荘へいらっしゃいませんか? そこに住んでいる人と面識があるので 私もお世話になっています」

「うん 行こう」




-万年雪の山荘-


山荘に着いてすぐ ランジエは懐から装置を取り出した

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「略式ワープサポーター・・・? それ何?」

「テレポート装置です テレポートサービスは利用記録が残ります 王室ワープを利用する事は出来ませんからね これは独自で作った物です その場しのぎではありますが・・」

「・・・紙切れについては話すつもりはないようだな」

「・・・・ まだ誤解してらっしゃるようですね 私も平凡ではない物には興味を持っています しかしそれは何だかよくわかりません 知らない事について話せる人間はないでしょう?」

「コゼットが困ってるという事 知ってたんでしょう? どうして困ってるかも知ってた?」

「はい」

「ボリス こういうのを こき使ったというんでしょ?」

「ああ・・・だが お前の口から聞くと戸惑うな・・」

「そう?」

「もっと詳しく話が聞きたい 今回の事に関わる必要があったのかどうか そして何が目的なのかを」

「ナヤトレイ様が私に手を貸してくれると言ったのです だから喜んでお借りしました そういうふうには考えて下さらないようですね」

「メリッサは ここに私達を知っている人がいて その人が私達に会いたがってると言った それがあなた? どうしてメリッサを使ったの?」

「手を借りようと思ったからです ・・・実はお二人が来ても来なくても構わないと思っていましたが」

「結局はオマケってことか」

「不快ですか? もしかしたらと思い伝えてくれと言ったのは事実です しかしお二人が不快になるとは思いませんでした 私はお二人をあまり知りません それほど会いたかった訳でもありません とりあえずは ですが」

「今後もずっと手を借りるつもりのようだが」

「承諾して下さるなら」

「一体レイに何をさせようとしている? そしてこれからどこに行くつもりだ? 俺達に会う目的は無いと言ったが メリッサさんの話では・・・」

「ああ ちょっと待ってください 疑いを晴らしてからゆっくりとお話をしたいところですが まずはこの装置を修理しなければなりません 宜しければ手を貸して頂けませんか? どうやら内側が凍りついてしまったようです」

「どうすればいいの?」

「カイロを10個ほど集めて下さいませんか? 私は2階で作業をしているので 集め終わりましたら1階のハルトヴィン様に報告して下さい」

「依頼をした本人は 直接報告を受けるつもりはないみたいだな」

「アハハ 直接報告したいですか?」

「・・・? ふたり 知り合い?」

「いや・・・」
「いいえ」

「変なの・・・ じゃあ行ってくる」






-万年雪の山荘前-


「レイ 彼についていくつもりか?」

「・・・うん」

「どうして? 分からないか? レイ 彼は今お前を そして俺を試しているんだ それなのについていこうと言うんだ? お前は彼のような政治的思想を持っているわけではないし 他の目的あって志を共にするという事でもない」

「他の方法が分からない ・・・私は今 私がどこに向かっているのか 分からない ずっと歩いてるけど どの方向に進んでいるのかわからない・・・だから怖かった 彼が 私にやるべき事を教えてくれると言った」

「・・・・・」

「ボリス もしあなたが私を止めたければ 十分に価値のありそうな他のやるべきことを与えてくれればいい そうしたら私はその道に行くから」

「俺は・・・俺はそんなことは出来ない 他の誰かにやるべきことを与えるなんて・・レイ 俺にはそんな資格がない 誰にもそんな資格はないんだ」

「そう?・・・あなたは私に答える言葉がないのね じゃああなたは私を止める事は出来ない」

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-万年雪の山荘 2階-

(・・・憎まれてしまったな とにかくこれ以上時間を遅らせるわけにはいかない 装置はここにある材料で直せそうだが レオポルド様が動く前にエルティボを去らなければならない)







-ケルティカ 地下アジト-

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「それでどうなった? 王立アカデミーの方で入手してくれる事になっていた物 今度も成功か?」

「一応成功 急に王室監察が強化されるという話でね 搬出リスト 使用状況まで全部記録して提出しなくちゃいけないって 大騒ぎになってたから なぜ急にアカデミーの資材などに気を使ったのかわからないけど・・・」

「それで量が少ないのか? 困るな」

「知ったこっちゃ無いよ 私は! 必要なら自分でやりなって言ってやってよ 自分の研究も後回しにしてスパイみたいなことしてあげてるのに 誰かさんはのんびりエルティボ観光?」

「あの人が戻ってきたら 私からも報告したいことがたくさんある 怒るなら私の後にしてもらおう」

「報告することがあったの? いつも静かだったのに」

「うむ ちょっと大きな情報をひとつ提供して意気揚々としているよ あちらは あの人に会わせろってさ」

「誰か適当に変装させて会わせときなよ それより情報ってなに?」

「今回 ドメリン・カルツ自ら動いて手に入れた宝」

「誓約書?」

「オルランヌ公女が なんとカーディフの権力者と交渉した際に作成した物だそうだ 事実ならいろんな意味で恐ろしいだろ? いくつかの国が揺れるほどに・・・」

「私 その話のどこで驚いたらいいの? 失踪した公女が生きていたという点? 遥か遠いカーディフまで自らお出かけになって取引したという点?」

「全部驚けばいいさ」

「彼が来たらすぐ聞かせてやって頂戴 困った顔を見物してやりたい」

「どうだろうか・・ 助言者さまが私達の話に驚いたり困ったことがあったか? 妹の話を除いて・・・」

「知らないよ あ~ むかつく! 早く戻ってこいよ~」





-万年雪の山荘 2階-


「おかえりなさいませ」

「忙しい人」

「頼みごとをして申し訳ありませんでした」

「私に道を教えてくれると言ったでしょう? どこに行くつもり?」

「ケルティカに行くつもりです 今は」

「すぐに出発する?」

「ええ この材料があれば すぐに直ると思いますので」

「す・・すぐ!? レイ!」

「すぐで構わない」

「レイ そんなに急ぐ必要はないじゃないか 自暴自棄みたいに どうしてそんな衝動的に決めるのか分からない もうちょっと余裕を持って・・・そうだ・・シベリンさんを探してみるとか!」

「・・・会った」

「うん?」

「シベリン 会った このエルティボで」

「え? シベリンさんと会ったのか?」

「うん 白い森で話した 捜しに行って話した」

「で でも・・ そんな話は聞いてなかったから・・ 俺は当然・・ それで ルシアンは・・!? 他の人たちは?・・・レイ!」

「・・・・ 出発 する?」

「・・・ええ 作業はすぐ終わりますので 出発できると思います 夜に灯台へ来ていただいても宜しいですか?」

「夜?」

「人目に付かない方がいいので また夜にお目にかかります」

「さようなら」


「おお もう帰るときが来たのか? 私の友によろしく伝えてくれ」

「ハルトヴィン様 色々とご迷惑をおかけしました お世話になった立場でこんな事をいうのは無礼ですが ハルトヴィン様の安全の為でもあるので どうかひとつお願い致します」

「うん 何かな?」

「現在エルティボには ケルティカから来たよそ者たちが数名潜んでいる状態です 目的が明らかに違うので 他の事に目を向けるとは思いませんが もし私について聞かれたら 少し複雑な状況になるでしょう」

「ほう 私の大事な友も秘密裏に動かなければと言ってたな 友が危険なら隠してやるのが道理だとも ハッハッハッ 心配するな」

「ありがとうございます それではこれでお別れです」

「おお 寂しいが仕方ないな 今度時間が出来たら 私の友にもまた会いに来るよう伝えてくれ」

「はい お会いしたら必ず伝えます」






-エルティボ港 灯台-

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「・・・さて そろそろ時間かな 町の中に入るのは危険だろう ランズミにお土産くらい買っていきたかったのに・・・」

「こんばんは」

「時間通りですね 時間を守る方は信用できます」

「・・・・」

「ジンネマン様は気が向かないようですが・・・」

「ついてくるのだから関係ない もう出発する? ここで?」

「はい この略式ワープサポーターを利用して すぐにケルティカまでいくつもりです お二人のおかげで修理も無事終わりましたしね さぁナヤトレイ様 ジンネマン様こちらへ」

「不公平・・・」

「はい?」

「あなたは私もボリスも知っている でも私は知らない どう呼べばいいのか 不公平・・・」

「そうでした 申し上げるのが遅くなりました どんな名前で自己紹介すればよいでしょうか? 私はみなさんを信頼するという意味で 本名を申し上げた方がいいですよね」


装置の発する光の中で ランジエの声だけが響いた

「私の名は ランジエ・ローゼンクランツと言います」







-フォンティナ家-

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「フォンティナ卿 エタとはイウェリド・エタのことですか?」

「イウェリドが世を去った後 彼の長男カフリンがエタ石版とイウェリドがエルトに翻訳した本を 当時の国王に献上したという話はよくご存知かと思います しかし暗示的な文章だけで成り上がっているうえ 歳月が流れるにつれ大部分が流出してしまい 捜し回る人も多いといいます」

「分かりきった話を聞かせる為に ここまで私を呼びつけたのですか? もう私はお前の姉アンリチェ・ダ・フォンティナではありません 私はアノマラドの王妃だという事を忘れているのですか」

「私が王妃殿下に申し上げようとしているのは まずエタが実在する知識としてアノマラドの役に立つであろうという前提の上に話をしています 昔からエタの6番目の文章は消えたのではなく 初めから存在していないという噂もありますがイウェリドは6番目のエタ石版を解釈しなかったという仮説もあります」

「聞かれた事だけに答えればよい」

「エタというとイウェリド・エタを思い浮かべますが あくまでそれは翻訳書に過ぎないということを忘れてはいけません シエンで成り立ち読む事が出来ないとしても とにかくエタはエタなのです」

「何が言いたいのです?」

「これまで多くの人がイウェリド・エタの第六巻を求めて彷徨ってきましたが・・・ もしその仮説が真実ならばどうなさいますか? 本当にイウェリド・ド・ローランドは6番目の石版を解釈した事が無い としたら・・」

「もし フォンティナ卿の言う通り6番目のイウェリド・エタがなければ 探索を中断しなくてはなりません 莫大な資金を無駄に使う事になりますから」

「代わりに」

「代わりに?」

「その6番目のエタの原本の一部が どこかに隠されているという噂が流れております」

「それは興味深いですね しかし翻訳の出来ない石版です 探すといっても簡単に手に入るはずはないはず 手に入れても完全に理解するのは不可能でしょう」

「それを書いた人がいたのですから 読める人がいないとは言えないでしょう? シエン伝承者は脈が途絶えたといいますが それも誰かが確認した事はありますか? 実はどこかで生きているかもしれません」

「卿が私財をはたいて支援しているという あの研究の方はどうですか? 良い知らせでもありますか?」

「ランケン・メルカルトの研究では モンスターの出現現象と ガナポリーの流出した魔法に関して分かれば それ以上いいことは無いでしょう しかしそればかりを待つわけにもいきません もしエタの原本が他の誰かの手に渡ったら・・・」

「・・・・」

「大公爵位をめぐっているオルランヌ 野蛮人たちと紛争が絶えないレンム あるいは派閥に分かれてもおかしくないトラバチェスはどうでしょう そんな問題の耐えない彼らの手に渡ったら・・・・」

「それが 本当にガナポリーの驚異的な力と どんな形であれ関連があるならば・・・ そうならばその力を手に入れない限り 敵を四方に置いている私達は安心出来ないでしょう・・・」

「なんとしてもその力の実体を確認しなければなりません 他の誰でもなく 私達の目で・・・・必ず・・・・」











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幻とされるイウェリド・エタの第六巻 手に入れた者は大いなる力を得られると信じられる

金目当ての旅行者 力を求める冒険家 手中に得ようと動く国家 探究心に揺れる魔法師 

エタに関する物語は 伝承として噂話として語り継がれ 単なる伝説となり 存在しない虚構となり 

誰も知らない物語の一遍に触れた 若き革命家の進むべき道は何処に

エタは災いの火になるのか 打ち消す水となるのか それともこのまま沈黙を守るのか

邂逅するは 光となりて闇となりて




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ローゼンバーグで活動中
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