ランジェ日記 + !

ローゼンバーグで活動するランジエの日記  公式イラスト400枚以上収蔵 プチ情報や検証 ランジエチャプターを小説風に公開など 様々なコンテンツにも取り組んでおります

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EP2 チャプター4 メルヘン

chapter 4 メルヘン




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「まったく・・・・明白に ムカツク~!」

「落ち着いてくださいメイリオナ様」

「助言者君はお人よしだよ なんなのあの高圧的な態度は! まさかこんな頼み・・・いや命令に率直に従うつもりはないよね」

「些細な事に反発しても 損をするだけではありませんか?」

「何か あった?」

「別に・・・お二人がとても人気なので」

「・・・?」

「あ・・・二人とも 今からアーロンさんの所へ行ってきてくれる? 王城の前で警備しているはずだから 預けておいた物を受け取ってきて欲しいの」

「依頼? 分かった」

「・・・・では」


ボリスとレイは扉を開き外へ出た



「ドクターヨハネスっていつもこんなに高圧的なの? なにあのしゃべり方! 貴族のつもりか!・・・ってまぁ貴族だけど」

「前もって何の相談も無く引き入れたわけですから 少々の失礼な言葉は仕方ありません それに先生は元々ああいう方ですから・・・」

「要はこういうことでしょ?助言者君 今すぐその二人に会わせろ・・・と それだけ書けばいいのにダラダラとこんな文章書いてさ・・・あ~明白に本当にムカツク~! まだネニャフルの教授だと勘違いしてるのかね?・・・ どうする?あの二人には私が言っておく?」

「そうして下さい 私は他の用事があるので」

「・・・こんなに急に紹介してくれなんておかしいよ やっぱりあの二人から何か探りだそうとしてるんじゃないの?ドクターヨハネスはさ」

「そうですね・・・ しかし流出して困るような情報は与えていませんし 与えていたとしてもあの二人は信用出来ますから大丈夫ですよ メイリオナ様 私も苦戦している程なのですから」 

「へぇ~ そう? ものすご~~く淡々と接しているように見えるけどね 助言者君は表と裏が完全に違う人なんだね すごい」

「それ・・・褒め言葉じゃありませんよ」

「あ そうだ さっき話そうとして事なんだけど ディルウィンに会いに行って面白い話を聞いたんだ ネリシアだっけ? ・・・ルシンダおばさんの姪が今ケルティカにいるでしょ?」

「はい フォンティナ家のパーティーでお会いしました」

「あの子がさ~呪いだとか何とかって面白い話を知ってるんだって 大げさに言ってるのかもしれないけど 確認してみる価値はあるかもよ まぁただのウワサかもしれないけどね」

「役に立つウワサは好きですが ウワサなら何でも好きという訳ではありませんよ・・・ とにかく覚えておきます」

「あ さっきくれた手紙は何? ギルの奴に渡せばいいの?」

「はい 調べて欲しい事があって」

「分かった 一度はここに寄るだろうからその時に渡すよ」

「では 私は用事を済ませて来ますね」


(エシェルト伯爵の記録について調べて貰いたいのだが・・・ちょっと厄介だが探っておいたほうがいいだろう どんな情報であれ・・・)








-ケルティカ 広場-



「フルヴィオ様 こんにちは」

「こんにちはユスティン君 ・・・そうそう 前回お貸しした服はそのまま置いておくのでしばらくは使ってもらっていいですよ 近衛隊に欠員が生じたそうで 残っているらしいんです」

「欠員ですか・・・丁度近いうち・・・明け方にでも使う事がありそうなんです 今後そちらが必要になったら仰って下さい」

「多分ないでしょう 今なら私も手伝って上げる事が出来ますから ユスティン君は賢い人だから 私の彼女が気付くほど目立つ行動はしないと信じています 彼女に心配をかけるような事になってしまったら お手伝いする事は出来ませんから」

「はい」

「カラスはプライドが高いけれど 他人の気持ちにもすごく気を使うんですよ そのせいか 私が誰かに会ったりすると その人がどんな人なのか知りたくてたまらないみたいでして・・・彼女はそんな可愛い所がありまして」

「あ・・・はい・・・」

「ああ~ ・・・カラスにイチゴジュースを買っていく途中だったのでした 私が戻らなくてまた心配しているでしょうね それではこれで・・・お仕事がうまくいくといいですね」 

「ありがとうございます」

(さて セラフィス様のところへ行って薬を貰うとするか・・・)









-ケルティカ 病院-





「ああ こんにちはユスティン君 患者さんの具合はどうですか?」

「最近は大分よくなったみたいです 窓辺に座って過ごす時間も増えましたし 食事も前より食べていますから」

「それはヒーラー長として嬉しい話ですね 早く完治してきつい薬を使わずに済むようになってほしいものです」

「はい セラフィス様には本当に感謝しています」

「今日は・・・栄養剤を貰いにいらしたんですか?」

「はい すぐに頂けますか?」

「ええ 材料はまだ残っていましたので ・・・ではこれをお使い下さい」

「ありがとうございます」

「そういえば 以前許可証を貰いに行った件は上手く行ったようですね 私も多方面から話を聞いていますよ お尋ね者の真紅の死神がこんな所にいるなんて思いませんでしたよ」

「ご存知なんですか? ・・・意外ですね」

「その別名を知ったのは最近ですが 本名は以前から知っていましたよ 私の妹が砂漠に行っている事はこの前お話しましたよね? それでカーディフ付近の噂は結構知っているんです」

「なるほど それでご存知なのですね」

「砂漠の近くに住んでいた頃には そんな洒落た別名ではなかったようですが・・・とにかくナルビク支部の方で有名になったようですね お捜しでしたら アクシピターのを通じて王室にもある程度記録がされているのではないでしょうか?」

「ああ そうですね 王室か・・・一市民である私には少し難しいでしょうね」

「妹から何か役に立ちそうな情報が入ったらお知らせしますよ でも あまり期待はしないで下さいね」

「はい ありがとうございます それでは・・・」









-ケルティカ王城内 広間-


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広間では侍女たちが口々と語っていた

「聞きました皆さん やっぱりウワサの通りフォンティナ家のお宅はすごく立派だったそうですわ お嬢さん達が大騒ぎですよ はぁ~私も行って見たいわ・・・」

「・・・」

「貴族の家のパーティーには素敵な方々も沢山いらっしゃるんですって? 遠くから来た貴族の方々の護衛騎士はみんなピカピカ光った服を着て 高い宝石で飾った剣を持っていたそうですよ まるで小説に出てくる騎士のようだわ~ ステキ!」

「王城にいるのにおかしな事をおっしゃいますね ロリアさん」

「もちろん近衛隊の方々もステキだけど・・・本物の騎士とはまた違うでしょう? 身分の高い騎士の方々はあたし達が上目遣いをしてもどうせ目もくれないんだから・・・でもそういうパーティーではステキなロマンスが起こるような気がするわ~ ニネットさんもそう思いません?」

「うーん・・・」

「そういえば イヴリンお嬢さまは招待されて行って来られたそうですね? どうだったんですか~??」

「あ・・・あの・・・そうですね ロリアさん」

「どうしたんですイヴリンさん? ギルデンスターン様はウワサ通り本当に素敵な方だと私に仰ったじゃないですか~!」

「ネ・・ネリシアさん・・あの・・それは・・・」

「リルボン家のギルデンスターン様がいらっしゃったんですか~! わぁ~っ あたしもお名前は聞いたことがあります!滅多にお姿を現さない方だとか」

「その・・素敵な方でしたが・・・ですが・・その」

「貴族のお嬢さま達は小説に出てくるみたいにステキな恋が出来るんでしょうね~ はぁ・・・お嬢さま方がとても羨ましいです 私たちはずっと王城にいるので あまり面白い事がないんですよ ふぅ・・退屈だわ そうでしょ?ニネットさん」

「・・・うん・・・」

「あ・・・もうこんな時間だわ お喋りしていたら仕事があるのをすっかり忘れていましたわ お嬢さま また面白い話があったら教えて下さいね~」




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「・・・本当は 本当は・・・本の中に出てくるような そんなロマンチックな恋をしてみたかったわ・・・ キラキラと美しい王子様に会ってみたい 王子様と遠く危険な場所へ旅立って 素敵な恋が出来たら・・・」

「もし・・・もし愛だけで全てが解決できたら どんなにステキかしら?・・・どんな苦しみも悲しみも 愛の力だけで打ち勝つ事ができたら・・・」

「本当にそうなら・・・私は人魚姫のように私の全てを捧げるわ 喜んで声も 王冠も 全部捨てて人間の足を手に入れるわ」











-ランジエ家-



「・・・よく眠っているな」

ギルデンスターンがランズミを眺めていると ランジエが戻ってきた

「ん? 主人のいない間に出入りしていいと思っているんですか? 貴族の子息ともあろうお方が 若い淑女が寝起きする部屋に許可も無く訪問するのは無礼というものでしょう」

「ああ ああ・・・ 悪かったな ・・・ドクターヨハネスと会いたくなかっただけだ」

「これから彼に会いに行かなければならない私はどうなるんですか 貴族のご子息は自由で良いですね」

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「はあ 悪かったよ それより今から王城に行くつもりだ シュワルター支部長と少し会うことが出来そうなんだ エシェルト伯爵の件 まだ気になるなら調べようと思うんだが・・・必要なかったか?」

「いえ お願いします 王城に行くなら他にも頼みたい事があるんですが・・・可能ですか?」

「不可能だとしても 君が必要だと言うなら調べなきゃならないだろ その為に私がいるんだからな」

「・・・最近はあまり良い状況ではないようです くれぐれも危険な事にならないように気を付けてください 調べてほしいのはシベリン・ウーという名前の傭兵に関する情報です シャドウ&アッシュのお尋ね者らしいんですが 追われる事になった経緯とか・・・とにかく怪しげな事が多いので・・・」

「シベリン・ウー・・・?初めて聞く名前だな まあ 私は傭兵に詳しくはないから・・・分かった それじゃあ 遅くなる前に行って来よう」

「お願いします 私はカフェの地下へ戻るつもりですので」

「夜に会う事にしたんだろ?先生も趣味が悪いな」









-ケルティカ 地下アジト-



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「嬉しいねぇ 我々の少年トリビューンがルールを破ってまで連れてきた方々と聞いて 一刻も早く顔を見たかったのだよ」

「・・・・?」

「トリビューン? この集まりの幹部の事をそう呼んでいるのか・・・?」

「ふむ この二人かね? 特に変わった所も無い普通の子供のようだが・・・ ・・・はて 紹介はして下さらないのかね?」

「自分の紹介ぐらい自分ですればいいのに そんな事もできな・・・」

「ええ すみません こちら顧問を担当して下さっているドクターヨハネスです」

「なんだよ 助言者君ったら・・・」

「まったく メイリオナ嬢はもう少し権威を尊重する事を勉強したほうがよさそうだ とにかく・・・お二人ともお会いできて嬉しいよ 私の名はヨハネスだ 姓は省略する事にしておこう 政治的な秘密クラブの一員らしくね ハハハッ」

「こちらはボリス様とレイ様です」

「はじめまして」

「こんにちは」

「ふむ お二人はどの支部の所属だ? それともどこかで学生運動でも?」

「支部?ギルドのこと?」

「いや そういったものではない ハッハッ・・・話を逸らすのがうまいね 言いたくない事でもおありかな?」

「・・・何の話?」

「我々の助言者さまと学友だったとか 誰の紹介で知り合ったとか・・・そういう事が純粋に気になってね まさか貴族?・・・ではないか」

「あの ドクターヨハネス 一体何が知りたいんです? そんな理屈・・・貴族のギルとそうでもない助言者君が仲良くしているのはおかしいとでも言いたいんですか? 他に意図があると信じたいんですか? 裏があるみたいに言うのは止めてください!」

「メイリオナ様 落ち着いてください」

「過激な表現は控えてくれ メイリオナ嬢 あくまでも純粋な興味だよ 互いの所属が分かるようになれば もうちょっと相互理解が深まるものではないか?」

「お二人は私と面識がありません 先生が心配されているような事はないと思います」

「やれやれ 聡明なる助言者さまの他ならぬ助言だ 素直に受け入れるしかないのでしょうな? 純粋な友情と言うのなら そうだと信じて差し上げるほかありますまい」

「・・・変な人」

(ふぅ つまりはどの派閥なのか知りたいのだろうか 本当に困った どうして理解して下さらないのだろうか? 私は組織の長とか歴史に名を残すとか そういう事にはあまり興味がないのに・・・)

「まぁいいだろう 前途有望な若者達が団結してくれる事ほど頼もしい事は無い よしとしよう」

「ご理解いただき光栄です」

「それでは私は忙しいので 先に失礼するよ また会おう」

「・・・ボリス あの人変」

「そうだな・・・」

「はぁぁ 無駄にキレたら眠くなっちゃったよ 整理しようとしていた資料が山ほどあるのに・・・仕方ない 掃除は明日にするか 私は休もうかな」

「そういえば ボリス様 レイ様 夜も更けましたが 宿は決まりましたか?」

「ううん まだ」

「適当な宿が無ければ私の家にいらっしゃたらいかがですか 妹がいますが 部屋ひとつぐらいは空けれますから ミユロゼ衣装室を通り過ぎた奥の建物ですから よければお越しください」

「うん」

(では私もそろそろ仕事は終りにして ランズミのところに帰ろう)










-???-


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「公女が動く前に こちらが先に動くべきでしょう いっその事 うるさく出来ないようにしてやるのが一番です 死人に口なし・・・ですから」

「カミルよ その任務に失敗して帰ってきたのに何を言っているのです 今さら何処にいるかも分からない公女をどう捜して殺せと言うのでしょうなぁ フン」

「グレッグ様 考えて見てください 公女と言っても その地位が無ければ平凡な女の子に過ぎません その発言に力を加えるのは地位のみ 違いますか?」

「何が言いたい? フレネル伯爵からこの間送られてきた書信は見たが 今さらシャドウ&アッシュを引き入れて何を要求するつもりだ? やつらはこの前も我々の依頼に失敗したじゃないか」

「もちろん大失敗しました 彼らも地位の前には弱いのですから 所属がないから 大きな権力に弱いのです だから彼らにも借りを返す機会を与えてやってもいいんじゃないですか?フフフ」

「うん・・?」

「公女として物が言えなければ問題は解決します 大公弟殿下 先手を打ちおおやけの席で公女を殺すのです どうせ公女の顔を知るものは極少数です 殺してすぐ埋葬すれば公女の死を既定の事実に出来ます」

「ほう・・・誰も疑わないような公式的な席で 私達は偶然に公女を発見し 悲しくもその死を目撃する と言う事か?」

「し・・・しかし 公式的な場に公女が登場するなど・・可能でしょうか? 人が多ければ多いほど公女の顔を覚えている者もいるかと・・・」

「オルランヌ国内でなければ可能です だからこそシャドウ&アッシュの手を借りるのです まだお分かりになりませんか?」

「どういうことだ?」

「彼女はある大会に出場する 現場で私は驚く 彼女との再会を喜びを享受する前に悲しくも殺害される 適当な舞台が思い浮かびませんか?」

「・・・シルバースカルか・・・」

「なるほどな シャドウ&アッシュは濡れ衣を着せられる傭兵を用意してくれるのか? うむ もっともな話だ」








-ランジエ家-



「ランズミ 覚えているか? 昔会った事がある人なんだけど お前も知っているはずだ」

「知ってる人?・・・誰?」

「もうすぐここにやってくるんだ・・・」

「ワン!」

「・・・お邪魔します」

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「お二人とも いらっしゃいませ 今日は遅いので仕事の話しは明日にしましょう それでも宜しいですか? レイ様」

「ボリス こういうの ツケ って言う?」

「うーん ・・・ツケというより後払いじゃないかな・・・」

「お兄ちゃん この人達が・・お客さん?」

「うん お客さん ボリス様とレイ様だよ」

「こんにちは」

「あ・・・こんにちは どこかで聞いた事のある名前・・・? でも・・よく分からない・・」

「では お二人はそちらの階段から下りた所に部屋があります そちらを好きに使ってください」

「あ そこはお兄ちゃんの寝室なの その奥にもう一つ部屋への扉があります だからそこの二つを使ってください」

「ふたつ? 部屋は一つでいいのに・・・」

「・・・ふたつ必要だよ レイ」

「女だから?」

「・・・うん」

「そう・・・ボリスは女に気を使うのね」

「ああ そうだよレイ ・・・それでは失礼します」


「ねぇお兄ちゃん 私は今日お兄ちゃんと一緒に寝られるの?」

「そうだよ 久しぶりだろ?」

「うん・・・嬉しいけど・・・大切なお客さんなら お客さんと一緒にいなくても大丈夫なの? 私・・・一人でも寝られるから・・・」

「いや 大丈夫だ お兄ちゃんはランズミの方がずっと大切だから・・・」













-ランズミ家 早朝-


「・・・あれ お兄ちゃん もう起きているの? まだ夜も明けてないのに・・・」

「おはようランズミ 少し用があってね」

「もう出かけちゃうの? ・・・朝までぐっすり眠らなきゃいけないって お兄ちゃん そう言ってたのに・・・」

「うん ごめんね ランズミ」

「私には謝らないで ごめんねって何度も言われると いつかお兄ちゃんが私に悪いと思うような事本当にしちゃいそうで・・・そんな気がしてくるんだもん」

「・・・ごめん カスタード ランズミを頼んだぞ」

「ワン!」

(今出発しておかないと あの二人が起きる前に仕事を終えられないかもしれないからな・・・シャドウ&アッシュの方々が集まっているのは 確か銀行付近だったな・・)








-ケルティカ銀行 裏道-

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「お待たせしました」

「いえいえ さっそくですが 例のオルランヌ公女の誓約書 噂は広まっていますが真相はまだ確認できていないようです」

「・・・部外者である私に話してもよい話題なのですか? それは」

「まぁ 今となっては広まりきった噂ですから それに情報などと言うものは 活用する能力のない者にとっては無駄話のように意味が無いものです 今更という訳でも無いでしょう?」

(まるではっきり確認してきたような言い方だな)

「誓約書の内容がどんなものでも構いません それが存在すると言う事だけでも利用価値は十分ありますから」

「・・・そうでしょうね」
(アノマラド新王朝が立ったことで オルランヌの立場はかなり微妙な物になったし・・・次期大公になる人の意思によって変数が発生するから・・・)

「前回の話に関する他の情報はありませんでしたか?」

「色々と調べている所です あまり大々的に調べて回る訳にはいかないものですから・・・役立つお話を入手しましたら またお伝えしたいと思います」

「わかりました ではまた・・・」

(特に他の情報は無いみたいだ とりあえず・・・他の話題を引き出すには もう少し状況を見たほうが良さそうだな)









-ケルティカ 地下アジト-


「なるほど・・・エシェルト伯爵の反乱容疑か ますますあやしいな」

「それを制圧したのはアクシピターに違いないはず・・・それを手伝った傭兵達が確かにいたと言う記録があるのにも関わらず その正体はまったく分かっていないんだ あったはずの記録が勝手に蒸発したかのようになくなっているんだ」

「蒸発・・・うーん・・」
(ナルビクで聞いたとおりだ なぜか関係のある情報が消えてしまったらしいから)

「まあ それ位は問題ないが 反乱容疑は確かだったようだ その内幕まで暴くのは危険が多すぎて手を引いたようだし ああ それから前回のお客さんたちはやっぱり目立っていたらしい 与えた任務を完璧なまでに真逆をこなしてくれたよ」

「ずいぶん皮肉な言い方ですね」

「皮肉じゃなくて事実だ ・・・これ読んでみろよ ここまで愛情のこもったラブレターが来るほどなら 目立ったどころではないだろう? 王城に行ったときに届けて欲しいと言ってな」

「・・・人気者のようですね ネリシア様ですか ・・・分かりました それはともかく 傭兵に関する事は何か聞きませんでしたか?」

「真紅の死神という傭兵の事か? 調べたがそっちも微妙なんだ」

「微妙?」

「シベリン・ウーというその傭兵 オルランヌ継承事件に関連があるらしい シャドウ&アッシュ指導部から流出した情報が王室にも報告されていたようなんだが・・・かなり古い資料なんだ その上南部アノマラドの方で活躍し 例の派手な別名で呼ばれるようになった頃の事に至ると 不自然なぐらいはっきりしていない」

「・・・」

「まるで誰かが故意に記録を消してしまって 名前だけが宙に浮かんでいる状態・・とでも言おうか? これだけ記録がないと あやしいどころか何かが裏で操っているんじゃないかと思えるほどだ」

「少なすぎる記録 まるでけされたかのように・・・ だったら今シャドウ&アッシュに追われている理由もはっきりしないんですか?」

「そうらしい 別名で呼ばれるほどならば それなりに有名な傭兵だったはずなのに不思議だな」

「・・・分かった・・ありがとう このラブレターもありがたく受け取って届けておきますよ」

「では私は失礼するよ ・・・そうそう メイリオナ嬢がディルウィン嬢のところへ行って無理を言わないように助言した方がいいぞ」

「あはは 警告でしょう?」

「・・・助言さ」










-ケルティカ王城内 広間-


「こんにちは 最近よくいらっしゃいますわね」

「うん こんにちは~侍女さん」

「じ 侍女さん・・・」

「色々勉強の役に立つんだ~ もちろん あなたも私の考えが役に立つだろうし お互いの為になる事だから 純粋な研究の領域で地位とか礼儀とかそんな話しはしないでほしいな!」

「・・はい・・」

「それじゃあ侍女さん また来るよ~!」




メイリオナが立ち去ると入れ替わりにクロエが訪れた

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「・・・・」

「あ クロエ様 気付いておりませんでした 申し訳ございません」

「え? ああ 大丈夫よ ニネットさん それより今の慌しいお嬢さんはどなた? 何となく見覚えのある顔だったけど・・・」

「あの方はメルカルト家のお嬢さまです」

「クロエ様 ランケン様の従兄弟だったと思います」

「あら そう? それではあの人がアカデミーのディルウィン様がおっしゃった あの・・・お友達という方かしら?」

「恐らくそうでしょう アカデミーには色々と助言をしにいらっしゃるそうですから」

「そうなの? わたくしは初耳よ とにかく・・・メルカルト家にはランケン様だけ残って研究を続けているかと思っていたけれど あんな可愛いお嬢さまもいらしたのね 覚えておくわ ニネットさん あの方のお名前を教えて貰えるかしら?」

「はい?もちろんですわ あの方はメイリオナ様です」

「教えてくれてありがとう 良い事を知ったわ・・・ そろそろ失礼するわね ニネットさん」

「はい さようなら クロエ様」



「・・・あの方から間違いなく ヒーラー長セラフィス様のあの香りがしたわ・・・」


「・・・? クロエ様 どうかされましたか?」

「あ・・ ええ ちょっと待って ディルウィン様にお目にかかりたくなったの」

「それではアカデミー協会室に向かいますか? かしこまりました」









-ランジエ家-



ランジエが家に戻ると そこにはいるはずのランズミの姿は無く カスタードだけが佇んでいた


「・・・・? ランズミ? ランズミ!?」

「ワン!」

「ランズミ・・・どこだランズミ! さ・・さらわれた!? いや 有り得ない そんな情報などは・・・しかし この家の位置は・・」

「ワンワン」

「ランズミ!・・・どうする どうすればいい・・・! カスタード!! 何をしていたんだお前は! お前を信じて任せていたのに・・・くっ!」

「ワンワン ワーン!」

「カスタード!聞いているのか?答えろ」




ランジエが声を荒げた時 ボリスとレイがランズミを連れて部屋に入った



「騒がしいな」

「犬とケンカ?」

「・・・・」

「ワン」

「いい子 あなたの妹を心配してるわ」

「カスタード・・・ランズミは隣の部屋にいるの・・か?・・・」

「ねぇ 依頼ない?」

「それより お二人の釈明を聞きたいですね」

「何の釈明?」

「私の妹を断り無く外へ連れて出た事について 明らかに不法です その上 無礼ですよ」

「鳥カゴの中の鳥でもないのに どうして閉じ込めておこうとするの? 本人がいいと言ったのにあなたの許しが必要?」

「しかし危険だ それに・・・」

「帰ってきたわ 無事に もともとこれはあなたがすべき事 家族だから」

「・・・・」

「外に出たいと言ったから 連れて出た 心配させたのなら申し訳ない 戻るまでは時間があると思って」

「妹をそんなに心配しながら なぜ彼女に心配させる? あの子を不安にさせたのはあなたでしょ?」

「・・・レイ」

「・・・そうですね 確かにどこへ行くかいつもちゃんと話していませんから・・・ですが それは私と妹の問題です 二度とこんな事はしないで下さい」

「分かった」

「・・・ ・・・しかし余裕が出来たら一緒に散歩ぐらいはするといい 俺やレイのように見知らぬ人と広場に出ただけでも喜んでいた あんたが一緒に行ってあげればもっと喜ぶだろう」

「・・・・」

「・・・そうしたくても ・・・出来なくなってから後悔しても遅いから・・・」

「ボリス?」

「いや なんでもない」

「とにかく依頼が出来たら来て カフェの地下に もう行く」


ボリスとレイは部屋を後にした


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「ランズミ ごめん 心配したか?」

「いつも心配してるよ あと今日のこと・・・ごめんなさい」

「いや あの人たちの言う通り 何も無かったし お前が喜んだのならいいよ」

「・・・お兄ちゃんは私が怪我したり具合が悪くならないかって心配してるんだよね? それより・・早く行って お兄ちゃん いつも行かなきゃいけない場所があるんでしょ?」

「ごめん・・・いつも心配させて 本当にごめん」

「大丈夫 待ってるから お兄ちゃんを心配しながら待ってるの 好きだから・・・」

「カスタード ランズミを頼んだぞ」


二人に続いて ランジエもアジトへと向かった


「・・・プリン お兄ちゃんは分かってないだろうけど 私よりお兄ちゃんの方がずーっと心配性なの 分かる?」

「ワン!」

「メイお姉さんは会うたび 私が心配性だって怒るけど お兄ちゃんの方がいつも私の心配ばかりしてる・・・もし」

「もし・・・お兄ちゃんに私を心配する必要がなければ 自分自身の心配をする事もちょっとは出来るのかな? お兄ちゃんが心配するのは 結局私のせいなのかな・・・?」

「クゥーン・・・」









-ケルティカ 地下アジト-







「・・・傭兵を捜している?それが依頼なのか?」

「はい ボリス様 貴族のお嬢さまから入ってきた依頼です」

「貴族のお嬢さま・・・そんな所から依頼を受けてくるとは思わなかったな あんたの組織はクエストショップみたいな仕事までしているのか?」

「ああ 少しは誤解があったようですね 私は相手の身分や背景でその人を判断するほど 偏見を持った人間ではありません」

「それで 依頼は? 王城街に行けばいい?」

「あ・・・はい そちらへ行けば迎えの人がいますので すぐに案内されると思います」

「分かった」

「ちょっと待ってください レイ様」

「なに?」

「理解し難いでしょうが 貴族達の風習は少し複雑です 初対面の相手を手ぶらで訪問するのは無礼だと考えているのです」

「なぜ? 呼んだのは向こうでしょ?」

「そうですね おかしな風習ですが こちらが合わせて上げた方がいいでしょう」

「ボリス知ってた? 貴族ってすごく変 この前も面倒な服を着たし ひどい匂いと騒音の部屋で遊んでた あれ全部貴族でしょう?」

「ああ・・・まぁひどい匂いって言うのは香水の事だろうが・・・」

「それほど仰々しい物を持っていく必要はありませんが 花束などでもあれば挨拶としては相応しいでしょう」

「花束・・・」

「貴族というのは扱いづらい存在です 見せ掛けだらけですから 招待したのはあちらですが とりあえずはご機嫌を取ってあげて下さい」

「どんな大層な依頼か知らないが これで宿泊費は返せそうだな」


二人が階段の上ろうとすると ギルデンスターンが降りてくる 


「ん なんだ三人とも揃っていたのか?」

「ううん 今から行くところ」


一言交わし 互いは進んだ


「・・・あのラブレター どうしたんだ?」

「出て行ったのを見たろ?」

「・・・本当に仲を取り持ったのか? 貴婦人のご機嫌を取る為に・・・」

「絶好のチャンスだといってラブレターを直接持ってきたのは どこの誰でしたか? 貴婦人の一時のイタズラだ しかし疑われる事も証拠を残す事も無く情報を得られる機会だ 王城の雰囲気を把握出来るだけでもよし 二人分の宿泊費としてはな」

「宿泊費?なんのことだ・・・」

「こっちの話さ」

「メイリオナ嬢によると 少し気になる話をして回ってるそうだな? そのラブレターを送った貴婦人は」

「ああ 呪いと関連した話しとか」

「しかし意外だな そんな噂を信じるなんて あまり期待するなよ 所詮貴族は何でも騒ぎ立てる生き物だからな」

「情報は偽りさえなければ価値があるものです 多少の尾ビレが付いたとしてもね」

「だが あの二人は大丈夫か? 貴婦人に優しく微笑みかける社交的なタイプには見えないのだが・・・」

「まあ 武器を取り出したりさえしなければ大丈夫でしょう 無愛想でも融通が利かないタイプを好きになる人もいますし?」

「ふむ・・・まぁ上手く行けばいいのだが・・・」

「あ 私はランズミの所に戻ります」

「大事な妹のところに手ぶらで行くのか?」

「あはは もちろん何か買っていきますよ」









-ランジエ家-


「おー! 助言者君~こんにちは! 会えて嬉しいでしょう?」

「はぁ 家の主人の許しも無く出入りする人がどうしてこんなに多いのでしょうか・・・ ランズミ カスタード 少しくらいは他人に警戒心を持ってくれ」

「ワン?」

「そんな事言わないでお兄ちゃん メイお姉さんやギルデンスターンお兄さんは他人ではないでしょう?」

「その通り!他人なんかじゃないよ そんな薄情な事を言ったら ギルが泣いちゃうよ もちろん私も泣くけど」

「・・・泣かないと思いますよ ギルデンスターンは・・・」

「そうそう 私これを持って来たんだよ~ セラフィス様の所へ行ったついでに色々と薬を貰ってきたんだ!」

「ありがとうございます」

「何よ もっと心からありがたがりなさいよね! チェッ つまらないやつ あ~それから 例の呪い?王城の侍女さんに会って聞いてきたよ」

「どのような事でした?」

「あのルシンダおばさんの姪っ子なんだけどね 呪いにかかった王子だかの話をしながら ステキじゃないかって言ってたみたい あの年になって王子だの呪いだので喜ぶなんて理解出来ないね 許婚もいるくせに 王子だなんて変な趣味だよ」

「呪いにかかった王子か・・・確かにおとぎ話にでてきそうな 話題ではありますね」

「それで~ このメイリオナ様にせっかく余裕が出来たから その話について聞いてみたんだ でもね~侍女さんが言ってたのは その本人も王子に関する情報は知らないみたい 完全に夢中になっちゃってて 世の中のどこかにいるとか いるはずだとか そんな感じらしいの」

「それは・・・本当に存在するのでしょうか・・・」

「王子に会いに行くと言いながら 王子については何も話さないなんて変じゃない? 単なる作り話かもしれないし ただ情報がないだけかもしれないし・・・どう?ちょっとは興味が沸いて来た?」

「ええ 少しは」

「役に立てたならうれしいよ 侍女さんに話を聞いた甲斐もあるし」

「ありがとうございましたメイリオナ様 私も少し調べてみますね ランズミ 薬は決まった時間に飲むんだよ」

「うん お兄ちゃん」

「あ ちょっと待って! 助言者君 そういえばもう一つ思い出した!」

「はい?」

「ランケン兄さんの事だけど ケルティカに到着したらしいよ」

「そうですか」

「それで ギルにちょっと聞いてたんだけど シベリン・ウーとかいう傭兵 その人ランケン兄さんと一緒に来たよ」

「え・・・そ・・そうですか それは意外ですね」
(・・・事が上手く行き過ぎてるみたいだけど・・大丈夫かな・・)

「捜してたんなら運がいいんじゃない? ウフフッ フォンティナ家の方で用意してくれた研究室だとか 宿とかがあるらしいから~多分そこにいるんじゃないかな?気になるなら場所を聞いておいてあげるよ!」

「ありがとうございます それじゃあお願いします」

「わかったよ じゃあまたね~」





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「おい デザート犬!」

「お姉さん デザート犬じゃなくて カスタードプリンです 他の名前で呼んだら怒っちゃいますよ」

「愛情を込めて呼ぶニックネームだと思えば犬も喜ぶよ 食べ物の名前よりはましでしょ? デザート犬でも黄色いわんこでも・・」

「だから~ 黄色いからカスタードプリンなんです うーん だって お兄ちゃんにとっては大事な意味が込められた名前かもしれないでしょう」

「・・・明白なまでにおかしな理論だね・・」

「お姉さんこそ~ 王城に行って来たことがバレないように薬を貰いに行ったんでしょう? お兄ちゃんがくるまで 王城に行った事を話したら怒られるって心配してたくせに」

「そういうところは兄妹よく似ているよ・・・チェッ」










-ケルティカ 地下アジト-



アジトに戻ると ボリスとレイが訝しげな表情でランジエを待っていた


「どうしました ボリス様」

「・・・今度はこっちが釈明を聞きたい あんな仕事が依頼だと言うのか?」

「借りを作るのはお好きではないのでしょう? でしたら依頼をこなし宿泊費を払ってください 貴族の令嬢のご機嫌を取るのがそんなに難しいとは思いませんが 無理なお願いですか?」

「あの人 何を依頼するのかよく分からない」

「どんな仕事を依頼するのかはその方の気分によりますね」

「とにかくあの依頼は出来ない 他の依頼を受ける」

「ネリシア様の依頼を受け解決するのが宿泊費です もう一度申し上げましょうか?」

「そんな事は出来ないと言っただろう」

「・・・またケンカ」

「レイ これはケンカじゃないよ 断っているんだ」

「すでに対価を支払われておいて断る権利があるとお思いですか? 他の依頼はありません ネリシア様に会いに行ってください」

「・・・後払いよくない 賢くなった」

「他人事だから好き勝手言うのか? そんな仕事は・・・」

「他人事・・・ですか でしたら私も行きましょう そうすれば不満はありませんよね 傭兵は大変です これだから後払いはよくないんですよ さぁ参りましょうか」

「ボリス また王城へ行く?」

「・・・ああ 行かなければならないようだ」









-王城街 貴族邸宅-


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「・・・それで やっぱり私の言う事を聞いた方がいいって自ら悟ったわけね? こうして戻ってくるなんて フフッ」

「・・・・・」

「その上 ミル様まで来てくれるとは思いませんでしたわ 何だか美しいバラの花束と綺麗なアクセサリーまで貰った気分ね」

「ボリス 誰が花束?」

「・・・さあ」

「それで 依頼 何?」

「・・依頼?」

「ネリシア様にお呼びいただけるとは大変光栄です しかしあそこにいらっしゃるお二人は非常に忙しい方々なんですよ」

「あ そうなんですか? うーん えーっと・・・私が呼んだのは・・あちらの方に召使いになって欲しいなって・・」

「ああ それはいいアイディアですね」

「・・・・」

「あ ミル様は貴族ですので そんなお願いはできませんが・・」

「アハハ リルボン家のご子息とはただの学友です 私は貴族ではありませんので ネリシア様が望むならば喜んで遊びに参加いたしましょう」

「まぁ! じゃあ召使になって下さるの? 恋愛ごっこというのを一度やってみたかったんです! よかった~」

「恋愛ごっこ? ボリス 何それ 知ってる?」

「・・・あまり知りたいものではないな」

「ボリス怒ってる?」

「いや・・・別に・・・」

「高貴なお嬢様の頼みを 身分の低い者が拒む事は出来ませんよ しかしネリシア様はケルティカに長くはいらっしゃらないのでしょう 臨時の召使いという事でしたら 詳しく教えて頂けませんか?」

「はい?」

「ネリシア様を喜ばせる為に 私達は何をすれば宜しいでしょうか? 詳しく仰って頂いたほうが理解しやすくなるものです」

「そ・・そうなのかしら ・・・そうですよね ミル様は本当に賢いんですね ステキだわ うーん・・・私が頼みたいのは・・・うーん・・まず・・・そうだわ デート!」

「・・・」
「・・・」
「・・・」

「デート!デート! せっかくケルティカまで来たんだから 観光くらいはしたかったんです!」

「なるほど それは素敵な計画ですね しかし叔母様の招待でこちらにこられたのではありませんか? 出歩かれますと叔母様に心配を掛けることになるかもしれません」

「そ・・・そうね うーん・・そうですわよね・・」

(ふむ 扱いにくい人では無いみたいだ この位の貴族のお嬢さまの相手をする事なら簡単だ・・・)

「うーん・・・うーん・・・」

「会いたい人ですとか 知りたい事ですとか・・・ こんな余暇はめったにあることではありませんから」

「そうですわね・・・」

(こう言えば こちらの狙い通り言い出してくれるだろうか? あの 呪いに関する噂・・・)

「あ そうだわ! 密会! 密会がいいわ!」

「ボリス 密会って 何?」

「さ・・さあ?」

(やはり温室育ちのお嬢さまだな 気分屋ではありそうだが 根は悪い人ではないらしい)

「ケルティカではなく 他の場所へ行けば目立たないですよね? ちょうど会って見たい人がいたんですよ~ フフッ」

(ん 上手くいったのかな? 簡単だったな よかった)

「そうだわ それがいいわよね」

「それでは約束の時間を決めましょう お嬢様の行きたい所へ参ります」

「ありがとうございます ミル様~ 何をするかは夜まで考えてみますね」

「・・・夜?」

「夜よ 何かおかしい事を言ったかしら? ・・・ちょっとそこの二人!さっきからそんな風に微妙な顔をして見るのはやめてちょうだい ・・・でも 理解できるわ 傭兵として苦労したせいで 笑顔を忘れてしまったのよね ぐすっ・・・かわいそうだわ」

「・・・はぁ」

「ではネリシア様 夜に歌う森の方で宜しいでしょうか?」

「ええ そうしましょう あ じゃあすぐに準備を整えなくちゃ! ワクワクするわ~! じゃあ またあとで! ロタ~!ロタはどこにいるの~?」


慌てた様子で ネリシアは侍女を探し出した


「・・・まあ とにかくいい方向に 上手く片付いたようですね どうですか? 思ったより安い宿泊費ではありませんか?」

「よく分からない 結局 依頼は夜なの?」

「そうですね 夜に歌う森ということに決まりましたので・・・また夜にお会いしましょう」

「うん わかった」


(さて ・・・では夜までに仕事を済ませるか・・・)








-ケルティカ 銀行裏道 S&A臨時アジト-



「こんにちは」

「おや トムソンさん 情報が入ったのですか?」

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「あのシベリン・ウーというお尋ね者の居場所を調べました 大体の情報は手に入れたんですが 一つ確認したい事があります」

「ほう なんでしょうか?」

「どうしてそのお尋ね者を今更捜そうとしてるんですか?」

「今更・・・というのは誤解がありますね 以前言った通り 彼が北に向かったという推測を元に ケルティカ方面へ人を派遣しただけの事です 傭兵である俺達にとって お尋ね者を捕まえるのは実入りの良い仕事ですからね 他の理由なの必要ないでしょう?」

「もちろんそうです・・・ですが そう仰るのならば 私もこれ以上の情報を差し上げる事は難しくなりますね」

「・・・なるほど・・・分かりました 俺はギルドの責任者では無いので 詳しい事はわかりません その前提でしたらお話しましょう ・・・シルバースカルにオルランヌの公女が出場すると言う情報が入りました しかし消えた公女を見分ける事が出来る人は限られています」

「なるほど そこでオルランヌに深く関与した彼に確認させる という事ですね」
(・・・嘘と言うより飛躍しすぎて破綻している 全ての理屈が)

「それではトムソンさんの情報を教えて頂きましょうか」

「ええ とりあえず親しくしている方々にその傭兵が現在ケルティカに居るという事を確認して貰いました」

「それは助かりますね 居場所を教えていただければ もっと親切なのですが」

「お待ち下さい 残念ですがそれは難しいようです 彼らの泊まっている宿の料金は どうやらフォンティナ公爵が支払っているようです 即ちそれは彼がフォンティナ家と何か繋がっているという意味ではないでしょうか?」

「うーむ・・・」

「だから疑われないように 私が代わりに仲介をするつもりです あなた方の目的がその方をシルバースカルに出す事なら それを実現させましょう どうです お役に立てそうですか?」

「そうして貰えるのなら願ったり叶ったりです 上の者達も喜ぶでしょう」

「それは光栄ですね ・・・では また動きがありましたらお伝えしますね・・・」

「御武運を」




(さて これでどうにか信頼はされるようになったかな)

(考える問題は3つ まず本当に公女がシルバースカルに出場するのか シベリン・ウーは本当に公女を見分ける事が出来るのか 上の方も喜ぶというのはオルランヌ王室の誰の事なのか・・・)

(まずはメイリオナ様に 宿の場所を確認しよう・・・)








-S&A臨時アジト 奥の部屋-


「なるほどな・・・ だが先手を打って力ずくで制圧してしまえば フォンティナ家が気付く前に処理する事は出来るはずだ」

「奇襲・・ですか?」

「まぁ そういうことにしておこう ケルティカ近郊で彼を見つけてから 複数の人間に尾行させている 隙を見て因縁をつける振りでもすれば 不意打ちで捕えることも出来るかもしれん」

「素直に捕まってくれる程 生易しい傭兵ではないでしょう」

「実行してみなければ分からんだろう 我々には不思議なくらい彼の情報がないからな なぜ情報が消えてしまったのかは分からんが・・・とにかく謎の多い男だ」

「つまりシルバースカルで公女を殺して罪を被って死ぬ役には 一番相応しい人間だと言う事ですね 傭兵の実力次第ですね 騙すか・・騙されるか・・」









-ケルティカ 王城-


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「ネリシア! どこをほっつき歩いていたのかしら? 子供みたいに浮かれて・・・」

「叔母さまごめんなさい でも~私 王城に来るのは初めてなんですもの! 色んな人とお話するのがすごく楽しいんです!」

「ネリシア」

「はい?」

「スカートの裾が台無しだわ 貴族の令嬢らしく振る舞いには気を付けろとあれほど言ったのに・・・」

「こ・・これは」

「王城を散歩するのも最後になるかもしれないから 思う存分遊んでおくのも悪くは無いわ 帰ったらもう首都を訪れる事もないでしょうから」

「・・・・はい・・」

「わたくしは席を外すから 大人しくしてなさい 家名に泥を塗らないようにね」

「はい・・ ルシンダ叔母さま・・」







「そうだわ・・・もうすぐ結婚式の準備で故郷に帰らなければならない・・・そしてすぐ・・・式を挙げる為に婚約者の領地に発つ事になる・・・」

「約束された日に式を挙げたら そうしたら・・・よく知りもしない領地で一生を送るのよ・・・子供を生んで 慣れない言葉遣いをする人々と過ごして・・・」

「・・そして本当の恋なんか一度も出来ないまま 小説の世界に憧れながら生きていくのよ 鳥カゴの中の鳥のように・・・閉じ込められて・・・」

「だから最後・・・これが最後だと言う事を私は分かっているから・・・ 一度だけ・・・・そう 小説のように自由で 何も怖がらず旅立ちたい 一度だけでも・・・・」













-ケルティカ 地下アジト-



「助言者君~おかえり~ 会うたびにすっごく久々に会えたみたいに嬉しくなるな~ ウフフ」

「・・・いつも楽しそうで何よりです」

「あとはランケン兄さんが研究資料を共有する気になってくれたら 私本当に嬉しくて飛んじゃいそう~!」

「ランケン様の研究は私も興味がありますから また今度教えて下さい きっとかなり役に立つとおもいます」

「あ~ そうそう 例の宿屋だけどね 調べてきたよ ここの近くみたいなんだけど今はいないみたい 色々仕事があるらしくて・・・もうすぐ夜だから後で行ってみた方がいいんじゃない?」

(うーむ もうすぐネリシア様と約束の時間だしな・・・こちらは後回しにするか・・・)







-ケルティカ近郊 深夜 歌う森-


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「・・さあ! 出発!」

「どこに?」

「時間が無いから急がなきゃ! もう どうして私がいちいち説明しなきゃいけないの?!」

「ネリシア様 目的地が分かっていると分かっていないのでは効率が違います 行き方も色々ありますし」

「うん・・・それはそうだけど・・本当に時間がないの・・・ ・・・龍泉卿! だから 今・・・龍泉卿に行くの!」

「龍泉卿?」

「そこに呪いのかかった王子様がいるって噂を聞いたの 変わった身なりをした商人にお菓子をあげて聞いた話だけど 何故かずっと忘れられないの たぶん気になっているのは運命だからよ! きっと呪われた王子様は私に会う為に呪いにかかったのよ!」

「・・・・・」

「そんなわけない」

「もう! 人の夢を壊さないでよ! フン ロマンも分からない傭兵のくせに」

(やはり呪いにかかった王子の話しだったか・・・変わった身なりの商人・・・か 気になるな)

「ただあなたが知らなかっただけよ 小さな傭兵さん 商人は確かに言ったんだから! これが運命でなければ何? さぁ 出発しましょ!」

「・・・思ったより遠い所まで行くんだな」

「ワープ 使えばいい」

「そ・・それはだめ 絶対にだめ!」

(ふぅ やはりお嬢さまはこっそり抜け出して来たんだな)

「夜が空ける前に出発よ! 早く ほら急いで!」

「早くとおっしゃってもワープが使えないとなると 着実に歩いていくしかありません」

「長い距離は歩いた事はないけど・・・ で でも仕方ありませんわ・・・」

「少しだけ我慢して頂けますか? おそらく南部アノマラドの方に行けばそちらのワープポイントは利用出来るでしょうから・・」

「ミル様がそうおっしゃるのなら 我慢しますわ ホホホ」

「前の変な機械 あれを使えばいいのに」

「変な機械? ああ それが 今はちょっと・・・」

「ちょっと? 故障した?」

「そうですね そういう事にしておきましょう 使えないのは事実ですから」

「じゃあ行こう」








-カウルの村-

テント村に近い形態であるカウルは 少数民族のラオ族が住む村

村ではリュートの音や歌声が聞こえ 楽しく自由な雰囲気が漂っていた



「ボリス ここカウルでしょ?」

「ああ そうだな カウルだ」

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(あれ・・・おかしいな なぜカウルに着いてしまったんだ・・・)

「カウル? ここは何の村なの? 変わった感じね・・・」

「こちらは少数民族のラオ族が住む村です 長い放浪生活を続けてきた民族のため テントの形態の住居となっているのが特徴です」

「ふ~ん 本当にテントだらけね ・・・ねぇ 地図だとこの近くに海の谷ってあるけど ここは何かしら? 名前が綺麗だわ ここに案内して頂戴」

「観光に来た訳じゃありませんが・・・」

「あら 傭兵さん 私のお願い聞いてくれないの? 依頼を受ける事にしたんじゃなかったの? 報酬は払うんだから 私の言う事を聞きなさい!」

「・・・ネリシア様 お望みならば 海の谷へ参りましょう」

「あら ミル様とは話が通じますね じゃあ早くあの人たちに出発するよう言って下さい!」

「・・・海の谷 何も無いのに 変な人」










-海の谷-


「水がキラキラして綺麗だけど・・・ 何よ 何も無いじゃない つまらないわ・・・海を見てみたかったのに・・・近くにもっといい場所はないの? 地図を見せて頂戴」

「はあ・・・どうぞ」

「うう~ん・・・あ ここは? こだまの谷と言う所に行って見たいわ」

「あそこ 何もない」

「美しいロマンが始まりそうな名前じゃないの! ふぅ~ 本当にロマンのない人ね」

「怒るのは美しい淑女には似合いませんよ ネリシア様 ご機嫌を直して下さい こだまの谷へ行って見ましょう」

「わぁ! やっぱりミル様はお優しいですわね! じゃあ出発~!」










-ケルティカ 城門前-



城門の前では数人の兵が 話しに花を咲かせていた


「・・・らしいぜ? ははっ あいつも面白い事やってるよな」

「本当かよ あいつもバカだなぁ」


「どうしたんですかアーロンさん? 何か面白い噂でも?」

「おお ハーティーか もうすぐ開かれるシルバースカルの話しをしてたんだ」

「俺達の仲間の一人が出場するとか言ってるんだよ」

「おお 素敵じゃないですか!優勝すれば正式にハイアカンの騎士の爵位を貰えるじゃないのですか!かっこいいな~」

「どうせ象徴的なものじゃないのか~? ハイアカンは小さな国だからな」

「でも騎士は騎士ですよ 俺がもし優勝したら・・・」


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「勤務時間だと思ったが 私の知らぬ間に近衛隊の休憩時間が調整されたのだろうか?」

「・・レオポルド様! す すみません!」

「申し訳ありません!!」




「まったく・・・・」

「シルバースカル・・・・そんな簡単な話ではない 優勝者に授与されるのは象徴的なものだとしても一国の騎士職 地位を得て享受出来るものを世間では力と呼ぶ いや権力だろうか・・・」

「そんな単純な話ではない・・・優勝者という知名度でハイアカン政界に手を出そうとする者がいないと・・・誰が断言出来るだろうか・・・」











-こだまの谷-

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「うーん ここもあまり見るものはないわね・・・あっちの方へ行くと何があるのかしら?」

「セルバス平原」

「それだけ?」

「あ・・・混乱の洞窟がありますね」

「あら それは何かしら?」

「ただの洞窟」

「・・・それだけ?」

「うん 行く?」

「申し訳ありませんがネリシア様 混乱の洞窟は貴婦人がドレスを着て散歩出来る様な場所ではありません 経験を積んだ冒険者ですら迷う魔境です」

「うーん・・・でも 危険な冒険の方が・・ロマンス!・・とかありそうではありません? ピンチになった時に王子様が助けに来てくれるかもしれないわ!」

「そんな人助けに来ない」

「・・・ネリシア様 呪いにかかった王子様を助けに行かれるのではありませんでしたか?」

「あ そうね・・・ そうだわ 王子様の呪いをとかなきゃ・・・」

「では 龍泉卿に向かいますか?」

「あ そうだわ! 私 海に行ってみたかったの! そうね・・・この地図の・・・ここにするわ! パレンシア海岸! 大丈夫ですわよね ミル様?」

「お嬢さまがそう仰るのなら 喜んで従いましょう」


「はぁ・・・こんな調子じゃ 龍泉卿に着くのはいつになるんだ・・・?」








-パレンシア海岸-



「これが海・・・大きくて気持ちいいわ」

「足元に気を付けてください 砂浜は靴では歩きにくいでしょうから」

「あら 優しい 私を心配して下さるんですね やっぱりミル様は素敵な方ですのね はあ~どうせならミル様みたいな方と婚約したかったわ・・・」

「ご冗談を 素敵なフィアンセがいらっしゃるでしょうに ネリシア様は私を買いかぶりすぎです」





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「ボリス ここ」

「ん 何のかけら?」

「ここで ピティーチャップが虐殺された」

「あ・・・あぁ そうだな・・・ これは鱗のかけらか・・・ ちょっと勿体ないな 干からびてしまっているみたいだ」

「もう使えない」






「あぁ 足が痛い・・・ 私ったら本当に人魚にでもなった気分だわ 人魚姫の話 あなた達も知ってるわよね?」

「知らない ボリス知ってる?」

「いや どうだったかな」

「そうだと思ったわ ロマンのない人ね 庶民ってみんなこうなのかしら?」


「・・・いつまでここにいなければならないんだ?宿泊費分の働きはしたと思うが」

「まだ目的地には着いていませんよね? ボリス様」

「ボリス様・・か いつもそんな感じだな 丁寧な言葉を聞きたいわけじゃない 何を計画しているのか いや 何の為に動くのかすら教えてくれるつもりはないようだな」

「まるで私があなたを利用している・・・と仰りたいようですね 今はっきり申し上げたでしょう?龍泉卿に行くと」

「・・・・」

「・・・? ・・・クラドが近い クラド行く?」

「近い・・・と言うには無理があるが・・」

「私 前から庶民の旅館が気になってたの! クラドの旅館に行ってみたいわ!」

「それではクラドに向かいましょうか」









-クラド 宿-

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「あら~ こんな所まで貴族のお嬢さんが観光にいらっしゃるとは~ びっくりです」

「ママ やっぱり炭鉱村のチャーハンが有名になったからじゃない?」

「炭鉱村チャーハン?! そんなのがあるの?」

「はあ・・・」

「食べたいって言いそうでしょ? ボリス」

「ああ そうだな」

「・・食べたい!それ 私も食べてみるわ!」

「ママ 作ってあげたら?」

「わかりました ではすぐにご用意しますね」

「じゃあ それまでにジャスミンティーを注いでくれる? テーブルも綺麗な布で拭いて頂戴 テーブルクロスは無いのかしら?」

「貴族というものは本当にみんなこうなのか・・・自分勝手なものだな・・・」

(貴族のお嬢さんとは大抵あんなものだ・・・あまり驚くことでもない・・・)

「お連れのみなさんは大変ですね」

「はあ・・・」






「うん・・・うん・・・ まぁこういう所で売っている食べ物にしては中々いいんじゃない」

「気に入って貰えてよかったです ホホ」

「ボリスも食べる?」

「いや 俺はいい」

「どうする 食べ終わったら龍泉卿行く?」

「そ・・そうね・・その次は・・うーん」

「王子様 会いに行かなくていい?」

「そ・・そうだけど・・・なんであなたが私の予定を決めるのよ!黙って私の話しを聞けばいいのよ!」

「自分が行くべき道 そんなにちゃんと見えるなんて すごい」

「ミル様 もう少し色んな場所を訪ねてみても・・・大丈夫ですわよね?」

「ええ 勿論です お嬢様が望まれるのなら 貴婦人は心のままに生きていいのです」

「やっぱりミル様だけは 私の心を分かって下さるんですね でも もう本当に時間はあまりないから ・・・この辺で我慢しますわ 龍泉卿へ行きましょう!」

「結局行くの? 変な人」











-龍泉卿-


「ここが龍泉卿なのね・・・」

「何からする?」

「まずは王子様を捜すんじゃないのか?」

「王子様 だれ?」

「さあ・・?」

「ネリシア様も噂だけを聞いていらっしゃったようですので 邑を回って情報を集めた方がいいですね」

「うん」

「あなた ボリスより役に立つ ボリスは さあ しか言わないから」

「うー・・・足が痛い・・・道もくねくねしているし・・田舎は本当に困るわ・・」


ネリシアが石場に腰掛けると 邑の一人が声を掛けた


「あら こんにちは~ 旅行者の方ですか? 私は粉伊っていいますー うふふ 旅行者を歓迎するのが私たちの礼儀なんです」

「これはご親切に有難う御座います」

「あら 大金持ちのお嬢様みたいですね? こんな素敵な方と一緒に旅行出来るなんて!」

(話好きみたいなだ・・・何か情報を知っているかもしれない)

「ボリス この人に聞く?」

「ああ そうだな」

「失礼ですが 宜しければいくつかお伺いしてもいいでしょうか?」

「あら~いくつでもどうぞ~ 私が知っている事なら・・いや・・・知らない事も教えちゃいます!」

「一体王子はどこにいるの? 早く私が見つけてあげなくちゃ・・・早く助けてあげなくちゃ・・・」

(助ける・・・? なぜそんな言葉を使うのだろう・・・気になるな)

「うーん王子様? こんな所に王子様なんているわけなじゃないですか」

「それはそうなのですが」

「そんなはずはない!あなたのようなみすぼらしい女の目には わからない王子様なのよ!」

「な・・なんですって!そんな失礼な事を言うなんて・・!」

「呪いにかかっているから あなたには何もわからずに王子様とすれ違ってるだけなのよ でもこのネリシア様が会えばきっとわかるはずよ! 人魚姫が船に立っていた王子様に一目ぼれしたように・・・」

「見ればわかる? どうして? 直接捜さない?」

「でっでも・・・人魚姫も結局は魔女の力を借りたじゃない そういうものなのよ!」

「ふん 結局何も知らないから聞きに来たくせの 何で威張ってるのかしら 物の聞き方を知らない人ね」

「粉伊様 私達は遠くから来た旅人です あなた様の助けが必要なのです もし思い当たる場所や何か知っていそうな人はご存知では無いでしょうか?」

「まぁ・・・そんな風に言ってもらえると・・・うーん・・・そうね あ そうだわ!呪いにかかると巫人様が呪いを解いてくれるの! 巫人様は邑の司祭だから詳しいかも!」

「なるほど」

「ここを奥に行けば守護神を奉る為に石を積み上げた所があります そこに行けばすぐに見つかると思いますよ~うふふ」

「ありがとうございます それでは・・・」








-龍泉卿 石が積み上げられた奉場-


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「うむ? うむうむ ・・・呪いにかかった王子? ふぅむ」

「何かご存知でしょうか?」

「全ては無想無念 これを無我といい 存在しないものの本質を指して空と言うのだが」

「?」

「最も真実に近い場所に立っているのは子供と言うだろう? 人間は生まれた時 既に苦痛をはらんでいる しかし存在し始めた瞬間に近付くほど苦痛は透明になるのだ だから君達は文里を訪ねてみてはどうかね?」

「は・・はぁ・・」

「何を言っているかよくわかりませんが とにかく行って見ましょうか・・・」











-雑貨屋 南瓜の蔓-
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「いらっしゃいませ~ うちは何でも揃っていますよ もちろん店のドコにあるかは知りませんけど・・・」

「もう~何~? ちょっとかわいいけど まだ子供じゃない こんな子が何か知っているというの?一体は呪いにかけられた王子様はどこにいるの~ はぁ もう足が痛いの・・・これ以上歩けない~」

「ナニ~このお姉さん 主人の許可も無く座り込むなんて! そこに商品があるかも知れないのに!」

「ふん こんな安物100個よりもっと重要なのが私の王子様よ! 私に立って欲しければ早く王子様の居場所を教えて!」

「王子様? うーん何を買いに来たのかわかりませんが この中にあるかもしれませんので 欲しければ勝手に発掘して下さい」

「王子様は物じゃないわ! こんなガラクタの中に王子様がいる訳ないじゃないの!」

「・・・何言ってるの? この姉さんどこかちょっと変じゃない?」

「王子 捜してるの 知らない?」

「あなた人魚姫の話を知らないの? じゃあ特別に教えてあげるわ ホホホ 感謝しなさい!」

「無駄な話を聞いてる時間は無いんだ そこの冒険者の方~ このお姉さんのお供をしているんですよね?」

「はい」

「僕はこのお姉さんの話しを聞かなくちゃだめなんだよね?じゃあ変わりに何か買っていってくれる?」

「話と王子は 関係ない」

「わかってないな~ ボクはそんなの知らないって言っちゃえば終わりなんだよ! へへへ でも話しを聞けば何か思い出すかもしれないですよ?」

「・・・何か情報をお持ちのようですね 分かりました ではお願いします」

「ふう~ よし それでは思いっきり話して下さい」

「わかったわ じゃあね えーと・・・・」





「・・・・・なのよ! でもねその王子様は・・・・ ・・・・」

「ふむ・・・・・ ・・・・・」




「・・・・・ ・・・・」

「それでね だから人魚姫は思ったの! あ~美しい王子様だって! 」

「ふむ・・・ ・・・」




「それでね・・・・ ・・・・・だから人魚姫は・・・・」

「・・・・ふむ ・・・・」




「・・・・・でもその時の王子様は・・・・ ・・・・・だから・・・・・」

「・・・・・」

「そしたら・・・・」

「あーお姉さん! その部分はもう3回目も聞いたよ だから人魚姫は船上のパーティーにいた王子様に一目惚れした! でしょう・・・」

「よく聞いて! 人魚姫は王子様の為に命をかけたのよ 本当に真実の愛だと思わない?」

「それも2回目だよ 何回同じ事をいうのかな」

「もう 話の流れを止めないで! ・・・忘れちゃったじゃない じゃあもう一回最初から・・・」

「えー! お姉さんもう許して~!」





「それで人魚姫は 王子様の為に命をかけたの! あ~真実の愛って素敵だわ・・・本当にロマンチック・・」

「は~あ~ そこまではよく分かったよ それで?」

「王子様は人魚姫に助けられたわ 人魚姫は王子様が好きだったの でもそんな素敵な人にこれからまた会うことはないだろうから また誰かと出会って 恋に落ちて 世の中にはこんな素敵な人がいるんだって・・・」

「うんうん・・・・」

「そんな素敵な人がいるのに もう会えなくて・・・だから・・・最後にもう一度だけ・・・・ ・・・」

「・・・? あのお姉さん 話し終わったの?」

「あっ うん? あら ホホホ 私ったら急に違う事を考えていたわ」

「しっかりしてよ~」

「まぁ そうね 言ってみれば王子様は陸の人間で 人魚姫は海の人魚なのよ 住む世界が違うって事 それで人魚姫は魔女を訪ねて 声を差し出す代わりに陸を歩ける足を貰ったの」

「へぇ・・・それは不公平な取引じゃない?」

「何よ! ロマンチックな愛の物語に 取引だとかお金の話しはしないでよっ!もう・・・ ・・・それで 海の魔女から足を貰った人魚は陸に上がったわ」

「水の外に出たって? 一体この話に終わりってあるの?! ううっ ううっ このままじゃ永遠に話しを聞く羽目に・・・思い出さなきゃ 何か思い出さなきゃ・・・」

(なんだかかわいそうだな)

「それでね 魔女に声を売ってしまった人魚姫は・・・」

「あ あっ! 思い出した お姉さん思い出したよその・・・王子様!」

「本当!? きゃあ このネリシア様の話しに感動して ついに思い出したのね! ホホホ」

「昔 父に聞いた話を思い出したよ この邑に呪いにかかった誰かが生きていると言っていました その人はずっと邑の池で毎日待っていると・・・」

「待ってる?」

「よくわかりませんが 呪いを解いてくれるお姫様を待っているのか 魔女を待っているのか・・・さぁ 思い出したのでさっさと帰って下さい はぁ・・」

「わかりました ではネリシア様 参りましょうか」











-龍泉卿 水場-



「おい そこの若者 何の用かしらないけど どこか向こうへ行きたまえ ここは私の席だよ 釣りにも礼儀があるんだ」

「失礼します ご迷惑でなければ 少しお伺いしたい事が・・・」

「な~に~ はあ~がっかり 人の夢をこんな風にズタズタにするなんて・・・」そこのむさくるしいおじさん! まさかおじさんが王子様じゃないわよね?

「む むさくるしい?! おじさん!? 何だ この娘は!」

「この娘? ホホホ ネリシア様はあなたから気安く呼ばれるような人間じゃないの はあ でも本当にがっかりだわ 王子様は一体どこにいるのかしら?」

「何を言っているのかわからないが とにかく若者よ ちょっとどいてくれないか? 私は心を平穏にして水と渾然一体となり魚を待ちたいんだよ・・・今日の釣りは気持ちが乱されて台無しだ」

「呪いにかかった王子 知らない? 捜してるの」

「ふん 私は何も答えないぞ! さあ 早く向こうへ行きたまえ」

「だめみたいだな・・・」


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「あの・・・」

「・・・・ん?」

「何か知っているのかい?」

「うん・・・うち 知ってるけど 呪いにかかった王子様・・・」

「どこ?」

「あっち・・・」

「あちらにいるのは・・・カエル・・・のことでしょうか?」

「うん あのカエル突っつくとゲコゲコって鳴くの でもあのカエル王子様だよ 呪いにかかった王子様 ずっと昔に茶山のおじさんが聞いたって 四芦のお姉さんもそう言ってた」

「普通のカエルみたいだが・・・」

「返事をしないなら させればいい」

「れ・・レイ そんな物騒な物振り回したら 返事をする前に死ぬ・・・」

「お嬢さん カエルの王子様とお話したいのですが 方法をご存知でしたら教えて頂けますか?」

「うん カエルが面倒がるまで ずっと話しかければいいみたい 昔 茶山のおじさんに聞いたの」

「なるほど 親切に教えて下さり 本当にありがとうございました」

「面倒がるまで?」

「レイ とりあえずは武器をしまえ 間違って切りつけたりしたら大変だ」





-水場のカエル-


「ゲコゲコ・・・ゲコ」

「あなた 王子様なの?」

「ゲコゲコ ゲコ」

「お願い王子様 口を効いて頂戴」

「ゲコ・・・ゲコ・・・」

「王子違う?」

「ゲコゲコ・・・私が・・・ゲコゲコ ゲコ・・・王子 ウムウム・・ゲコ」

(本当にしゃべった・・・)

「ゲコ・・・私は 呪いに・・・ゲコ こんな姿になって 数え切れない歳月が・・・ゲコゲコ 頼みが・・どうか この哀れな王子について聞い・・・ゲコ」

「頼み?」

「・・・薬師に頼んでゲコ・・・元の姿に・・・ゲコゲコ ゲコゲコ! ゲコー?!」

「喋れなくなった・・・」

「すごい・・・本当だった! 本当に呪いにかかった王子様に出会えたのね! あ~ロマンチック! 早く薬師の所に行きましょう!」







-龍泉卿 薬店-

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「本当にロマンチックだわ! 王子様 王子様! 早く呪いをといてあげないと!」

「ふむ・・・可哀そうに・・・かなり深刻な事態みたいですね でもこの私を信じてくれるなら必ず治します」

「・・・その人じゃないんだ」

「あら 違うんですか?」

「実は 呪いでカエルの姿に変えられた王子様を救いたいのです 何とかなりませんか?」

「呪いにかかったカエルの姿をした王子・・・申し訳ありませんが 私は人間の薬を調合していたので呪いに効くようなものはわかりません 私にはどう助けたらいいのかわからないのです」

「そうですか・・・」


「おい そこの人? 呪いにかかった動物を人間の姿に戻すのか?」

(動物・・・? もちろんカエルも両生類だから動物といえば動物だが・・・)

「おらは四芦だべ この世はおかしいことがめっちゃあるべなぁ~ にんにく食って人間になった熊とか そういうおかしな話をたくさん聞いたべ おらの知ってる事なら教えてやってもいいが 聞いてみるべか?」

「にんにくを食べた熊・・・・」

「どういった話なのか詳しくお聞かせ頂けますか? 呪いとどんな関係があるのでしょうか」

「おらが聞いた話だがな 東の国に住んでいるある人がパンダになったんだと んだがな その人は温泉をかけたら人間に戻ったんだとさ~ だからそのカエルに温泉をかけてみたらどうだべ?」

「ボリス・・・前もこんな事なかった?」

「ああ・・・前は失敗したがな・・・」

(何の話をしているんだろう・・・?)

「まあ 行くのなら反対はしないが・・・」

「近くで温泉が汲める場所があるのですか? ご存知でしたら教えてください」

「おらの知る限りじゃ 紅玉の洞窟の近くのセルバス平原に井戸があるみたいだべ」

「温泉を取りに行くって? 王子様にかかった呪いを解くために?」

「はい ネリシア様はこちらでお待ちになりますか?」

「何言ってるの 人魚姫は他の人に王子様を任せたりしない! 足がすごく痛いし 疲れてるけど・・・私も行くわ! あ~本当に愛ってすごいものなのね!」








-セルバス 平原井戸-


「・・相変わらず状態はよくないが なんとか水は汲めそうだ」

「うん」

(相変わらず? 場所もすぐわかったし 初めてではないようだな・・・)


「ふう・・・水を一杯汲むだけでどうしてこんなに時間がかかるの? もう足が木の棒みたいになっちゃったわ・・・」

「誰も来いと言ってない」

「で・・でも王子様のためよ!! 人魚姫にとって足は慣れてないから 歩くのも針で刺すように辛いのよ でも王子様にまた会えるのなら こんな苦痛は何でもないわ」

「・・・あなた 人魚じゃない」

「ちょっと~!いちいちつっかからないでよ!このネリシア様の言う事にあれこれ言わないで!」

「・・・?」

(ん? 何だか様子がおかしいぞ・・・まるで自分が人魚姫であるように喋ってる・・・)

「よし・・・それじゃあ戻ろうか」







-龍泉卿-




「あ~つまんない 色んな所観ながら行けばいいのに 何をそんなに急いでいるの? すごーく足が痛いわ! 私行かない こんな疲れた顔で王子様に会っても 運命的な愛なんて感じないわよ」

「ネリシア様 カエルの所まであと少しです ・・・さあ ゆっくりでいいですから私たちについて来てください 道が狭くて危険です お嬢様のか弱い足に無理をさせて怪我をされても大変ですから」

「そ そんなにまで心配して下さるなんて嬉しいですわ」

「あれが 心配?」






-龍泉卿 水場-


「ゲコゲコ」

「これ かければいい?」

「うーん たぶん・・・な  実はまだ信用は出来ないんだが」

「ゲコ・・・ゲコ!・・・・ゲコ!?」

「待って! ・・・だめっ!」

「かけない? どうして? あなたの王子様 温泉をかけないとカエルのまま 違う?」

「だめ だめ! 王子様に怪我させたらだめ! だめよ・・・グス・・王子様の命を救うのは私よ・・・怪我させたくない うう・・・王子様の心臓に剣を突き刺すなら私が泡になる・・それが本当のロマンチックな愛だから・・」


「・・・自分自身を人魚姫と思い込んでいるような発言ですが どう思います?」

「うーん・・・ 確かにおかしくなっているようだが・・・」

「どうして泣くの?」

「ゲコゲコ・・・あまりに驚いてまた人間の言葉が喋れるようになったぞ・・ゲコゲコ」

「カエル しゃべった」

「遠い東の国の昔話によると 娘に会った途端 驚いたあまり目が見えるようになった盲目の人がいるらしいゲコ まるでその話みたいだ ゲコゲコ ・・・しかし四芦め これで何回目だ・・・ゲコ 変な民間療法を教えて何人も苦しめるし・・旅行者がどうして邑に居座ってこんなカエルに苦労させるんだゲコ」

「では 温泉をかけても呪いのようなものは解けないのですね?」

「温泉をちょっとかけたぐらいで呪いが解けたら苦労はしない ゲコ・・それに人に温泉をかけちゃだめだよ! ゲコ!そんなの常識でわからないかい?」

「人・・・?」

(本当に人間だったのか?)

「四芦の言葉で動いたと言う事は 薬師は何も知らなかったんだな ゲコ 残念だゲコ」

「はい 薬師様は呪いについては知らないそうです」

「じゃあ四芦のところに戻りなさい 茶山大人が何か知っているかも・・ゲコ ゲッコ ゲコー!」

「・・・喋れなくなった」

「可哀想な王子様・・・おうちょっと待っててくださいね! このネリシアが必ず王子様を助けますから!」






-龍泉卿  茶山邸- 


「そうでしたか・・・大変でしたね 四芦さん まだ確認されていない民間療法を教えちゃだめですよ また人が怪我したらどうするんですか?」

「ふむふむ 縮地法を研究しようとしてアドバイスしただけだべ こんな風になって本当にすまないべ・・・お詫びに居酒屋で買ったスペシャルチヂミをやるべ」

「スペシャルチヂミ? ん・・・一体何で作ったらこんな変なにおいがするの? ・・ふむふむ でも見た目と違ってなかなかね もふもふ」

「カエル様が茶山大人様ならば呪いについて何か知っているかもしれないとおっしゃっていました もしご存知の事があれば教えて頂けませんか?」

「ふむ・・・カエルさんはあそこに住んで長いですが 呪いについてはよく知らないんです 申し訳ありません」

「カエル様についてではなく 池に絡んだ呪いとか・・邑に伝わる話などはありませんか?」

「うむむ・・・あ 伝説・・・ そういえば思い当たる事が・・ですがカエルさんがこの話しのカエルではないと思います」

「話?」

「伝説・・・とでもいいましょうか ただ語り継がれている話です 大昔 邑に神秘的なお嬢様が一人尋ねてきたそうです そのお嬢さんはとても美しい宝玉をひとつ持っていたのですが池に落としてしまいました」

「宝玉?」

「よくはわかりませんが 綺麗な玉だったそうです 話によればその玉は普通の玉ではなく変わった力を持っているものらしいのです お嬢さんは慌ててその玉を捜している時 あるカエルが宝玉をみつけてきてくれたそうです ところがカエルはお嬢さんに玉を返すどころか また池に投げ込んでしまったそうです そうして投げた玉はどこからか現れた魚が飲み込んでしまった・・・そういう話です」

「なんだかひどい話だな」

「そうですね それでお嬢さんはひどくショックを受け 宝玉に念じて呪いをかけたそうです 何の呪いかわかりませんが いつか玉がまたこの世に出てくると・・・そこからは私も解らないですが・・・」

「今もどういう呪いか解らないのは それらしい現象が何も起きないからですか? 例えば池におかしな魚が現れたとか そういったことがあれば それが呪いだと分かるでしょうし」

「はい これといって呪いといった現象はなくて ただの昔話だと心にしまっていました ・・・ですが以前に妾大公さんから噂として聞いたことがあります 凶暴な魚の中にちょっと変な魚がいたけど 逃がしてしまった・・・と」

「なるほど 宝玉の持ち主にとっては 玉を飲み込んだ魚にも池に投げ捨てたカエルにも同じくらい恨みを抱いたでしょうから」

「本当に呪いにかかった魚がいるなら まだ池にいるべ~ 行って一度魚を釣ってみるのはどうだべか?」

「それは余りにも漠然としているようですが・・ その魚が今もいるのか分からないですし いたとしても釣れるという保障もない・・・」

「何よ! 挑戦しないで諦めるなんて弱虫ね! 王子様の為に私は海の魔女と契約まで交わしたのに あなた達はどうしてそんなに弱虫なの!?」

「私たちの目的はネリシア様の望みを聞いて差し上げる事です そうおっしゃるのなら釣りをやってみましょう」

「本気か? そもそも伝説が本当のことかもわからないのに 釣るといっても・・・」

「本というものは開いてみるまでは分からないものです それに・・他に手掛かりがないといって何もしないのは ネリシア様の混乱がひどくなるだけです すぐに退屈がり やる事が目の前になければ不安で落ち着かなくなるというものが貴婦人というものなのです そうでしょう?レイ様」

「・・・ じゃあ決まり? 行こう」

「あ! ・・・待ってください そう言えば思い出しました ご先祖様は真っ暗な夜にキラキラ光る宝玉を持って池のほとりを散歩中 凶暴な魚に出会ったそうです 夜を特に好んだのかもしれません」

「夜ですか」

「正しいかはわかりませんが 試してみるといいでしょう」






-龍泉卿 夜 水場-



闇の帳が下り月が上る 三人はきらきらと輝く水面に糸を垂らしていた


「・・・ボリス 釣れた これ凶暴な魚?」

「うーん 普通の魚のようだけど・・・」

「お腹 宝玉ある?」

「ないようですね もう少し釣りを続けてみましょうか」







「・・・・・・」

「ボリス また 釣れた」

「なになに 今度こそ宝玉が見つかった?」

「これも違うようだな・・・」

「もう 同じ魚ばっかりじゃない! 」








「あ・・・ また釣れましたがこれも違うようですね」

「本当に釣れるのか・・・?」










「あ・・釣れた」

「・・・ ボリス 今度の大きい お腹に何かある」

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「これが 例の宝玉・・・でしょうか? 一応球体ではありますが 宝なのかどうかは分かりませんね」

「宝玉見つかったの? これで呪いが解けるの?」

「ゲコゲコ?」



「ん なんだか急に光り出したぞ」


球体が輝きだすと 水場に渦が現れ地を揺らした


「きゃあ~! み 水が!」

「ゲココ~!!」


「あ カエル 池に消えた 吸い込まれた?」

「何が起こったのでしょうか」


「・・・・私が・・・私が・・・」

「ネリシア様? ・・・ネリシア様!」

「私が・・・助けないと 王子様が 王子様が・・・」

「様子が変だぞ」

「王子様が水に落ちてしまった 助けないと ・・・! 私が!」

「ネリシア様!」

「危ない!」


渦の勢いが増し ネリシアは吸い込まれるように水の中へ引き込まれていった


「また吸い込まれた・・・」

「・・・水の中に渦が出来ています 道が・・・そちらに吸い込まれたようですね」

「ボリス 進む?」

「ああ 助けないとな」







-水中 渦の中-


水場に入ると大きな空間が広がっていた 上を見上げると 水に映った月が薄く揺らいでいた



「水の中なのに 息出来る・・・」

「不思議な場所ですね 水の中にこれだけの広さの場所があるなんて」

「ボリス あそこ 誰かいるみたい」

「ん・・・?」


そこにはカエルとネリシアが会話をしていた カエルの頭上には大きな王冠が浮かんでいる

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「王子の相手は姫でなければならない 決められた運命など 変えられるわけがない・・・人魚姫も結局は捨てられる 魔法の力を借りて無理やり足などを作ったのだから当然だ」

「・・・カエルが・・・」

「努力しても もがいても 何も変わらない 全てが無意味なだけ・・・運命だから・・・決められた宿命だから・・・だから最初から運命で決まった姫でなければ美しい王子に会ったとしても 無駄なのだ・・・」

「それでも王子様を刺す事はできない・・・それでも私を捨て去る運命を憎めない・・・抵抗出来ない! 私は最初から分かっていたわ 私の運命がどういうものか 全て分かっていたの ・・・私は王冠に刃を突きつける事はできない!」

「それではだめなのだ・・・誰かがこの王冠を・・・この意味の無い王冠を壊さなければならない 誰も相手になってやれないから ひとりっきりで寂しいだけだから」

「だめよ・・・私には出来ない・・・!」

「運命からは逃れなれない 悲しい運命よ・・・・」

「私には うぅ・・・・」




「ネリシア様の様子がおかしいですね 冠は壊す事を望んでいますが・・・」

「ボリス どうする?」

「ここは普通の場所では無い 長居をするのは危険そうだ」




「どんなに努力しても 全てをかけても・・・何の意味も無い 何も変わりはしない!」

声が響くと ネリシアは苦しみ出し地に膝をつけた

「そんな・・・あぁっ・・・うぅ!」

「いけない! ネリシア様!」

「レイ!」

ナヤトレイは小刃を投げると 脆い音を立て冠の一部が砕けた


「そうだ・・・運命からは逃れられないのだ これで・・・これで・・・」

王冠は欠けた場所を中心にぼろぼろと崩れ去った 

「運命よ・・・全ての・・・・・」

全てが屑となり直前 最後の欠片が一枚の紙きれとなり宙を舞った

「あれは・・・」

(運命・・・? 努力しても変わらない・・? この前もそうだったが どうも何か伝えたいことがあるような気もするが・・・ これもエタと関係しているのだろうか・・・)






「あなた ケガをした?」

「・・・・ ・・・・ 私の・・・尾びれ・・もう現れないの・・? 王冠を壊してしまって 王子様ももういないのに・・・なのにまた元に戻らないの?」

「?」

「・・・まだ様子がおかしいな 本当に何か関連があるのかもしれないな」

「ボリス様 何と関連があるというのですか?」

「それはわからない だが 同じことが二回以上起きれば必然を疑うのが普通だろう」

「・・・あれ」

「どうした レイ?」

「あそこ カエルが光ってる」


「わ・・・王子様!? 本当に呪いが解けたの?」

「本当に人だったんですか・・・ふぅん・・・」

「おいおい じゃあ何だと思ってたんだ・・・」

「王子様~!!」

「おお・・・やっと人間の姿を取り戻せた よかった・・・勇敢な君達の苦労は忘れないよ 今日のような嬉しい日を迎えて この体は・・・」

「待って おかしい 水が・・・揺れてる」

「わ・・・きゃぁ~!」

「元々水中ですからねここは・・・先程の王冠が消えたせいで 力が失われたのかもしれません ここは危険です 急いで脱出しましょう!」

「きゃぁ~! 私は人間なのよ! ひれがまだ無いのに~ 水に落ちたら死んじゃうわ!」







-龍泉卿 茶山邸-

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「ほぉ そんな事があったのですか・・・伝説が本当だったとは私も驚きました 皆さん無事で何よりでしたね」

「これも全てネリシア様の愛の力よね! ほほほ」

「こうして私の本来の姿を取り戻せて感無量だ 長い苦労の月日を耐えれば いつかこのような日が来ると強く信じていたゲコ」

「え・・・?」

「なんと・・・ やはり本当の姫じゃないから呪いが解けてないのかゲコゲコ!? 王子の相手はやはり姫じゃないとだめなゲコ・・・ゲコゲコ!」

「ほ・・・本当の姫じゃないからですって!? わ・・・笑わせないで! ただのカエルのくせに!」

「やはり本物のゲコゲコー!姫でないとゲココ!」

「私こそカエルなんて必要ないわ! 私が会いたかったのは王子様で ジメっとした性格の悪いカエルじゃないの!」

「ゲコゲコ・・・こうしている間に本当の姫が来たら大変ゲコ・・ 行かないとゲコゲコ・・・」

「・・・・」

(やっぱり解けたのは カエルの呪いではなく池にかかった呪いだったようだ その影響でカエルの呪いも一時的に解けただけだろう・・・それともあの宝玉の方の呪いだったかもしれないな)

「気分が悪いわ 狭い部屋に集まっているからみたい・・・私・・外に出るわ」





「ふむ お嬢さんの心中は複雑でしょうね 不本意ですが残念です 池でなくした宝玉はただの昔話だったのでしょうか あまりにも時間がたってしまったから・・・」

「これ 見つけた」

「・・・これは?」

「池から釣れた魚から出た物です」

「あ・・・これ・・・これみたいです! 表面は汚れていますが 磨けばきっと・・・! 待っていて下さい 一度磨いてみましょう」


「・・・・・」

「・・・よし・・・これで・・・ほら ピカピカになりましたよ」

「ただの汚れた玉だと思ってましたが こう見ると立派な宝玉ですね」

「私もびっくりしました この目で本当に見れる日がくるとは ずっと気になっていたのですっきりしました」

「黄金に輝き中はガラス玉のように透明 中に入ったかけらは宝石のようで 光が反射する度に美しいですね ではどうぞお受け取り下さい」

「このような物を頂くほど大した事はしていませんが・・・受け取っても宜しいのですか?」

「ええ ただの伝説だった物がこうして蘇ったのです あなた方に差し上げるのが当然ですよ」

「中に入っているのはオルゴールか? 内側に機械仕掛けのような物も見えるが 動作はしないのか・・・」

「これ ありがとう さようなら」

「いろいろご迷惑をお掛けしました それではまた・・・」




-龍泉卿 茶山邸前-


「さっきのあの不思議な現象は カエルの呪いではなく あの紙きれのせいだったのだろうか?」

「おそらく そう考えるのが妥当ですね あれがエタと関連した何かだと仮定すると 宝玉や呪いなどではなく 紙切れ自体があの現象を起こしたと考えなければならないのかもしれません 背負わなければいけない義務がある者達を呼び 自分を見つけ出させるために・・・」

「物語を読まなければならない義務というあれ・・? 塔で見た」

「はい」

「その理屈だと 俺達に見つけてもらう為にあんな現象を起こしたと言うのか? ただ俺達を呼ぶためだけに?」

「あくまでも仮説です 私は今ある情報だけで全ての事を見通せる程 賢い人間ではありません」

「・・・・」

「・・じゃあ もう帰る?」

「あ・・そうですね カエル様に挨拶をして帰りましょう ネリシア様もお待ちのようですし」






-龍泉卿 水場-




「ゲコゲコ・・・」

「もう本当にカエルに戻ってしまったのか」

「そのようですね」

「ゲコ・・・」

「・・・いつまでカエルを眺めているつもり? これ以上ここにいるのは嫌 早く行くわよ!こんなカエルのせいで時間を無駄にしたわ ふん 誰が本物の姫じゃないのかしら ふん!」

「ゲコ・・ゲコ・・・! やはり今回の事で私の運命の人はトゥートゥー王家のアロミ姫だという事がわかったゲコ! やはり真実の愛には試練がゲココ・・・いつかアロミ姫と私の願いである隣国のお姫さまとラブラブ作戦に! 成功する日がゲコ いつの日かゲコゲコ・・」

「興奮したら話せるのか・・・? しかしラブラブ作戦というのは一体・・・」

「そうだゲコ 話せるうちに重要な事を伝えるゲコ」

(重要な事?)

「ゲコゲコ 本物の姫じゃないけれど 実はちょっと気に入ったゲコ 勇敢なあなたの姿に惚れました ゲコ」

(はぁ 今更重要な話などあるはずないとは思ったが・・・)

「私に言っているの? 他の人もいるのになぜ私? あなたは緑色だからボリスの方が似合う」

「レイ・・・わけの分からない事を言うのはやめてくれ・・・」

「私はロマンチストなのだ 私の愛を受け取ってくれるだろうゲコ? 幸せなお嬢さんにしてやろうゲココ」

「あなた 男?」

「王子だと言ったじゃないか まったく突拍子もないお嬢さんだなゲコ」

「ふーん・・・・」

「お・・おい レイまさか悩んでいるんじゃないだろうな?」

「ボリス様 種族が何にせよ気持ちの問題だと思います 他人の恋愛に関与する程 社交的な方だと思いませんでしたよ」

「それ以前にこれは常識の問題だと思うが」

「答えてくれ 私はこう見えても繊細な王子ゲコ」

「うーん・・・ だめ 男と付き合うのは20歳からだとねえさんが言ってた」

「そうかゲコ シビアなお嬢さんですねゲコ また気持ちが変わったら連絡してね ゲコ」

「もう! カエルのプロポーズを聞いてる時間はないからもう帰りましょ! もし叔母さまに知れたら大変だわ」

「もう知られているとは思いますが ・・・しかし伯爵夫人は大切な姪をそう叱り付けたりはしないでしょう」
(結婚という名の取引のために用意した とても大切な商品だから・・・)

「まぁ叱られても関係ないわ ルシンダ叔母さまに会ったのも今回が初めてだし・・・とにかく帰りましょ そこのカエルもいつか本物のお姫様に会えるといいわね」

「お嬢さんもきっと運命的な王子様に出会えるはずさ まだ若いんだ 時間はたっぷりあるだろうゲコゲコ」

「・・・・ ・・・そうね」

(怒り出すかと思ったが・・・冷静だな)

「そう・・・時間だけならうんざりするくらいたっぷり残っているから だから夢の中ででもまた会えるわよね とても素敵な王子様に・・・」

「・・・・」

「さあ 行きましょう ミル様」

「わかりました それでは王城までお供致しましょう」








-ケルティカ王城 城門前-


「さあ 着いた ・・・ご苦労だったわね これは約束した報酬よ」

「随分と多い様ですが・・・」

「もう おしまい?」

「そうよ 気にしないで 貴婦人の遊びはこれで終わり 遊びは一度で十分 夢も一回見るからいいのよ・・・きっと・・・そう 何度も見ると欲が出るから これで遠足は終わったの」

「・・・・」

「これ 持って行って」

「これは・・・あの時池から出てきた宝玉? どうして私に?」

「別に 私のじゃないもの 持ち主 誰もいないから」

「ええ それはネリシア様が持っていって下さい」

「本当に貰っていいの?」

「誰かの許可を得る必要はないでしょう それに そのアイテムはこの旅の過程で得た物ですからお嬢様のものですよ」


(どうせただの置物だしな 必要ないだろう)
(きれいで高そうだが置く場所も無いし かといって持ち歩くには邪魔なだけだ)
(欲しそうにしてる・・・)


「そ・・そんなに言うのなら・・・く・・くれるって言うのなら貰っておくわ じゃ じゃあこれで失礼するわ みんなご苦労だったわね」

「それではネリシア様 またどこかでお会いしましょう・・・」


ネリシアは大事そうに球体を抱え 王城の方へ帰っていった


「もう終わり? 帰る?」

「ここにこれ以上いる理由はありませんね 戻りましょうか」

「わかった 帰る」








-ケルティカ 広場-


ランジエは広場で急に立ち止まると ナヤトレイに問いかけた

「レイ様」

「なに?」

「噂によると 苗族の引導者が持っているアーティファクトは審判者を見つけ出す力を持っているそうですね」

「・・・? 何の話?」

「・・・・レイについて何か知っているのか?」

「アーティファクトの主人が審判者ということならば ・・・それ 私に反応しませんか?」

「あなた 持っている? ・・・アーティファクト」

「はい」
(たぶん・・・)

「どうしてお前がアーティファクトを持っているんだ?」

「どうしたと聞かれると答えにくいですね とりあえず押し売りされたと言っておきます 権利を持っているのは私ひとりだけだから 私が貰わないと困ると・・・」

「自分がアーティファクトの主人だということを ずいぶん遠回りに言うんだな」

「・・・」

(以前フォンティナ家に行った時に確認してみればよかったな 惜しい事をした あの本のページがエタと関係していて エタがいわゆるアーティファクトの主人に反応するものならば・・・レイ様のアーティファクトは主人を見つけ出す事に役立ちそうだ・・・まぁあの塔で見た幻想のおかげで顔は分かっているが・・・)

「そんなに見つめても これはあげない」

「あ 申し訳ありません 大切な物でしょうから くれなどとご無理を申し上げるつもりはありません」

「知りたい事がいっぱいって目で見ていたくせに」

「あはは 疑問を持っていることと所有欲はまた別の問題ですから」

「そんなのは分からない あなた もっと何か知ってる?」

「・・・・」

「答える気が無いなら 私はもう頼まない もう行く」



ナヤトレイは身を返しアジトの方へと消えていった


「・・・君が返事に困るのは初めてみたよ」


そう言って ボリスも続けて去って行った





「うーん 返事につまるというより 何と答えるべきか分からなかったんだが・・ ふぅ とにかく一度戻ろうか」









-ドメリン・カルツ私邸-



「そうです 既に聞いておられるとおり誓約書は私が持っています オルランヌ爵位継承者であるシャルロット様の誓約書です しかしどうせ一方の誓約書がカリーム・リハーンある限り これ自体に価値はありません」

「ふむ・・・商人の価値が無いという言葉は信じられません」

「お二人がそう思うのは無理もないですが・・・しかし今はもっと面白い情報があるんですよ 聞いてみませんか?」

「面白い情報?」

「はい 今度ハイアカンで開かれるシルバースカルについての話です 誰でも出場出来るということはお二人ともご存知ですよね? シャドウ&アッシュからの情報ですが どうもその大会にオルランヌの公女が出場するらしいのです これはまたとないチャンスだと思いませんか? 本当に公女様が出場されるのでしたら これは自身が自分の支持者たちを呼び集めようというはかりごとかもしれないでしょう?」

「そういうことなら幸いなのですが 私が知っている限り・・・無謀な行動をする方ではありません」

「おそらくこの情報をクラレット公爵もご存知ならば 何かしら行動するに違いありません あの方を追う為にシャドウ&アッシュと取引したこともあるくらいですから」

「とにかく今は何もわかりませんね 確認の為にもハイアカンへ行ってみるしかなさそうです」

「・・・・敵の狙いが何を確認する為に・・・か?」

「ああ そしてシャドウ&アッシュからそんな話が漏れたということも気になるしな お前の言うとおりクラレット公爵はシャドウ&アッシュと取引したことがある つまり情報は公爵にも通じている可能性が高いということだ」

「カルツ商団の情報力が高いのか それとも意図的に流した情報なのかは気になるな 意図があるとすれば理由があるはずだ」

「どうですか? お二人が宜しければ 私はあなた方と取引をしたいのですがね 本物の公女様と明らかになったら 公女様を助ける経済的な力を私が提供するという条件で ですが」

「・・・・」

「それはアノマラド王室の意向でもありますか?」

「ハッハッ さぁ・・・どうでしょうか? 商人にとって国籍はあまり大きな問題ではありません 我々が追い求めるのは正当な利益のみです 勿論私は自分の持っている駒を全てお見せするつもりはありませんが・・・」

「おしゃるとおり私達には力が必要です しかし決断を下すのは姫様 私達が承諾できる問題ではありません ただしシルバースカルで姫様に再会できたら そして姫様があなたの力を必要としたら 私達は当然それに従います」

「いいでしょう・・・それでは出発しましょう 祭りが催されるハイアカンへ・・・」








-ケルティカ 地下アジト-



アジトへ戻るとメイリオナが落ち着かない様子でランジエの帰りを待っていた


「あ 助言者君・・・あの 怒らないで聞いて」

「はい? どうかされましたかメイリオナ様 何かあるようですね」

「何か・・っていうか・・・大事件っていうか・・・ 定義を下す瞬間に言語の脅迫に捕らわれそうで発話不可能な不安っていうか 原初的な・・・」

「?」

「これ・・・手紙を受け取ったんだ ・・・どうすればいいかな? ねえ?」

「手紙?」

「どうすればいいの~助言者君~! こんなにまで不安な気持ちは初めてだよ!前提を完全に間違えたまま実験しちゃった時でさえ ここまで息苦しくなかったのに!」

「落ち着いてください メイリオナ様 拝見しましょう・・・その手紙を」



「・・・・ ・・・ふむ」


(こちらの誰かに会いたい・・か 予想外に大胆な方だな)

(でもこの方の言うとおりだ 私もこの方の情報が必要で・・・そしてこの方の提案を私達が拒否する余裕も理由も無い)

(・・・どうにかこれを利用する方法もありそうだけど・・いや 複数の敵を相手するにはそうするしかない・・・)




「じょ・・・助言者君 ど・・どう?」

「幸いメイリオナ様がそれほど心配する程の事ではないようです 私に任せてください」

「で・・でも 何か 私の科学者としての勘が この仕事は危険! って叫んでいるっていうか・・・責任感を感じるっていうか・・」

「あ やっと責任感を自覚されたのですか? それは大変いいことですね」

「それは・・そうなんだけど・・・」

「お二人はメイリオナ様の相手をしていて下さい」

「うん・・」

「どこか 行くの?」

「ええ お二人はここでお待ち下さい」


(よし 順番通りに進めよう まずはあの宿屋に行こう 一度会っておけばこの手紙の主にも話せるだろうしな ちょっと賭けではあるけどどうかな・・・計算通りに進むといいけど)

「私は助言者君を信じているけど それでも今回の仕事は・・・ いくら私でも考えたくない名前が混じってたというか すごく気になる事があれこれ思い出されるっていうか・・・」

「ご心配なく ・・・それでは行ってきます」

ギルデンスターンがアジトへ入ってきたが 目を合わす事もなくランジエは外へと向かった

「ん? また何の騒ぎだ? 騒々しいな」

「見てのとおりですよ ギル あとは頼みます」

「おいおい 最近はすれ違いが多いな」







-ケルティカ広場 外れ-




「誰だ?!」

「こんなに早く見つかるとは思いませんでした やはり真紅の死神と呼ばれるだけのことはありますね シベリン・ウー様」

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「お おい! あいつ確か幻想の中で見た奴じゃないか?」

「ああ 確か教授って呼ばれていた」

「急にお伺いして申し訳ありません ですが皆様 初対面ではないでしょう? ああ 現実では初対面になりますか?」

「現実か・・・幻想を共有したのはオレ達だけではなかったようだな」

「こんな辺鄙な場所でご挨拶をする事になってしまい申し訳ありません あまりにも忙しいご様子なので ちゃんとした場所を設けられませんでした」

「・・・挨拶はそれぐらいにしましょう 単刀直入に聞きますが オレ達に会いにきた理由は何ですか? オレの名前もどうして・・?」

シベリンは不思議そうな表情で話しを続ける

「シャドウ&アッシュがあなた達を捜しているというのはご存知ですか?」

「ああ あいつらいきなり襲ってきやがったな」

ミラは両腕を腰に置き 溜息混じりに答えた

「・・・既に挨拶を交わされたのですか 随分と乱暴な方々ですね」
(あれ程 私にまかせて欲しいと言ったのに・・・本当に言葉が通じない人達だ シャドウ&アッシュ・・・)

「ところで何だ? あんたもシャドウ&アッシュの回し者か?」

「当たりでも外れでもないと言っておきましょう 私は単なる情報提供者に過ぎませんから」

「情報提供者?」

「ええ 必要な者に必要な情報を与え それに相応する報酬を受け取っているだけです」

「報酬か・・・金ではなさそうだな」

「ほー じゃあ どんな情報なのか聞かせてもらいたいね」

「シャドウ&アッシュではシベリン様に ある方を連れてくるようにお願いをする計画のようです 間もなく開かれるシルバースカル 失踪した大公継承者 そんな情報です」

「失踪した大公継承者?! まさか・・・」

マキシミンは小さく驚いた

「どうです? 興味はありますか?」

「オレ達にこんな話をする理由は何ですか?」

「さあ・・・とりあえずは投資とでも言っておきましょうか 皆さんに私を信じて頂ける事を期待していますよ」

「皆さん? シベリンさんではなくて・・・?」

ジョシュアは言葉の節に疑問を持つ

「どうですか? 私を信じて一緒にシャドウ&アッシュの依頼を受けるつもりはありませんか? 受けて下されば 向こうには今後無礼な挨拶などが無いよう取り計らいましょう」

「・・・・」

「今の状況では答えにくいようですね しばらくは考える時間を差し上げましょう」

(もう少し 強く出た方がいいかな? こちらが情報を掴んでいると分かれば 協力を得るのが簡単になるかもしれないが・・・)

「・・・・」

「それでは失礼致します またどこかでお会いしましょう どうか 楽しい夜になりますように」

ランジエは自身に満ちた表情でこの場を後にした




(よし・・・伝えるべき事は終わった 次はシャドウ&アッシュの方々に話をしておいた方がいいな)







-シャドウ&アッシュ ケルティカ臨時支部-




「王室が? 本当にアノマラド王室はオルランヌ公女がシルバースカルに出場するという情報を掴んでいるのか?」

「はい フォンティナ家が把握していると言う事は 王室も既に知っている可能性が高いですね」

(これからフォンティナ家のお嬢様に会って情報を伝えるつもりだから まぁ間違いではないな)

「それは重要な情報だな 調べてくれてありがとう」

「ルベリエ様 その話が真実であると保証できますか? ・・・疑っている訳ではありませんが 何事もはっきりさせておいたほうが良いでしょう」

「どうでしょうか 王室やフォンティナ家から無理やり誰かを連れてきて証明するわけにも行きませんからね 近いうちにシルバースカルが開かれれば全てが明らかになりますよ 信じて頂けなくても私にはどうしようもありません 私はただの近衛兵の末端に過ぎませんから・・」

「いやいや 不快だったのなら謝ろう どうにも信じがたい話なのでな」

「いえ・・・それでは私は失礼します ではまた・・・」


(さて・・・こっちもそれなりに出来る事はしたはずだ・・ それでは高貴な淑女に会いに行こうか)





「状況が複雑になってきたな まあ アノマラド王室が知ったとしても関係ない 公女が大会に出場して殺される・・・殺した者は犯罪者として処刑され それで全ては解決するのだから」

「しかし本当にシベリン・ウーがギルドの言う通りに素直に仕事を引き受けてくれると思いますか? いや そもそもギルドにやってくるのかも疑問です」

「向こうを信じてみるとしよう 上からの話だと 他の暗殺者も用意するつもりらしいからな」











-歌う森-


木陰からは表情を読み取れないが 漂う気品は周りの空気を変えた

ランジエが到着すると 木陰の女性は声を掛けた

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「・・・まあ 偉くなられたようですわね 淑女を待たせるだなんて」

「失礼しました」
(また道に迷ってしまった・・・はあ・・)

「貴重なお時間を割いてわたくしの家のパーティーにお越しくださったお客様ですのに 美味しいお茶やお菓子も無いこんな所へ呼び出して 本当にごめんなさい」

「こちらこそ街外れまでお呼び立てしてしまって申し訳ありません」

「わたくしが改めて自己紹介する必要はありませんわよね? でも あなたの紹介はして頂けませんか? きっとあの時のお名前は本当の名前ではないのでしょうから」

「名前など便宜的なものに過ぎないと思いますが あなたに堂々と名乗れるほどの名前ではありません」

「それを決めるのはわたくしです ・・・ですが気が向かない相手から無理やり聞きだしたとしても その真偽を判断することは出来ません」

「お嬢様に真偽の定かでは無い名前を申し上げるのもある意味無礼ではありませんか? まるで恋人のようではありませんか」

「口では勝てないようですわね 憎たらしいわ まぁ良いでしょう わたくしの好きなように呼ばせて頂くわ 何と呼んでも あなたは答える自身があるようだから」

「お好きなように・・・ それよりも 今日は私たちからの謝罪を受ける為にこんな所までおいでになったんですよね? 私の友人が不安がっているのですが・・・貴方ほど身分の高い方が私どものようなしがない者のいたずらをこんなに気になさるとは思いませんでした ご心配をお掛けしたのならお詫びいたします」

「しがないいたずら・・・というには気が利きすぎていて どんな方なのかお会いしたかったのですわ それに・・・」

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「わたくしに会う事はあなたにとっても損ではないでしょう? あなたにとっても あなたの友達にとっても わたくしは王国で一番価値のある情報元のはずですもの」

「・・・」

「短い会話の中でわたくしが感じた事ですので 傲慢だと思われたのなら忘れてください」

「いえ おっしゃる通りでしょう 少なくともこの王国でお嬢様を傲慢と言える者などいませんよ 私の友人の過ちを忘れて頂く代わりに 私が情報を差し上げましょう どうでしょう? ひとときの余興として聞いてみますか?」

「もちろんですわ わたくしは誰かを罰するためではなく 取引をする為にここに来たのですから王室の魔石を盗んでまで どれほど大層な実験をしていたのかは知りたい所ですが・・ それとも もっと面白い話を教えて下さるのかしら?」

「オルランヌ公女の誓約書についてはご存知でしょう?」

「もちろんですわ」

(動揺もせずに答えたか・・・ 簡単に情報を与えるつもりはないみたいだ なかな相手をするのは難しい・・・仕方ない 探り合いはやめてとっておきのカードを使うしかないな)


「・・・それならオルランヌ公女が今どこにいらっしゃるかもご存知ですよね?」

「・・・? 失踪したという公女がどこにいるのか それをご存知なのかしら? 適当なでまかせでごまかすほど 愚かな方ではないと思っていましたけど」

「警戒ばかりしていては取引なんてできませんよ 正確には公女がシルバースカルに出場するという情報です この情報はシャドウ&アッシュでも手に入れている情報ですから オルランヌの誰かも知っている可能性が高いでしょう」

「・・・・おもしろいですわね 本当の公女なら表に出て支持者たちを呼び集めるのが目的でしょうし ニセ者なら・・・一番得をするのは誰かしら オルランヌの公女が白日の下に姿を現し 多くの人々を証人にして一体何をするとお考えなのです?」

「その質問に明確な答えを出せるほど国際情勢に詳しくはありません 申し訳ありませんが」

「・・思ったとおり甘くない人ですわね あなたは ・・・やはり会いに来てよかったわ」

「・・・・」
(不思議な人だ・・・これほど美しい貴族の女性が まっすぐと人の目をみることが出来る人だったとは・・・)

「わたくしたちがお互いに見覚えがあるのは パーティーで会ったからではなく 塔の幻想の中で会ったからでしょう? 特別な宿命を共有していることがどういう意味なのかはよく分かりませんけど・・・ あの幻想の中で会う前から 知りもしないあなたに一度は会いたかったのです わたくしは宿命という言葉が好きだから」

「はい 私もお嬢様にお会いしたいと思っていました 宿命という言葉は好きではありませんが」

「わたくしに会いに来て まるで準備していたかのように情報をくれたのは わたくしに期待するところがあるからでしょう?」

「ええ でも お嬢様の道を決めるのはあくまでお嬢様自身です」

「分かりました その期待に応えるのもおもしろそうですから 喜んで祭りの地をわたくしの行き先に決めましょう それが・・・宿命ならば・・」

「感謝致します」

「次に連絡を差し上げるのはこの王国から抜け出した後になりますわね その時にも楽しい取引が出来る事を心から願っておりますわ」











-歌う森 ケルティカ街 入り口前-

「ボリス様 レイ様 どうしたんですか? こんな所に」

「・・・無事みたい」

「はい?」

「メイリオナさんが心配して こっちに様子を見にいってくれと言われたんだ」

「ああ・・・メイリオナ様にも危険な仕事だという自覚くらいはあるんですね・・・幸いです」

「・・危険な仕事をしたようだな」

「そういうわけではありませんが・・・とにかく心配をお掛けしましたね 申し訳ありません」

「さっき パレザノの岸で お金を渡して情報聞いた」

「カルツ商団の仕事を手伝っていらっしゃる方ですね ギルデンスターンの依頼だったのですか?」

「うん」

「・・・・ ・・・」
「・・・・・・」


(ん・・・・? なんだかひそひそと話すな 一体なんだろうか・・?)


「あなた オルランヌの公女 知ってる?」

「失踪したという大公継承者のことですか? お会いした事はありませんが お名前ぐらいなら知っています」
(あの話か・・・?)

「うん 多分その人だと思う その人 シルバースカルに出場するみたい」

(意外だな・・・カルツ商団も既にその情報を知っているとは いろいろと気になるな・・・)

「それじゃあ 仕事も済んだし伝言も伝えたから帰るぞ」

「帰る? ああ・・・私達のアジトは家でも何でもありませんが 誰が帰ってきても喜んで迎えますからね」

「一緒に帰る?」

「いえ まだ別の仕事がありますので」

「わかった」




(ふむ・・・結局 さっきひそひそ話していたのはなんだったんだろう まあいい 今はそんなことまでいちいち悩んでいる余裕もないから)

(・・・シベリン様にまた会いに行ってみようか・・・そろそろ気持ちが固まっていればいいけど・・・情報が足りない状況でどこまで私の考え通りに動いてくれるか・・・)








-ケルティカ 王城付近の宿-



「・・・誰もいない・・・ 部屋は散らかっているし かなり慌てて出かけたのだろうか・・・?」

4cp32.jpg


「助言者君! やっぱりここにいたんだね~!」

「え・・あの メイリオナ様? どうしてこちらへ?」

「たった今 知らせを聞いて飛んで来たんだよ! ディルウィンもかなりびっくりしたみたいだったよ」

「・・・はい?」

「何?知らん振りしてとぼけるつもり? ギルの前ではやめてよね あいつ一人で勝手にかんしゃくを起こすんだから!」

「・・・? メイリオナ様のお話はつまり この宿屋にいらっしゃった方々の行方と関係があるのですか?」

「あったりまえじゃん! でなければ一体何だと思ってたの? このメイ様もびっくりしたわよ!」

「不法に流出した魔石を取引している・・っていう疑惑でシャドウ&アッシュのナルビク支部に捜索命令が出たんだって! その為に王城ワープの使用許可も出たから 今は大変な騒ぎになっているらしいよ」

「は・・はい? ナ・・ナルビク?!」

「うん! 単なる疑惑で終わったとしても 騒ぎはしばらく続くだろうから すごくうるさい事になるだろうってディルウィンが 資料とかリストとか・・・整理する物が山のように増えたってブツブツ言ってたよ ウフフ でも私達にとってはよかったよね? でしょ?」

「ええ・・・・そうですね」

「ね? よかったよね! シャドウ&アッシュに疑いが掛かって そっちに気に取られるなら私達は安泰ってことじゃん!」

「でも調査が進んだなら 私達も巻き込まれないという保障はありません シャドウ&アッシュは色々と不法な事をやらかしたようですが 少なからず魔石は盗んでいませんからね・・・ ああ そんなに不安な顔をしないで下さい あくまで推測です」

「そ・・・そんな顔してたかな・・ でも私 あのフォンティナ家のお嬢さんとはもう会いたくないんだ」

「あはは 美しい方だったけどそんなに恐かったんですか? コツを学ばなければなりませんね 私も他人に少しは恐がられるような人になりたいですから」

「助言者君は十分に恐いから・・・これ以上恐くならなくてもいいよ とにかくこれからは気を付ける 王城に出入りする時はね」

「はい 当分は慎重を重ねて大人しくしていたほうが良いでしょう」

「でもさ 本当に助言者君がした事なの? そのお嬢さんと会って直談判したんでしょ?疑いがあっちの方へ行くようにしてくれって! ウフフッ とにかくそのお嬢さんって思ったより約束をキチンと守る人だったんだね」

(お嬢さん・・? いや こんなに早く対応するとは思えないけど・・・おかしい お嬢さんではないとすると誰が・・・?)

「ウフフッ こんなに順調に行くなんてよかったな~!」

(・・・ ・・・魔石を流出させた者を見つけたと言うのでもなく 魔石を取引しているらしいという疑いだなんて 告発の仕方が賢すぎる・・・この程度の告発で王室が動くとは・・・おかしな事が多すぎる)

「助言者君? どうしたの?」

「・・・いえ なんでもありません それでは私は先に失礼致します」

「え? うん・・・分かった じゃあね」









-城門前 通路-





「・・・お待ちしておりました オレもあまり時間がなくて 今出ようとしたいたところなんですよ」

「・・・!」

「驚いたみたいですね シベリンさんに会いに来た時には 世の中の全てを知っているみたいに自信満々な表情しか見られませんでしたが」

「・・・何の用でしょうか」

「あなたには情報が足りなかったようですね」

「情報?」

「確かに 全てのことを知っている人なんていませんから でもあなたの目的はシベリンさんがシルバースカルに行く事だったはずですね 多分それはあなたの思い通りになるでしょう だからあまりがっかりしないで下さい」

「あなたは 何者です・・・?」


「あなたもオレも顔だけはもう知っていますね あの幻想の塔の中であなたの顔を見たんですよ 記憶が悪い方ではないから確かだと思います 多分」

「・・・・」

「オレも全てが分かってるわけではないんです でも 幻想の中で出会った大勢の人達・・・その全員が同じ目的を持っていて 同じ方向に動く事が出来ると思えなくて・・・」

「・・・王室を動かしたのはあなたですか?」

「さあ どうでしょうか とにかくシベリンさんを動かしたのは結果的にあなたです それだけははっきりと言えるでしょう それでオレも少し困っているんです シベリンさんが怪我をさせないようにするには この辺で手を打っておいた方がいいんじゃないかって」

(怪我をさせないため? 誰が・・・誰に・・なぜ?)

「オレも知りたいんです たぶん教えてくれないと思うけど 一応聞かせてください・・・ 君は何者だ? オレは塔の幻想なんかに興味はないんだ」

「・・・・」

4cp33.jpg


「でも 君が全てを完璧に知っているわけでもないくせに 勝手に動いて状況を混乱させるならオレも対抗するしかない だから今度会った時にはオレが君に礼儀正しく挨拶が出来るようにしてくれ」

「なるほど・・・ どうせ信じられない名前でしょうから 紹介は今度にしましょう その時までお元気で」


静かに だが強く言葉を発し ジョシュアはその場を後にした



(・・・これが勝負ならば 私の完璧な敗北だろう 情報が足りない状態で虚勢を張っても通じないらしい・・・)

(しかしあの人は何者だ・・・幻想の中で顔を見たという事はアーティファクトを持っている人の一人という事は確かだが・・・王室を動かしたのは本当にあの人なのか?)

(だとしたら一体どうやって? ・・・どうしてシベリン様のために? あるいは他に何か理由があってのことか・・・?)



















-ケルティカ 王城-

「いい? 分かったわね 荷物はそれまでに運んでおいて頂戴」

「はい 伯爵夫人」


「・・・はぁ はぁ・・申し訳ありません 遅れてしまって・・」

「何をぐずぐずしているの?お前がまた勝手に飛び出したのかと思って人を遣わすところだったわ」

「すみません・・少し熱が出て・・・風邪を引いたみたいです」

「あら ネリシアお嬢様 お帰りになられるのですか? 羨ましいわ~ すぐご結婚の準備に行かれるそうですね 伯爵夫人が素敵なドレスを用意して下さったと聞きましたわ!」

「いちち報告する義務でもあるわけ?召使のくせに生意気よ 気分が悪いわ 堂々と貴族と目を合わすなんて 礼儀のかけらもないったら!」

「あ・・・あたしはただ・・ 申し訳ありません」

「ネリシア まったく婚約者の元に行くのになんて態度なの 慎ましく振る舞いなさい いいわね? この結婚がうまくいけばお前の兄さんにとっても良い事なんだから 家の事も考えて十分に気を付けなさい」

「・・・よく分かっています 叔母さま」

「結婚をしたら領地を離れる事は無いだろうから ケルティカ見物でもと呼んだけれど・・・余計な事をしたかしら 子供におかしな遊びを教えてしまったのではないか心配だわ・・・」

「・・・・」

「馬車に乗ったらすぐに全部忘れなさい 何を考えようと何を夢見ようと お前が一生フェラーラの地のために生きていくことを忘れてはいけないわ」

「はい・・・叔母さま」


「さあ それでは出発して頂戴」

「はい 伯爵夫人 ではネリシア様 出発致します」

「・・・・ええ」

馬車はゆっくりと進み出し ケルティカ王城を離れて行った










もう二度と見知らぬ人達と一緒に道を歩いて旅行することもないと思う

これから一生フェラーラのネリシア 婚約者の妻 貴婦人として生きて行かなければならない

これまで生きてきたよりずっと 長い時間をじっと耐えて生きて行かなければならない

わかってたわ 私は貴族の娘 全てを捨ててもいいと思う愛などは無い

世の中の全てを相手にして戦うほどの愛など ・・・・・あるはずがない

ああ 泡になっても平気 声を失っても 体を失っても

二度と二本足で歩けなくなっても これ以上悲しくないわ

心は渡せないから

楽しかったから

楽しかったから・・・だから平気

永遠に愛されない人魚姫だとしても これだけは私の思い出に残っているから

これから全てが自由にならなくとも

私だけの





この心は 私だけのものだから




4cp34.jpg
















いつも夢見ていた 本の中ではいつも続いていた 

時々思い出してみて あの頃の夢を 時々歌って見て あの頃の詩を 

少女は大人に変わり 物語は現実へと変わる 

でも わたしと あなたの物語は


いつも 心の中の 


メルヘン




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