ランジェ日記 + !

ローゼンバーグで活動するランジエの日記  公式イラスト400枚以上収蔵 プチ情報や検証 ランジエチャプターを小説風に公開など 様々なコンテンツにも取り組んでおります

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EP2 チャプター5 夏の夜の夢

Chapter5 Day-Dreaming 夏の夜の夢


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広場ではカラスを中心にいつもの談義が行われていた 桃色の髪を指で弄り カラスが興奮した様子で言葉を放った

「ああ いよいよシルバースカルが開催されるんだわ!」

「え? カラスお姉さまもシルバースカルが気になるんですか? 少し意外」

リアナは不思議そうな顔でカラスを見る

「なんなの アタシも国際情勢には関心を持っているというのに! しかもシルバースカルは ハンサムな貴族がたくさん来るのでも有名なのよ」

それを聞いたリアナとウォルポールは 溜息をつき答えた

「そんなことだろうとおもった」

フルヴィオは襟を撫でながら調子よく笑う

「最近シルバースカルの話で持ちきりですね 優勝すれば 女王直属の守護騎士になれるといいますしね」

「ほぉ それは聞き捨てならねえなぁ」

ルイスはフルヴィオの言葉に興味を示し話しを割った

「優勝すれば将来が約束されるのか? 腕に覚えのある傭兵がわんさか押し寄せるんじゃねぇか」

「実力だけで決着がつくのだから ずっと正当かも知れませんね」

「そんなのわからないわ 名前が知られている騎士や貴族の子息は 予選をパス出来るという話もあるんだから」

リアナは両手を広げ 呆れた様子で答えるが ウォルポールは目を輝かせてリアナに寄った

「でもさ 本選は実力だけで決着をつけるんじゃないか 実力があれば・・・身分にかかわらず進出できるし・・」

「騎士か・・・おれも出場してみるか?」

「やめときなさいよ 兵士一人を相手に出来ないあなたが優勝だなんて」

「なんだと?」

ルイスは眉を吊らせカラスを睨むが カラスは特に気にした様子も無く鼻で笑う

「ハハハ・・・冗談ですよルイス君 カラスはベケットさんが心配するのではないかと思って心配して言ってるんです そうだろ カラス?」

「必ずしもそうではないんだけど フルヴィオがそう言うのならそうしておくわ」

宥めるようなフルヴィオの言葉にカラスは従い ルイスもそれ以上は何も言わなかった

いつもと変わらない広場での風景 新しい話題で持ちきりだった

噂は広がり人々は語る 

シルバースカル開催は すぐそこまで近づいていた












王城から出たランジエは 先ほど話した 謎の男の言葉を払拭しようとしていた

塔で見た彼が 突然目の前に現れ警告を行った 

驚異的ではなかったが 大きな事柄をも動かせるような力を感じた

もしかすると昨晩の出来事も彼が行ったのでは無いかと思考を重ねる

(シベリンさんがシルバースカルに行くという事は 私の思い通りになるはずと言っていたが 本当に信じてもいいのだろうか しかし彼を動かしたのは結果的に私だった これはどういう意味だろう・・・)

(メイリオナ様には調査がうまく進まないと言ったが これからはどうなるかは分からない 正式に誰かが調査に乗り出したら私達も危険になる しかしナルビク支部が第一の標的になるなんて・・・)

ランジエは不安に駆り立てられつつも シベリンとの待ち合わせ場所へと向かった 

-クライデン平原 待ち合わせの場所-

「あの人はもう到着しているだろうか・・・」

道中 何度か迷いながらも ランジエは目的の場所へ到着する 赤い髪の彼がそこに座っていた

「お待たせ致しました 昨夜は色々な事があったようですが・・・お元気そうで何よりです」

シベリンが声のする方へ振り向くと ランジエは続けさまに問う

「私のご提案について ご一考頂けましたでしょうか?」

「・・・その前に聞きたいことがあります シルバースカルに公女が出るという知らせは 信じられるのでしょうか?」

「私も立場がはっきりしない状態では 全てを説明する事は出来ません」

シベリンは答えを期待していた訳ではなかったが 怪訝な表情で言葉を続ける

「しかし腑に落ちませんね オレがなんの役に立つのか・・・」

「知りたいことがあるのでしたら 少しの間行動を共にしてみるのはどうでしょうか? 手に入れたいものがあるのなら 冒険をしてみるのもいいでしょう」 

ランジエは周到だった 疑問を持つ事を想定し 共に動くよう事を誘った そしてこの場にいる以上 シベリンがその選択肢に乗るしか無い事も

「決断の為 暫く時間が必要でしょうか?」

「・・・いいえ 今すぐ行きます」

「わかりました では移動しましょう」

ランジエは返答を聞くと 足早に歩き出した

「では まずお見せする物があるので 人の少ない囁きの海岸の入り口まで移動します 」

「はい・・」



-囁きの海岸 入口-


ランジエは転送装置を取り出すと地面に置いた シベリンは不思議そうに装置を眺める

「見せてくれるという物はこれですか? これは・・・一体なんです?」

装置を調整しながら 眺めるシベリンにランジエは答えた

「これは簡易化したワープ装置・・・とでも言いましょうか」

ワープ装置という言葉に シベリンはランケン・メルカルトを思い出していた

「こんなに小さなワープ装置は初めて見ます なかなか手に入らない代物だと思いますが・・・」

「私が作りました」

「器用なんですね 装置を直接作るとは・・・」

ランジエの調整が終わると 装置が薄く光りだした

「よし・・・これで移動出来そうです まずはケルティカへ向かいましょう」

装置を動かすと光が溢れ 急に体が軽くなった 意識が一瞬途切れ 二人は光の中に包まれた



-ケルティカ近郊 歌う森-

シベリンにとっては以前にも体験した現象だった 魔力の流れを辿り移動するランケンと 魔石を用いて移動するランジエの装置には共通点を感じた

ランケンの従姉妹であるメイリオナが装置に関係していたので 共通点があるのは当然の事だったが シベリンがそれを知るのはずっと後になっての事だった

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「少し離れた所に飛んでしまいましたが ここから歩いていくとみんなの国があります」

「みんなの国?」

「はい 志を共にする人々が集まる場所と言っておきましょう ケルティカ市民街にあるカフェの地下に その場所はあります」

そう言うとランジエは街の方へ歩き出した

「・・・失礼な質問かもしれませんが ワープ装置をわざわざ作って使う理由が何かあるんですか? 例えば誰かに追われているとか・・・」

「ただの個人的な趣味ですよ ですが たまにシベリン・ウー様のように 足跡を残したがらない方々を助ける為にも使っています」

「そういえばオレはまだ そちらの名前を聞いていませんでしたよね 既にご存知でしょうが 先に名乗るのが礼儀でしょう・・オレはシベリン・ウーと言います」

「紹介が遅れました ランジエ・ローゼンクランツと申します」

ランジエが笑顔で答えた




-ケルティカ 地下アジト-

扉を開け地下への階段を下ると 中で待っていたボリスとナヤトレイは シベリンの顔を見 驚いた

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「シベリンさん・・!」

「ボリス!・・・それに・・レイ!?」

シベリンが声を掛けるが ナヤトレイは無表情のまま黙っている

「・・・・・・」

ボリスはナヤトレイの方へ向くと優しく伝えた

「レイ こういう時は会えて嬉しいって言えばいいんだよ」

「・・・会えて 嬉しい」

「まさかこんなところで出会うとはな」

「シベリンさん 無事でしたか?」

「色々な事はあったけど どうにか元気でやっていたよ 調べることもあって あちこち歩き回ってたんだ」

「そうでしたか・・・他の人たちも無事ですよね?」

「マキシミンとミラがいつも言い争ってちょっと疲れたけどな・・・食べ物一つでも怒鳴りあうからさ ハハ ・・・二人も元気だったのか?」

「はい 俺たちもどうにか・・・」

再会を喜ぶ三人を ランジエは遠巻きに眺めていた

(みんな知り合いだったのか・・・)


ナヤトレイは不思議そうにボリスに聞いた

「ボリス 私たち元気だったの?」

「まあ・・・あれくらいなら元気に過ごしたって言えるんじゃないか? 紆余曲折もたくさんあったけどな・・・ハハハ・・・」

「紆余曲折?」

ボリスがナヤトレイに対し難しい言葉を使ったので シベリンは目を丸くした

「そう 何か間違えた?」

ナヤトレイは不思議そうにシベリンを見つめる

「ハハハ 何でもないよ」

シベリンは何事もなかったかのように笑った 

ナヤトレイが紆余曲折という言葉を理解したので 雰囲気が少し変わったのだと感じたが 

元気そうだったのでこれで良しと考えた

「あの・・・シベリンさん ルシアンの消息について何か知りませんか?」

「あ・・・ルシアンの話は聞いてないな まだ会えていないのか?」

「はい まだ・・・」

「そうか・・・だがきっとすぐ会えるよ オレたちもこうして会っただろう? そんなに心配する事もないさ ・・・そういえば おまえたちどうしてここに・・・?」

ランジエは 3人がかなり親しい間柄であると判断した

「積もる話があるようですが 残りは移動しながら話したほうがいいでしょう」

「移動?」

「今度は どんな事に俺たちを巻き込むつもりだ」

ボリスはシベリンを連れて来た事に疑問を持ち聞いた

「私は・・・召使ごっこじゃなければ何でもいい」

ナヤトレイは前回の事を思い出し 一歩引く

「召使ごっこ!? レイ ボリス おまえらここへ来て何をしてたんだ?」

シベリンは大きく驚いたが ランジエが言葉を繋ぐ

「召使ごっこではないのでご安心を シベリン様 ナヤトレイ様」

「うん・・・ならいい」

「もうじき始まるシルバースカルに参加する予定です」

「・・・俺は参加について同意した覚えは無いが」

「はい それは分かっています しかしお仲間の考えはちょっと違うようですよ そうですよねシベリンさん」

ボリスは淡々と拒否したが ランジエはシベリンに向かって言った

「オレは参加しなければならない ここに来たのもその為だから・・・聞いたかもしれないが オルランヌの公女が出場するというウワサが流れている だから・・・」

「しかしシベリンさん それも未確認のウワサに過ぎません もうちょっと慎重に考えて見るべきではないでしょうか?」

「私は参加」

ボリスの言葉とは逆に ナヤトレイは賛同する

「今 私がするべき事は それだから」

「レイ・・・お前はランジエさんの言葉を誤解しているようだ みんなが絶対に参加しなければならない事じゃないんだ つまり これは・・・」

「ハイアカンに行けばいい?」

「お・・・おい レイ!」

「その前に会わなければならない人がいます 急ぎではないので 急ぐ必要はないでしょう」

「うん」

一方的に話を進めたナヤトレイに シベリンもボリスも言葉を噤んでしまった

「ボリス様はどうなさいますか?」

「とりあえずは・・・行こう・・・」

少し雰囲気の変わったナヤトレイに シベリンは少し笑うと 返事をする代わりに無言で頷いた

「話が長くなりましたが纏まりましたね では参りましょう」




-歌う森-

四人は歌う森に集合した 

ランジエだけはケルティカの兵装をしていたので ボリスは不審に思い 再び疑いの言葉を掛けるが

大きな兜を身につけたランジエには 暑さと重さでそれどころではなかった

動くたび鎧の鉦が鳴り 慌てて繕うランジエに ボリスは呆れて物を言わなくなっていた

「・・・ふぅ・・・それでは 頼みがあります 今から私はトムソンです」

「と・・トムソン?」

突拍子も無い言葉に シベリンが訝しげに見つめるが お構いなしにランジエは言葉を繋げた

「はい シャドウ&アッシュと接触する為に用意した偽名です」

「それは何のためだ?」

「危険回避のためです」

「回避が必要な程 忌まわしい仕事ってわけか」

「詳しい説明は後です 今から当分はトムソンという名で呼んで下さい」

「トムソン 田舎臭い名前・・・」

ナヤトレイがくすくすと笑う

「ああ分かった 今は移動が最優先だから 後で話そう」




歌う森のさらに奥 いくつかの大きな木を越え 茂みの掻き分けたその先に 小さく広がった場所があった

そこにはシャドウ&アッシュのクァディールと ルベリエの二人がランジエ達の到着を待ち構えていた

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「よく来たな だがまずは謝っておこう 予定通りなら静かに仕事を進めていたのだが 予期せぬ事態が起きたせいで 集合場所を変更するしかなかったんだ」

「その件なら私も聞いています 問題ありません 仕方の無いことですから・・・では時間もないのでお連れした方々を紹介致します」

「ふむ そちら・・・君が真紅の死神か? なるほど その髪の色 どうしてそんな名前が付いたかのか分かるよ」

「思っていたのとはずいぶん違うな? 大柄で荒っぽい男だと思っていたのに かなりハンサムじゃないか」

「トムソンさん こちらの二人は?」

「こちらの二人は支援者です 相当な実力者で 以前にはシャドウ&アッシュの依頼を遂行した経験があります」

「なるほど 万が一の為に人力を揃えておくのも悪くない考えだ」
 
「しかし ずいぶんと幼いな まぁトムソンさんの紹介だというのなら信じても大丈夫だろう」

「ご配慮有難う御座います では本題に入りましょうか」

一方的に進む会話に ナヤトレイは興味がないようで周りをきょろきょろと見回し ボリスは後方で静かに話を聞いていた

「クァディール 周囲を警戒していろ」

「はい」

ルベリエの指示に従い クァディールは素早く移動すると 辺りを注視した

「単刀直入に言おう 今度出場するのは偽者の公女だ シルバースカルには偽者を出し でっちあげの演劇を行う予定だ」

偽者という言葉にランジエを除く3人は驚いた 

特にシベリンは イスピンへの僅かな望みもあったので ただの演劇に付き合う事になったのを知り 大きく肩を落とした

しかしシベリンは そんな単純な事で人々を欺く事は出来ないと考えていた シャドウ&アッシュには何か他の目論見がありそうだと

「そういう訳で この操り人形劇では 偽の対戦相手の役目を引き受ける 時間を長引かせるのが主な目的だ 競技に勝ってもいけないし 負けてもいけない」

「・・・・・・」

「もちろん真紅の死神はシャドウ&アッシュ側に所属 カリーム・ハールーンにそそのかされたというシナリオで進行する 事がうまくいかなくても やつの罪になるから後の事は心配しなくても大丈夫だ」

オルランヌ公国では王権交代を望んでいる 王権交代の最も確実な方法は後継者の排除 

偽者を出して始末するという安易な方法に ボリスとランジエは何か裏があると感じていた

(病床にふせてはいるが 大公はまだ生きている もっともらしい言葉のように聞こえるが 天下のシャドウ&アッシュが損をするような事をする訳がない)

「そういう訳だ きれいに処理してくれる事を信じているよ」

「はい ご心配なく・・・」



ルベリア達が去った後 シベリンは頭を抱え嘆いていた

「王権交代だなんて・・・まだ父親が生きているのに!!」

「シベリンさん 大丈夫ですか」

「あ いや 大丈夫だ・・・ハハ 良い事をしに行くわけでもないのに ニコニコ笑っているのも変だろ?」

「私たちは あの人の言うとおり ハイアカンに行けばいい?」

「その前に 一旦シャドウ&アッシュのケルティカ支部に立ち寄って報告をしなければなりません 今の状態でナルビク支部に行くのは少し危険ですから」

「報告?」

「私達はあくまでも シャドウ&アッシュの依頼を受けた傭兵です 何かあったときに備えて ケルティカ支部にも確認を取っておいた方が安全だと思いますから」

「うん わかった」

「・・・何かあったときか いかにも何かありそうな言い方だな」

「万が一に備えるだけですよ ボリス様」

「二人ともケンカしないで 行こう」

「みんな すまない オレのせいでこんな事になってしまって」

「シベリンのせいじゃない 二人 いつも犬と猫みたいにケンカする」

「そ・・・そうか」





-シャドウ&アッシュ ケルティカ支部-

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「おお~ ついにきましたね ルベリア様とクァディール様から指示を受けて待ってました」

「お待たせしてすみません」

「ほお~ こちらの赤い髪の方が話に聞く真紅の死神? 思ったよりお若いのですね」

シベリンは話を聞いていないように 黙りこんだままだった

「ずいぶん硬い人ですね」

「長旅で少し疲れているようです ご理解下さい」

「なるほど わかります 私たちも一日に何十回と移動するのが仕事ですから ・・・それでは説明についてですが 詳細に話した方が宜しいですか?」

「だいたいの事は先ほど伺いましたので 手短で結構です」

「まぁする事といえば 競技時間を長引かせろ・・・・ それだけですよ」

それだけ・・・ シベリンは引っかかっていた 今の状況で イスピンに会える可能性が一番高いのはシルバースカルだけ 

オルランヌの公女がシルバースカルに参加するというウワサは 子供にまで周知された事実

イスピン本人も このウワサをどこかで聞いているに違いない それならば確認する為 必ず参加をするか 競技を観覧する筈だと

だがもし間違っていたとしたら・・・その時はどうするべきなのか

シベリンは この演劇に参加する事が正しい判断だったのか 悩み苦しんでいた 

「うむ? その表情・・・ ルベリエ様は皆さんの参加は確定だとおっしゃってましたが・・・」

「・・・いえ 参加します 大丈夫です」

シベリンは小さな声で答えた

「そうですか 安心しました ではお話はこれで終わりですね そしてこれが 皆様の偽の名前を書いた偽造身分証となります 有名な方達ばかりのようですので 名前は変えた方がいいですよね」

「はい それは助かります」

「・・・ロベルト・カバリー?」

「ええ その名前でシルバースカルに出場する事になります」

「周到な用意 感謝いたします」

「いえいえ それが私達の仕事ですから それではトムソンさん 仕事が終われば今度一緒に酒でも飲みましょうよ!」

「はい その時は私が直接伺いますね では またその時まで」

ランジエは作り笑顔を浮かべ その場を去った



ランジエ達が立ち去ると シャドウ&アッシュの者達は 先ほどまでの笑顔潰し 話を始めた

「ふぅ それにしても本当にあいつが真紅の死神なのでしょうか?」

「さぁな 私達が知る必要はない ただ上の命令に従っていればいいのさ」

「それにしても まだ若そうなのに大変な事に巻き込まれて 気の毒ですね」

「そうだな いい様に使われて捨てられる 所詮 傭兵なんてそんなものさ・・・」





-ブルーコーラル-

ブルーコーラルはハイアカン南部に位置する 海に囲まれた小さな島の中にあった

風光明媚なこの町は 観光地として開発されとても人気があり 特にハイアカン王国からひいきにされていた

街に入ると 少女王インゲスビッヒが滞在すると言う 王城「ソード・ラ・シャペル」が見える

四方に展開する島々はエルラ群島と呼ばれ 周辺海域には 過去の地震によって沈んだ古代都市の海底遺跡 エルラリウムダンジョンがあると言われている

空は快晴 色とりどりの飾りが施され 見ているだけも楽しい気持ちになる街だった 

巨像広場という意味を持つピアッツァ・コロッサスでは人々が会話を楽しんでいる


-ピアッツァ・コロッサス-

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「マジか? 幽霊が出るって・・・ もし本当ならワクワクするな!」

緑色ペンギンの着ぐるみを着たアルベロは 興奮した様子で話した

「何がワクワクする!よ 幽霊が出るってウワサのせいで みんな夜に外出しようとしないじゃない! 夜の売り上げが落ちて深刻な状況なのよ~!シルバースカルで大もうけしようと思ってるのに・・・」

大きな椰子の葉で扇ぎながら ジゼルは迷惑そうに言った

「おい ジゼル なんでそんなこと心配してんだよ そんなデマがシルバースカルに影響するわけないだろ」

「でも劇場に本当に幽霊が出るのかな? ん? んん?」

おもちゃの鎌を持ったファウスティーノは 仮面を被ったまま喋るが 声が籠もり聞き取り辛かった

「そりゃあ出るとも 夜に古い劇場を訪ねると 舞台の袖から幼い女の子のすすり泣く声が聞こえるらしい!」

「幽霊なんかいるはずないじゃないか 劇場が古いから ギシギシ音がなってそう聞こえるのさ」

青色ペンギンの着ぐるみを着たジョバンニは冷めた様子で答える

「本当の幽霊に決まってるって~!」

「幽霊だろうとなんだろうと 商売の邪魔をするのは許せないわ! もしそんな騒ぎでシルバースカルが中止になんてなったら 幽霊だろうとなんだろうと損害賠償を請求してやるわ!ふん!」




-ブルーコーラル 女王通り ビア・レジーナ-

ブルーコーラルに到着した一行は 街の人の多さに驚いていた

通りの露天では様々な物が売られ 広場にはピエロや大道芸をする者も見えた


「人 多い」

「やっぱり祝祭の都市と言われるだけの事はあるな」

「ははは 陰気なシャドウ&アッシュよりこっちのがいい そういえば レイはこんな大きな祭りは初めてだよな? びっくりしただろ?」

「祭り 前に見た 雪祭り」

「あ そうだな ・・・エルティボの雪祭りを見物した事があったんですよ シベリンさん」

「へぇ そうだったのか あ・・・そういえばランジエさんは?」

「向こうにいる」


(はぁ やっと楽になった 鎧は本当に不必要なほど重い・・・)

「鎧 脱いだの?」

「服装は場所に合わせるべきものですから」

「それよりランジエさん シルバースカル出場手続きはどうなりましたか?」

「予選競技はここで行われる予定です 予選まで時間が少しありますね 遠い道のりで疲れたでしょうから しばらくはお祭りで・・・」

「ん 腹の音? 誰の音だ」

レイはお腹を押さえ 無表情でシベリンを見ていた

「・・・レイ 腹が減ったのか?」

「うん」

「そういえばオレたち 一日中何も食べていないな 何か食べるか?」

「あっちにある雑貨店で食べ物を売っているようですよ」

「じゃあ 祭りの食べ物 食べられる?」

「どうだろうな 何があるかは分からないが とりあえず行って見るか? 大丈夫ですよねランジエさん?」

「あ はい 行って見ましょう シャドウ&アッシュで前払いで貰った分の報酬金もありますからね」

ランジエ達は雑貨店へと向かった 

シベリンも後に続くが 空に逃げた風船を見つけると 足を止めぼうっと眺めていた

「綺麗な街だな・・・」

「ふぅ ランジエさんもお腹がすいてたようだな いつも冷静で大人びて見えるが まだ子供だからな・・・さて オレも行くとす・・」

「きゃぁっ!」
「うわっ!」

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シベリンが歩き出すと 横から少女が飛び出し二人は勢いよくぶつかってしまった

シベリンは膝を着き 少女はおもいきり見事に 後ろへと倒れこんだ 

「・・・イタタ あっ! 大丈夫ですか? お嬢さん!」

「アナベル!人の多い場所で走り回るなと言っただろう!」

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シベリンが駆け寄る前に 連れの男が少女を抱きかかえた

「いったぁーい・・・」

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「あ 申し訳ありません オレが前を見ていなかったので・・・」

「いやいや こいつが勝手に走り回ってたんで・・・」

「違う! アナベル 間違ってないもん! このおじさんが大きいからぶつかったの!」

少女はふくれっ面でシベリンに向かって指をさす 

「本当に申し訳ありません 妹はまだ子供なもんで」

「いいえ ケガもないのでご心配なく」

「そうですか ハハ すみませんでした ほら アナベルも謝らないか」

「ふん!」

「まったく・・・ どうもすみません ではこれで」

「はい お嬢さん 本当にすみません 許してくれますよね?」

「フン! アナベルに話しかけないでよ!」

「こらっ! アナベル! ほらさっさと行くぞ!」

連れの男は 散らばった荷物を慌てて集めると 立ち去っていった

「はあ・・・危なかったな ん・・・しまった! 財布が無い! どこへ・・・」

きょろきょろと辺りを見渡すと 少し離れた場所にシベリンの財布が落ちていた

「ああ・・・よかった 大変な事になるところだったな・・ よし 遅れてしまった 早くみんなを追いかけよう」



-ブルーコーラル ミレンゲット雑貨店 -


「いらっしゃい 役立つ物がたくさんあるから ゆっくり見ていってください」

雑貨店の店主リーチェは 赤毛を靡かせ笑顔で言った

店先には熟した果実や 鮮やかな色の見たことの無い食べ物など 食欲をそそる様な物がたくさん並べられていた

「お腹すいた 食べ物 ある?」

「よくいらっしゃいました 熟したリンゴやおいしいバナナなど お腹を満たす食べ物がいっぱいあります」

「バナナ?」

「お~バナナですか! 本当においしそうですね ひとつください」

シベリンは 並べられた果物を興味深く眺めた

「フフ では一番おいしい物を選んで差し上げますね」

リーチェは房を取ると 人数分のバナナを選び もぎ取ってくれた ナヤトレイは見たことの無い食べ物を 不思議そうにみつめている

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「これは・・・食べ物?」

「レイ? どうして食べない」

「どうやって食べるか分からない」

「レイ バナナは初めて食べるのか? こうやって皮を剥いて 中の部分を食べるんだ」

シベリンの動きを見て ナヤトレイも同様にバナナを剥いた おいしそうに食べ進めた三人だったが ナヤトレイは変なものを見るようにして 動きが止まった

「ねちゃねちゃしてる これ 食べるの?」

(まだ 文明との触れ合いがあまりないのか? ・・・確かに苗族らしい人だな)

「バナナは味と香りがまろやかで人気のある果物だよ 貴族達はバナナスプリットやフランベのようなデザートにして食べるんだ」

「シベリン様のおっしゃる通りです 召し上がってみてください 疲労回復に良い果物ですから」

「うん 食べる」

ナヤトレイは 一口含むと言った

「おいしい」

「ああ 本当に新鮮だ」

四人は満足した様子で食事を続けた

「バナナはブルーコーラル第二の特産物ですからね」

「うん 本当においしい もうちょっと食べようかな?」

「価格が安ければ まだ食べても大丈夫そうです 店主様 バナナの価格はおいくらですか?」

「1本100SEEDです どこに行ったって こんなに安くておいしいバナナは食べれませんよ! さあ もっと召し上がって下さい」

「確かにお安いですね シベリンさん 一応残りの資金を確認しておきましょう」

「あ そうですね 財布は・・・どこだったかな えっと・・・ん? なんだこれ! 全然足り無いじゃないか!?」

シベリンは財布を開いたが バナナが1本買えるか買えないかぐらいの 僅かなお金しか入っていなかった

「わたしたち お金 ない?」

「シベリンさん その財布は 初めて見るようですが・・・」

シベリンは呆然としていたが リーチェは笑顔で聞いた

「お勘定はどうされますか? それとも もう少し召し上がってからにします?」

「私たち お金ない」

「レイ こんなに堂々と言わなくても・・・」

「え・・・本当にお金が・・・ないんですか? 後ろにいらっしゃる紳士たちも?」

「アハハ・・・それが・・・その いろいろあって・・・ 申し訳ありませんが お代の変わりに依頼を遂行するという形ではだめでしょうか?」

「ふぅ・・・仕方ないですね では街の外で取れるココナッツを10個集めてきてください それでお代はチャラにしましょう 悪気はないようなので大目に見ますが 次回はこんな事されたら困りますよ 分かりますね?」

「うん わかった すぐに集めてくる」

「ではすぐに行って参ります」




「さて それじゃあ街の外へ行くとするか そうだレイ 堂々とした姿はかっこよかったが 商人にお金が無いと言うのは失礼だ」

「失礼? なぜ? お金ないから ないと言った それが間違ってる?」

「今回は俺達が間違っていた 品物を買える状況なのか 先に考えてから行動すべきだったんだ」

「そう? まだよく分からない 早く集めにいこう」

「そうだな・・・ 急ぐとするか」



四人は大通りを抜け ブルーコーラルの外へと足を向けた

石畳を越えると 足場は砂へと変わり 両端には海岸と海が見えた

島と言うだけあり 見渡せる限りの場所であったが 連なる群島と 遠くで響くココモンキーの鳴き声からは 広さを感じた

熱帯特有の草木が茂り 太陽からの光が白砂で照り返し 一層に熱を感じる

ココナッツの実が生った木は至る所にあったので 目的の数を集めるのに そう時間は掛からなかった  


-ミレンゲット雑貨店-

「お待たせしました 頼まれた物を持って参りました」

「約束をきちんと守れる人なのね 品物 ・・・確かに受け取ったわ ・・・ところでもうすぐ日が暮れるけど 泊まる所はあるの?」

「いえ それはまだ・・・」

「もし泊まる場所が必要なら 広場にいるジゼルに会って見るといいわ 祭りの期間中は特別で 旅行者達に宿を提供すると言ってたから 気に入ったお客なら無料でサービスするって言ってたらしいけど どれだけ請求されるかは分からないわ」

「そうですか ありがとうございます 一度伺ってみますね」



-ピアッツァ・コロッサス-

「はぁ~あっちぃー なんでこんなに暑いのかしら・・・ ん? あなたは?」

「すみません 実は財布を無くしてしまい 無料で泊まれるところを探しているのですが・・・」

「何?! スリにでもあったの? そんな・・・まさに悲劇だわ・・・よし 分かったわ! じゃあこのジゼル様が ト・ク・ベ・ツに宿を提供して上げるよ! 宿泊費の心配なんてしないでゆっくり休んでね!」

ジゼルは一瞬戸惑ったが すぐに態度を変えた

「宿を提供して下さるんですか? でも・・・」

(なんだか話が簡単に進みすぎだな 有名な観光地だから 国家で提供する施設でもあるのだろうか・・・ とはいえ無料で提供するのは難しいだろうに)

「も~う 冒険者のくせに優柔不断だよ そんなに悩む事ないって 良いチャンスじゃない チャンスは出会ったときに掴まないとね 分かった? じゃあさっさと入って休みなよ!」

「あ・・・あの」

「ほらほら その重い荷物いつまで抱えてるの? 安心してゆっくり休みなよ ハハハ」

半ば強制的に宿に入れられた四人は ジゼルの宿で休む事となった

ランジエとボリスは警戒していたが ナヤトレイは特に気にする事も無く 部屋で寛いでいた

シベリンは財布を眺め どうしてこんな事になったのか考え込んでいる

散々な初日となったが ブルーコーラルの夜はゆっくりと落ちて行った




-翌日 ジゼルの宿泊場- 


「ゆっくり休めたみたいだね ところで今日は何をするつもり? やっぱりお金が無いと何も出来ないでしょ? 本当に財布を失くしちゃったの? どんな財布?」

「小さな箱のような形で 色々な模様が刻まれた財布で・・・」

「箱みたいな? それが財布? 変わった財布ね・・・ それじゃあ君達 人数も多いんだし 手分けして財布を捜してみたら?」

「手分けして捜す?」

「うん そんなに派手な財布なら 広場の人に聞けば意外と簡単に見つかるかもしれないよ もし見つからなかったら またうちで休めばいいし 分かった?」

「はい そうですね 一度捜してみます」

ジゼルの進めるまま 四人は広場へと向かう


四人が広場へ行くのを見送ったジゼルは 独り言を呟いた

「うふふ そんなに珍しい形の財布なら 落し物センターに行けばあるかもしれないわね 確か落とした財布を見つけたら 手数料として10%貰えるんだよね・・・ フフフ」






-女王通り ビア・レジーナ-


女王通りまで行くと 4人は二手に分かれる事にした ボリスとナヤトレイはソード・ラ・シャペルへ ランジエとシベリンは広場から探す事にした

「申し訳ありません ランジエさん オレの不注意で迷惑を掛けてしまって」

「いいえ 誰でも経験する事ですから あまり気にしないで下さい」

「でも・・・ 財布が見つからないというのは不安です 絶対に見つかるという保証も無いし」

(確かにこんな方法で財布が見つかるとは思えないが・・・しかし今は他の方法もない・・・うーん)

「そうだ 落し物センターのような所へ行ってみるのはどうでしょう?」

「落し物センター? うーん そんなものがあるなら ジゼルさんが教えてくれたのでは?」

「一般的には・・・そうですね」

(快く宿を提供し 落し物の対応方法についても教えてはくれたが・・・何か引っかかるな まぁ 最悪のときはギルデンスターンにも連絡が出来るから大丈夫だろう)

二人は広場の中央へと足を進めた

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「ほ~ら ブルーコーラル特製の風船だよ~ おっとっと ちゃんと順番に並んでね」

広場ではアルベロが子供達に風船を配っている

その様子を見ていたシベリンは 子供達の笑顔とイスピンの笑顔が重なった

人形や風船を持っているのが イスピンだったなら・・・ 自分が不甲斐なさが胸に突き刺さる

ランジエも風船を眺めていたが シベリンとは対照的に見ていた

(ランズミは風船を見たことがないはずだ 買ってあげれば喜ぶだろうな・・・あ でもプリンが噛んで割れたりしたら・・・ やっぱり危ない バナナを買ってあげたほうがよさそうだ)

「・・・さん・・・ランジエさん 疲れましたか?」

「え? あ いいえ」

「あの年くらいの女の子たちは風船が大好きみたいですね」

「そうですね」

「オレが一度やってみたかった事のひとつが ああいう風船を1000個ほど集めて 妹にプレゼントしてあげたかったんです 妹は幼かったので 風船と一緒に飛んでいってしまうんじゃないかと 心配もしましたけど」

「それ とても面白そうですね シベリンさんには妹さんがいらっしゃるのですか?」

「ハハ 実の妹ではなく まあ 流れで妹になった・・・ そんな感じで 今は連絡が途絶え生死さえわかりません」

「失礼な質問をしてしまいました 申し訳ありません」

「大丈夫です それより財布を捜しましょう 捜す場所は多く 物は小さいので・・・」

「そうですね 広場を回ってみましたが 特に何もありませんでした 他の場所を捜しててみましょうか」

「じゃあ オレは 向こうの方を捜してみます」

「では私は反対方向を探してみます」


広場から離れ 二人は別々に財布の行方を捜した

日が真上まで昇ると 気温も上がり額には汗が滲む 二人は懸命に捜したが行方は掴めず 一度4人で合流する事を決めた
 

「そっちはどうだった? ・・・そうか 結局みんな徒労に終わったのか」

「ボリスが 町の人たちの財布を 見せてくれって言っちゃダメって」

「・・・レイ 通りすがりの人を捕まえて 財布を見せてくれというのは 強盗がする事だ」

「あくまでも推測ですが 私達の財布がちょっと重そうに見えたので 誰かがすり替えたのだと思います」

「人が多い場所だから 十分可能性はありそうだ」

「ただ盗んで行けば すぐバレるからすり替えた? うーん・・・」

「相当な知能犯の仕業かもしれません お祭りだという事を狙って そういう事を行う者もいるかもしれませんからね」

「申し訳ありません ランジエさん・・・ 済まない ボリス レイ・・・オレのせいで」

「仕方ないですよシベリンさん 財布を失くす事なんてよくあることですから 気にしないで下さい」

「とりあえずは 捜せるところまで捜しましょう 犯人は犯行現場に再び現れたり 被害者の周囲を見張るものときまっています 例えば あたりをきょろきょろと見渡す不審な人には 気をつけなければなりません」

「あんな人?」

ナヤトレイの指差す方向を見ると 店の影から 女性を見つめる怪しい男がいた 

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「一体なんだ あの人は・・・」

「・・・前にいるお嬢さんを狙っているようですね」

「何!? レディ! 危険です!」

シベリンは叫び 慌てて男のいる場所へ向かった 男に詰め寄ると シベリンは怒りを向ける

「背後からこっそりレディを襲おうとするなんて卑怯だぞ! マナーがなってない! 痛い目にあわせてやる!」

「な・・・なんだおまえ・・・」

怪しい男が口を開く前に シベリンの拳が男に命中した



-アンティカジェラテリーア-


「何? こっそりみていただと?」

「それ お祭りの一部?」

「ナヤトレイ様 お祭りに他人を覗き見するような行事があったら大変な事になります」

「・・・チェザーレの意図は純粋だという アマランタ嬢の美しい姿をこの目におさめておくだけという・・・」

「人々はそのような行為を犯罪行為とも言います」

「女性の許可も無くこっそり覗き見るなんて! それが紳士のすることですか!?」

シベリンとランジエは厳しい目でチェーザレを見ていたが 覗かれた本人のアマランタは 特に気にしていない様子だった

「アマランタは~ ファンの心も理解できます~ 美しいものを手に入れたいと言う気持ちは~ 人類の本性でしょう~? いつも見ていてくれるなんて 感動しちゃう~☆ エヘッ」

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間の抜けた返事に 4人は固まった

「・・・密かに楽しんでいたようですね」

「あら~ 違いますよ! もしかしてアマランタのこと 嫌いになっちゃった~? そうなんですか~?」

「はぁ・・・ じゃあこの人は犯人じゃないということか・・・」

「犯人? 何の話かという・・・」

「財布すり替えられた あなたが犯人のように見えた」

「な なんと ・・・チェーザレを変態詐欺師と誤解したのかという!?」

「詐欺師と誤解したというか・・・」

「変態は 合ってる」

「このチェーザレが アマランタ嬢のファンクラブに 泥を塗るような行為をする訳がないという! それに変態だなんて! 美を追求する芸術家に向かって何たる失言! あっちへ行けと言う!」

「アマランタは大丈夫ですよ~ だからまた必ず来てくださいね~! 約束よ~? エヘッ」

アマランタが笑顔で4人を見送る


「無駄な苦労をしてしまったな・・・」

「私たち これからどこへ行けばいい?」

「とりあえずはジゼルさんの家に行くしかないですね」

「ジゼルさんにはちょっと申し訳ないな」

「財布が見つかった時にお礼をすることにして 移動しましょう」

「あぁ 早く行こう 視線が痛いよ・・・」

チェーザレがずっとこちらを睨んでいた





-落とし物センター-

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「うーん まだそんな物を拾ったっていう届出はありませんよ」

「ええ? 本当ですか? もう一度よく捜してみてくださいエンリコさん 小さい箱みたいな財布なんです」

「届けられた物は全部ここにあるんですけどね そのような物はこの中にはなさそうです」

「・・・きっとここにあると思ったのに・・・ むー 困ったな 本当に財布が見つからないとなると 手数料どころか あたしの宿泊費が・・・」

「ジゼルさん どうかされましたか?」

「あ いえ・・・ こっちから届け出る事は出来ないんですか? 似たような物が届いたら連絡をもらえるとか・・・」

「紛失の届出は本人のみが可能なんですよ だから当事者に直接来てもらってはどうです? ジゼルさんを通してより 簡単で確実だと思いますけど」

「そ・・・それは・・・ それだとあたしの手数料が・・・ごにょごにょ・・」

「?」

「・・・分かりました エンリコさんのところへ来るように話しておきますね それから他国に連絡してくれるサービスですけど まだ可能ですよね?」

「連絡ですか? はい 大丈夫ですよ ワープや通信を使っての連絡も可能ですし 必要ならば郵便も発送出来ます」

「よかった~! お財布はなくても家族はいるはず まさか家族まで無一文なはずはないし」

「はい?」

「あ いえ 独り言です アハハ それじゃあ後で来るように言っておきますね ご苦労様です~」





-ジゼル宿泊所-


「財布は見つかった?」

「ええ 色々と捜してはみたのですが」

「これからどうするつもり? 財布も無いし お先真っ暗?」

「たぶん・・・」

「それなら行事管理人のエンリコさんのところへ行ってみたら?」

「行事管理人?」

「うん 祭りの期間中 ブルーコーラルに来た観光客たちの為に案内をしてくれる人のこと 君達みたいに落とし物をした人は届出をしておくことも出来るの 他国にも連絡してくれるんだよ~ 連絡っていうのは便利じゃない? そうしたら家族の人にお金を送ってもらう事も出来るしね」

「でも・・・」

「何してるの? 財布を失くしちゃったんでしょ? 早くエンリコさんのところへ行ってみなよ! 届けをしないと財布は見つからないよ! それとも旅行費が足りなくなっちゃったから送ってくれって連絡する?」

「わかりました 一度エンリコさんのところへ行って見ます」




-ブルーコーラル祭 行事担当所-

「ああ 明るくて活気に満ち溢れたブルーコーラルの祭りにそんな不祥事が! 警備を倍にしていたというのにどうして・・・」

「申し訳ありません オレの不注意です そしてこれはオレたちが拾った財布ですが ここに置いていきますね」

「あ・・・世の中は本当に皮肉としか言い様がありませんね 自分の物ではないと拾った物を届けてくれる人もいるのに・・・はあ」

項垂れるエンリコだったが そこへ 小さな女の子を連れた青年がやってきた

「失礼します 落とし物を届けに来ました」

「おお~ ここにもまた天使たちが! 落とし物はなんでしょう ふむ 財布ですね」

「財布? それ 私たちの財布と同じ色 模様もまったく同じ」

「失礼ですが中身を見ても宜しいでしょうか? 丁度 私達も同じ物を失くしてしまったんです」

「はい 大丈夫ですよ いくらでもどうぞ」

「・・・これは 私達の財布のようです シベリンさん 確認して頂けますか?」

「ああ・・・! その通りです! 金額も失くした時とまったく同じです」

「お~ それはよかったですね」

喜ぶ4人とエンリコを見ていた少女は ふくれっ面で言った

「ふんっ! よかったわね! イサック これからどうするの? アナベルお腹がすいた!」

「とりあえず ここにオイラたちの財布があるか調べて なければクエストショップに行くか ひとまず仕事を探さなくちゃ」

「また働くのぉ~?」

「またって・・・ 誤解されるようなことを・・・ しょうがないだろ アナベルが走り回ったからこうなったんだ 反省するんだな」

「あなた方も財布を落とされたのですか? たった今こちらの方が財布を届けてくれましたが 一度見て見ます?」

「・・・あ! そうだ・・・ あの時広場でぶつかった・・・ お嬢さん オレとぶつかった事 覚えていませんか?」

「あ・・・ 赤い髪!」

「おお そうだ! あの時のあの青年か!」

「ハハ やっぱり じゃあ あの時財布が入れ替わったんですね!」

(見覚えある顔だが・・・ シャドウ&アッシュ・・? いや違う気がする・・・)

「アハハ そうらしい! とにかくお互い財布が見つかってよかった」

(拾った財布に手を付けないなんて意外だな 最近そんな人は珍しいのに・・・それとも何か企んで? だが大して中身は入っていない財布だ やはり純粋な意思でここに来たのか)

「本当によかったですね! 皆さんのような人がいて まだ世の中も捨てたものではありませんね」

「イサック 早く行こうよ~! ね? お財布見つかったから アナベルに風船買って!」

「分かった分かった 財布が見つかって幸いです それではお先に失礼します」

イサックとアナベルは 広場の方へ向かおうと4人を横切った 

ナヤトレイとすれ違った瞬間 胸にしまったアーティファクトが光を放った 

「引導者の目 光った」

(・・・! やっぱりあの男・・・)

「あの男 塔で見た顔だ」

「幻の中で見た」

ボリスとレイが声を揃えた

(どうする 今の状況で彼らをそのまま行かせる訳には行かない これからどんな事が起こるかも分からないから・・・)


ランジエは過ぎ行く二人に声を掛けた

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「すみません そちらも財布事情がよくないようですが どうですか? 私達も余裕があるわけではありませんが・・・ よかったらご一緒に行動しませんか?」

「え・・・そりゃあオイラたちはいいけど・・・厚かましくないかな・・・」

「俺は構わないです」

「私も」

「オレもかわいいお嬢さんと一緒なら いつでも歓迎です」

「わあ! じゃあアナベルとイサック もうおつかいしなくていいの?」

「はい お嬢さんは当分歩き回る必要はないでしょう」

「イサック! 早く答えて! アナベルおつかいしたくないの~! ねっ?」

「おいおいアナベル 誤解される様な事を言うなとさっきも・・・ オイラがお前を連れまわして苦労させているみたいじゃないか」

「だってそうでしょ! アナベルに毎日おつかいさせてさ!」

「あ・・・あはは そ それじゃあ宜しくお願いします ハハ イサック・デュカステルと申します こいつは妹のアナベル」

「アナベルよ」

(向こうは私達が分からないのか 変だな まぁいいか・・・)

「残りの話は徐々に聞く事にしましょう 私の名前はランジエ・ローゼンクランツです こちらの女性はレイ様 髪の赤い男性はシベリン様 残りの方はボリス様です」

「の・・・残り・・・」

「財布も見つかったことだし ジゼルさんにお礼の挨拶に行きましょう すごく世話になったから・・・」

「ジゼルさん? オイラたちもすごく世話になったよ ハハハ」

「では一緒に挨拶に参りましょうか」

「ああ! なんと美しい縁でしょう! 皆さん ブルーコーラルで楽しい時間をお過ごし下さいね!」




-ジゼルの宿泊場-

「え? 管理所にあったの? あたしが行った時はなかったのに?」

「・・・え? 捜しに行ったんですか?」

(やっぱり 本人が直接捜すつもりだったようだな そうじゃなければ はじめにエンリコさんの事を教えてくれたはずだ)

「え・・あ・・・ えっと・・・ 財布が見つかってよかったね~! じゃああたしも宿泊費が貰えるよね? さっ 計算を・・・」

「は? 宿泊費?」

「宿泊費? 招待客はお金 払わない 私たち 招待客だった」

「違う違う! しょうたいきゃく じゃなくて しょだいきゃく! 言葉どおり初代客! 一番目のお客さんって意味ね あたしだって何も慈善事業で宿をやってるわけじゃないの!」

「アナベルは絶対に認めないわよ!」

「とにかく! これまでの食費と宿代 その他費用全て合わせると・・・合計20万SEEDだから! 早く払ってよ」

「警備隊を呼んで! 警備隊!」

「おいおい アナベル落ち着いて・・・」

「純粋な好意ではなかったのですね」

「ほらほら そんなにうるさく言わないでよ」

「これは完全にぼったくり料金じゃないですか?」

(うーむ・・・告訴するか・・・? しかし今になって事を大きくするのは人から注目されるだけ・・・ こちらが得をすることは何一つないだろう)

「みんな落ち着いて・・・ 財布も見つかって野宿をしなくてよかったじゃないか それで十分なんじゃないか? 観光都市だから仕方ないと考えよう な?」

「仕方ないですね イサック様の仰るとおりです」

「ありがとう! きっと幸せになるよ ジゼルの宿はいつでもオープンしてるから いつでも利用してね~!」

「ぶーぶー!」

「シルバースカルがなければ ブルーコーラルには二度と来れないな・・・」

「あ・・・シルバースカル!」

「そろそろ参加申請をしに行かなければなりませんね」

「ふたりは?」

「お二人も もしかしてシルバースカルに参加するんですか?」

「オイラたち?」

「イサック 出る? 面白そうじゃない こんなに人が集まるならきっと面白いことがおこるはず!」

「面白くない 時には 人が死ぬ」

「どうなさいますか? 申し込まなくても 一緒にいれば退屈はしないでしょう」

「アナベルは行く~! 行こう! イサック打たれ強いじゃん ねっ!」

「はあ・・・まぁいいか 一度行って見よう」

「わあ~ 楽しみ!」

「オイラが怪我をしたら アナベルが責任を取ってくれよ」

「怪我しなければいいわ あたしたち 結構強いじゃん!」

「危険だと思いますが 大丈夫ですか?」

「ハハ 大きな問題はないだろう」

「あれ シルバースカルに出るの?」

「うん」

「宿泊費も貰った事だし ちょっと親切になっちゃおうかな 武器屋のチェーザレさんを訪れれば申請出来るわよ 参加申請は毎年武器屋で行ってきたの」

「・・・チェーザレさんですか」

「さっきの あの変態」

「ちょっと困りましたね 犯人扱いをして怒っていると思いますが」

「仕方ないですよ とりあえず行って見ましょう」

4人は武器屋に向かったが イサックは考え事をしたまま その場に佇んでいた

「う・・・ん そう言えばあの人たちの顔 どこかで見たような・・・ 確かに見た覚えはあるのに どこだっけ・・・?」

「・・・? どうしたのイサック 行かないの?」

「あ・・・ああ すまん 行こうか」



-武器店 グラディアトーレ-


「何の用かと言う・・・? チェーザレは 君達のことなど知らないという」

「シルバースカルの申し込みをしようと・・・」

「シルバースカルは誰でも申し込めるものではないという 優勝すればインゲスビッヒ女王に仕えるチャンスが与えられるという・・・どこの馬の骨ともしれない冒険者に与える事はできないという それに君達は 善良な市民を犯人扱いしたという・・・」

「そ・・・それは」

「要点だけ言う 今は忙しくて申請書を出す暇もないという だからすぐに立ち去れという ああ 美しいドンナ・フィオレンザを作るには硫黄の粉の量が足りないという・・・」

(ドンナ・・・? 武器の事だろうか?)

「忙しくてたまらないというのに どうしてそこに突っ立っているという・・・? 邪魔だから用が無ければ早く立ち去るという・・・」

「あの・・・」

「ああ 集中出来ないという・・・ぶつぶつ ドンナ・フィオレンザ・・・胸が痛むという・・・ぶつぶつ」

(硫黄の粉が足りないのか 忙しそうだから持ってきて上げるとするか そうしたら機嫌が治るかも・・・)



ランジエ達は硫黄の粉を求めて バザーや商店で品物を探すことにした 

硫黄の粉は アノマラド南部に位置する紅玉の洞窟から取れる物で この地方で入手するのは難しい物だったが

ランジエは 各地方から祭りの為に行商に来ている商人の中には アノマラド産の品物を販売する者がいるのではないかと考え 街を歩き回り 探す事にした

6人は手分けをして 店の一つ一つを当たる事にした 店の数は多かったが そう時間も経たないうちに 目的の品物を発見し チェーザレの元へ 硫黄の粉を届ける事が出来た

「どうしてまた来たという・・・芸術を理解できない人とは話したくないという・・・」

「これ」

「ドンナ・フィオレンザに必要かと思いまして 武器の為には必要でしょう?」

「おお ドンナ・フィオレンザが武器と知っていたのかという・・・ 人の名前なのにおかしくなかったのかという・・・」

「おかしくないですよ 物に愛称を付けるのは それに対する愛情が深いという意味ですから」

「あなたたち 少し気に入るという・・・さっきはチェーザレがちょっと悪かったという・・・シルバースカルに参加するつもりだったという?」

「うん 参加する人が名前だけ言えばいいの?」

「その前に必要な物がひとつあるという・・・」

「必要な物?」

「そうだという それは古びた建物 そこで夜にだけ現れる商人から シルバースカル予選参加券という物を購入して来ればいいという・・・」

「もうちょっと詳しく説明してくれませんか? 古びた建物とは?」

「だめだという 上からの指示はこれが全てという・・・これ以上聞いてもだめという・・・」

「でも・・・」

「言い訳が多いという・・・こんな簡単な試練も通過できないのに シルバースカル優勝を望むかという?」

「与えられたヒントのみで決められた物を持ってくる 一種のテストのようですね これ以上チェーザレさんに聞いても教えてくれないようです」

「疲れる人」

「しかし チェーザレさんの話だけでは あまりにも漠然としているが・・・」

「古びた建物・・・つまり昔からある建物ですよね?」

「建てられてから随分と経つ建物なら きっと街の人の中に知っている人がいるでしょう 聞いて回ってみましょうか」

「うわぁ~ このお兄さん賢い! アナベル 好きになっちゃった!」

「アナベル・・・」

「ただ状況を見て話をしただけですよ」

「これからアナベルのお兄さんをしてくれないか?」

アナベルは目をきらきら輝かせた

「ハハハッ お嬢さん この人にはもう妹がいるから それは困りますよ オレはどうですか?」

「さっ 早く街の人に歴史のある古びた建物について聞いてみよ!」

アナベルはシベリンを無視すると 通りへ駆け抜けていった

「シベリン かっこ悪い」

「あ・・・本当にすまない 理解してやってくれ」

「ハハッ・・・ ハハ」




-ソード・ラ・シャペル 離宮前広場-


「ねぇねぇ! あそこにいる人が 建物について知ってるみたいだよ!」

「アナベル 聞き込みが早いな・・・」

「いらっしゃ~い! ヘヘヘッ ・・・あれ なんか違う? つい客引きをしてた時の癖が ヘヘヘッ・・・」

「古くて歴史のある建物について知っているそうですが・・・」

「うん 劇場の事なら知ってるよ あそこの公演 本当に面白かったんだよね~!」

「劇場?」

「子供の頃に行ったからあんまり覚えてないんだけど 確かに島のどこかに で~っかい劇場があったよ オオカミと子ぶたが出る演劇でさ~ 題名は思い出せないけど 本当に面白かったぜ へへっ」

(劇場・・・か 古い建物には間違いないみたいだけど・・・ まだ情報が足りない リーチェさんにも一度聞いてみようか・・・)





-雑貨店 ミレンゲット-


「財布 見つかったみたいだね 本当よかったよ スリみたいな悪い人のせいで 楽しい気分を台無しにするわけにはいかないもの ・・・あ その話じゃなかったっけ? アハハ 古い建物についてだったわね?」

「はい 何かご存知な事はありますか?」

「うーん 確かエルラ島の片隅に大きな劇場があった気がする 両親と手を繋いで見に行った事があるの あの時見た演劇は・・・7本の棒・・・だったかな」

「7本の棒?」

「妻を亡くした父親のところに 七人の息子がいたんだけど いつもケンカばかりして ちっとも仲良くしなかったの それで父親は自分がいなくなっても 息子達がずっとケンカを続けるんじゃないかって心配になってね それである日息子達に それぞれ棒を1本ずつ持ってきなさいって言ったのね 訳も分からず息子達が細い木の棒を拾ってお父さんに渡したの そして・・・続きは知ってるよね? 1本の棒は簡単に折れてしまうけど 7本を束ねると一番力持ちの長男でも その棒を折る事が出来なかったっていう話」

(木の棒の話・・・色んな公演をしていたんだな・・・)

「劇場でまた演劇を見られるようになればいいのに・・・ でも もう古くなって劇場で公演は見られないよね・・・」

(ふむ・・・ アマランタ様にも聞いてみようか 何か知ってるかも・・・)


-アイス店 アンティカジェラテリーア-

「うわーん! 劇場の事ですか~? アマランタの事は気にならないんですか~? アマランタについて知りたい事はないんですかぁ~?」

「・・・」

「でもぉ~ アマランタは良い子だから教えてあげます☆ といっても~実はよく知らないんですぅ~ でもでも 有名な劇場があったことは聞いた事があるんですよぉ~ 全盛期にはお客さんもたくさん来てたんだって店長が言ってたも~ん ウフフ」

(そんなに昔の劇場ではお客さんが多かったのか)

「公演のある日は~ お客さんの目がキラキラ光ってたんですって~ でもいつからか公演が減って だんだん来なくなっちゃったんだそうですよ~ 聞いた話ですけど~ アマランタを嫌いになったりしませんよね? そうですよね~?」

「はい お話をして下さり ありがとうございました」

(お客さんが多かったというぐらいだ お客さんの事ならジゼルさんが詳しいかもしれないな 一度聞いてみよう)




-ジゼルの宿泊場-

「何? そんな下らない劇場についてどうして聞いて回ってるの? 公演でもするなら 記念品でも作って売るけど・・・ 今は何も無いじゃない そんな事より ジゼル特製のブルーコーラル記念品でも買って行きなさいよ」

「これ ただの木の枝をくっつけただけみたいですけど・・・」

「何!? これは普通の木の枝じゃないの! ブルーコーラルにだけ生える椰子の木の枝なんだから どんなに珍しいか分かる?! いいから試しに買って行きなさいよ 安くしてあげるから ね?」

「・・・遠慮しておきます」

(あまり役立ちそうな事はないから 他のところへ行ってみるか・・・)



-ピアッツァ・コロッサス-

「古い劇場ですか? はい 行った事ありますよ あの劇場の名前・・・何でしたっけ 夏の・・・なんとかだったと思うんですが・・・ そこでバベルの塔の公演を見ました」

「バベルの塔ですか?」

「はい たくさんの人々が空に辿り着く為 力をあわせて建物を建てるんです でも神の地に足を踏み入れようとする人々に神様は腹を立て 人々の言語を変えてしまうんですよ 結局言葉の通じなくなった人間は 塔を建てる事が出来ず そのまま塔は捨て去られたんです いやぁ あの公演は面白かったなぁ」

「劇場の場所はどの辺りに?」

「街の外に出て エルラ島の海岸を沿って歩けば見つかると思いますよ 草が生い茂って入り口は見つかり難いかもしれませんが・・・」

「海岸沿い・・・」

「ああ・・・つい長話をしてしまったようです そろそろ宜しいですか? 実は勤務中の私語は規定違反なんです」

「もう少しお話を伺いたいのですが・・・」

「ああ すみません 規定があるのでこれ以上は・・・本当にすみません」

「・・・・・」

「あ・・・あの そんな目で見ないで下さい・・・規定なので・・・仕方ないんですよ」

(・・・邪魔をしないで 早く他の場所へ行くか・・・)



-恐怖の家 グリッド-

「わぁっ! ・・・驚いた? ねぇ怖いでしょ? ね? ・・・・・・あ・・・あの 怖いって言って・・・ ね・・・言ってくれよぉ~! え? 劇場? 島の隅っこの?」

「はい 何かご存知の事があれば・・・」

「こ・・・怖くないよ 最近そこで赤い髪の女の子の幽霊が出るらしいけど ボ・・・ボクは怖くなんて無い こわくないってば!」

(赤い髪の幽霊?)

「ゆ 幽霊なんて存在しないんだもん! だ だから ボ ボクは・・・ 幽霊が出る劇場なんて怖くない!」

(古い劇場だから 幽霊が出るというウワサ位は 出回ることもあるだろう 古い劇場があるということは確実みたいだな)

「だから ボクは怖くないって!」

(これ以上は聞いても無駄みたいだな 劇場に行って見よう・・・)




ランジエ達は街を出ると 海岸沿いに島を辿った 

規則正しく波が音を刻む 踏みしめた砂が鳴くと 漣と合わさり音色を奏でる

日差しを浴びたやこう貝が七色の輝きを放ち 誘われたようにやどかりが鋏を差し出していた

しばらく進むと椰子の木の間から 古ぼけた建物が見えた 木々の間の草を掻き分けると 

その奥には 大きな建物が姿を現した

「思ったより大きいな」


-古ぼけた歴史のある劇場-

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「これが劇場?」

「汚くてずいぶん古いが劇場のようだ」

「もう随分と人は出入りしていないようだな・・・」

「・・・ここに何かありますよ」

ランジエは床に落ちた 昔の劇場のチケットを拾った

「真夏の夜の夢で繰り広げられた美しい物語 愛し合っているのに別れなければならなかった 恋人達の悲劇の運命 悲しくも美しい恋物語が皆さんをお待ちしています・・・と書いてありますね」

「劇場の名前が真夏の夜の夢だったようだな」

イサックはチケットから目を離し ふとアナベルを見た 

誰を見るわけでもなく ただ一点を見つめたままアナベルが口を開く

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「人生とは本当に儚いものだわ そうでしょ? 昔はこの劇場も人でいっぱいだったでしょうに」

「・・・アナ・・・ベル?」

落ち着いた口調で喋るアナベルに一同は驚愕した 先ほどまでの あどけない少女の雰囲気は消えている 

アナベルは 淡々と語りだした 

「昔はこの拾い客席に観客がいっぱいいたはずよ 人々は舞台を眺めながら俳優の演技に魅了されていたでしょうね でも俳優達の演技は他人の人生を再演するだけよ 観客達はその偽りに惑わされるだけ 分かる? 俳優達は脚本に書かれた言葉だけを繰り返すの 脚本に書かれたその文は既にあった事を書いたものかしら? それとも作り出した物語かしら? 俳優達が脚本を再演する事で その文が生命力を得る・・・そんな風に考えた事はある? もしかしたら あなた達が捜すエタというものも 他の形の物語かもしれないわ」

(・・・!! エタについて知っているのか!?)

「あなた達が捜しているものは もしかしたらこの劇場と似ているかもしれない 劇場は物語を再演する道具だから」

「どういう事だ アナベルじゃないのか?」

「声も少し違うようですね・・・」

「あなた 誰?」

「その質問に私が答える理由は無いわ」

「あなた・・・私達が知らない何かを知っているようですね?」

「ふふ・・・知りたい? いいわ 私と賭けをしましょう」

「賭け?」

「みんなが直接俳優になってここで公演をして この劇場を満足させたら 私が一つ秘密を教えてあげるわ」

「秘密・・・?」

「そう・・・あなた達が知りたがっている エタに関する秘密」

「しかし どうやって劇場を満足させるんだ? それに劇場を満足させたかなんて どうやったら分かる?」

「出来る事をすればいいの ここは劇場 劇場が満足したら 私が説明してあげなくても あなた達なら分かるはずよ」

「では この劇場で私達が公演をしろと言うことですね」

「その通り 演劇のタイトルは・・・そうね 皆どこかへ進もうとするが上手くいかない にしましょう」


あの時のあなた達がそうだったように・・・ 


「変わったタイトルですね・・・」

「フフ 私 それなりに期待しているわ 良い演劇になるかしら? 次は観客として訪ねるから・・・楽しみにしているわ」


アナベルが語り終えると イサックは体を揺らし大声で名前を呼ぶ

「アナベル!! しっかりしろ! 何を言っているんだ!?」

「ふぇ・・・イサック・・・なんで大声を出しているの? 劇場が暗くて怖いからアナベルにくっついているの?」

「声が元にもどった」

「アナベル・・・本当に覚えてないのか? 今演劇をしろと言ったこと」

「イサック なんでおかしな事ばかり言うの? アナベル怒るよ!」

「イサックさん 嘘をついている様には見えないです 覚えてもないみたいですね」

「では さっきの言葉通り 演劇をしなければならないのでしょうか?」

「ちょっと困ったが やってみるのも悪くは無さそうだ 一方的に始まった賭けとは言っても 負けるのは我慢できない」

「賭け? 誰か賭けをするの?」

「エタに関する秘密を教えてくれると言いました この賭け 勝たなければなりませんね」

「演劇 したことない」

「俺もないよ」

「お二人は 私と一度 何度か演劇をしたじゃないですか フォンティナ公爵のパーティーではシャペロン役を立派に務めてくれました」

「それは・・・」

「それくらいの役なら 出来そう」

「レイ!?」

「役を頂戴 さっきあの子が言った秘密 聞きたい」

「この年で演劇とは ハハハ! 少し緊張するな? 主役の座を狙う訳ではないが オイラは暗記力がいいんだ」

「じゃあ アナベルはお姫様!」

「はは みんなウキウキしてるな レイまでも楽しそうだ じゃあオレはレディー・アナベルの相手役の王子様を引き受けたいですね」

「おじさんは敵国の王子様よ」

「おじさん!?」

「とっても悪い王子よ お姫様をさらおうとするの 服もトゲトゲしてるの」

「では全員参加ということで宜しいですね ボリス様はどうなさいますか?」

「・・・一緒にやるよ それと演劇のシナリオはお前に書いて貰いたい」

「同感! オイラもランジエさんに頼みたいな 文才がありそうだし」

「あ・・・その・・・」

(秘密については私も知りたい 他の人が書くよりかは私が書いた方が気楽だが・・・)

「お願いしますよ ランジエさん!」

「わかりました・・・一度 書いてみます」

「ランジエお兄さん アナベルはきれいなお姫様の役よ 分かった?」

「がんばって」


劇場で演劇をする事になった一行は さっそく準備に取り掛かった 

まずは劇場の掃除を行い その間にランジエは演劇のシナリオを書き始めた

ランジエは皆が寝ている合間も台本を書き綴り 細部の演出や小道具までも考えていた

シナリオが完成する頃には劇場の準備も整い 少しずつ練習やリハーサルも重ねた


そうして いよいよ演劇に挑むこととなる

「では皆様 台本は渡りましたか? ・・・簡単に注意事項を申し上げます 必ず順番を守らなければならないという事を覚えておいて下さい」

ランジエは演劇の注意事項を伝え終えると 全員を配置に付け 観客のいない演劇が始まった



【演題 皆どこかへ進もうとするが上手くいかない】

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「皆さん お越しくださりありがとうございます 私達しかいない劇場ですが 私達はこの劇場の為に演劇をしようと思います まだまだ力不足ですが 誠意を尽くした演劇を どうか広い心でご覧になって下さい」 

ランジエの挨拶が 広い劇場の観客席に響いた

最初に登場したのはイサックだった 真剣な表情で 舞台の中央で芝居を行う

「ウウ・・・我々ももう終わりか・・・いくらこの岩を押し出そうとしても動かない どうすればいんだろう 私は死んでも・・・」

だが開始早々 イサックは言葉に詰まり黙ってしまう 

「・・・・・・アハハ 私の・・ぁ ハハハ! 愛・・・ ハハハ!」

突然笑い出したイサックに 舞台袖で見ていたアナベルは 不思議そうにシベリンに聞いた

「イサック どうして笑うの?」

「台詞を忘れたみたいだぞ どうする!?」

困ったイサックを見たナヤトレイは 一言放ち舞台へと飛び出した

「私が教える」

「レ・・・レイ! 俺たちはまだ出番じゃない!」

慌ててボリスが止めたが 舞台の真ん中ではナヤトレイとイサックが見つめ合っていた

「私の愛する部下達だけは 最後まで生きて欲しい ・・・これが次の台詞」

「ハハ! 覚えているよ 何て言うか ハハハ 恥ずかしいと言うべきか・・・」

「そう? ごめん」

イサックは恥ずかしそうに答えると ナヤトレイは舞台袖に戻っていった 再びイサックの芝居が始まる

「私は死んでも 私の愛する部下達だけは最後まで生きて欲しい!」

だが その様子をみたアナベルは急に怒り出した

「これ 反則よ! アナベルも出て話すわ!」

「レディー! どうか我慢してください!」

シベリンは 前に出ようとするアナベルを止めようと必死になった

「でもこのお姉さんは出たじゃない! アナベルの出番はまだなの!?」

シベリンはアナベルを落ち着かせようと宥めたが 後ろからはボリスがシベリンに対して話かけた

「シベリンさん! シベリンさんが出る出番ですよ!」

「はっ!!」

舞台の進行に気付いたシベリンは 急いで舞台へと躍り出た

「隊長!! ここで何をしているのですか?」

「お~ 私の忠実な部下 私の右腕!」

「あまりお話にならないで下さい 声を潜めて下さい隊長! もうこの中にはあまり酸素が残っていません」

シベリンとイサックの芝居は順調だったが アナベルはそれどころではなかった

「も~う! アナベルはいつ出るの~ ね~え!」

「あなたの出番になれば」

落ち着かないアナベルに ナヤトレイは素っ気無く答えた

「いやだ! アナベルも出る!」

止める者がいなくなった舞台袖から アナベルが勢いよく飛び出した

「私はお姫様よ! キャハハハハ! お姫様がお前達を救ってやろう! 変身魔法を使うのだ!」

反対側の袖で見ていたランジエは アナベルの思わぬ登場に驚いたが 舞台では構わず演劇が続く

「だめだ! 息をするな! 酸素が足りないんだ!」

自分の台詞だけを叫んだイサックにランジエも戸惑いを覚えたが 場を取り繕おうとシベリンがアドリブで台詞を入れた 

「おお~姫! 酸素不足で頭がおかしくなったのですね!」

だがアナベルは思うままの言葉を口にする

「無礼な! アナベルは頭なんかおかしくなってない!! 許さんぞ!」

「我々はあの光の向こうに進まなければ! あの光だけが我々を救える」

イサックは再び自分の台詞を叫んだが 後の台詞を忘れてしまった

「い・・石を・・・ アハハ 石を砕くんだっけか?」

台詞を忘れたイサックに対し ナヤトレイは再びイサックの元へ寄り 台詞を伝える

cp5-19.jpg


「石を運び出して 光の通路を広げよう ・・・次の台詞はこれ」

「ワハハハ! 今度は本当にど忘れした! ありがとう レイ」

「うん」

台詞を伝えたナヤトレイは 満足したように また袖へと戻っていった

「ちょっと! お姉さんはどうして何度も出てくるのよ! お姉さんの番じゃないのに!」

自由に進む演劇に ランジエは諦め 一言呟いた

「船頭多くして船山に上る まさにこういう状況を表している言葉だ」

(民衆の友も規模が大きくなりすぎるほど 結成初期の主旨と離れつつある どんな状況でも同じように行動するんだな 人間と言うのは・・・)

演劇は続く アナベルは大きな声で叫んだ

「私はみんなを許さない!」

だがイサックも重ねるように大声で台詞を口にする

「石を運び出して 光の通路を広げよう!」

「イサック 静かにしてよ! アナベルが喋っているでしょ!!」

黙って見ていたボリスだったが アナベルを落ちつかせる為 舞台へと進んだ

「私のお姫様 あなたの美しさだけが世界を救えます あなたの美しさは光 ・・・その光が私達を救えるというのに どうして気付かないのですか?」

「・・・じゃ・・・じゃあ・・・ 早く石を運び出しなさい!」

「仰せの通りに・・・隊長!」

「アハハ! 石を移して光の通路を広げればいいのか! 諸君! 私に続け!」

ボリスが入った事により 演劇は一瞬上手く 軌道に乗ったかと思えたが またナヤトレイが演劇の中に入った

「これ以上 空気ない 苦しそうに顔をしわくちゃにして こうやって ウウウッ」

ナヤトレイは 台本に書かれた描写部分まで 演劇の台詞と勘違いし読み始めた

「私が犠牲になる事で 仲間たちを救えるだろう うめき声を出して床に倒れる ウウッ」

無尽に飛び交う台詞に シベリンもまた どこで台詞を言うのか分からなくなっていた

ボリスは完全に失敗だと呆れたが ひとつ溜息をついた後 芝居に戻った

「あなたが一緒にいれば 私も戦えるかもしれません しかし今の私達は互いに違う方向をみています あなたと一緒に行きたいが 前に置かれた岩と乾いた空気 そして互いが違う場所を見ている私達の瞳がそれを許してくれません 私は行かなければなりません 捜すべき物があります」

ボリスの台本には載っていない言葉に ランジエは昔の出来事を思い出した 本当に 遠い 遠い 思い出

「あなたは強く 純粋です 私が一緒に行かなくても 望む事を成し遂げなれるはずです あなたの美しい瞳は 世界を救う事が出来るでしょう」

振り向き様に言った言葉 ボリスは真っ直ぐにランジエの瞳を見つめていた

cp5-20.jpg


遠い昔の出来事 幼き頃の出来事 あの時ランジエが言った言葉の返事が 今ここで返って来た気がした

ランジエはゆっくりと舞台の中央へ歩み寄ると 最後の言葉を放った

「ありがとうございます 私達の公演はこれで終わりです」

一瞬 舞台は静まったが 直ぐにアナベルの言葉で騒がしくなった

「だめ! アナベルの台詞まだ終わってない!」

「アハハ 緊張しすぎて言葉がでてこなかったよ!」

皆が様々な表情を浮かべていたが 突然 どこからともなく声が聞こえた


『待つことは無駄ではなかった』



声だけが響く 

『例え捨てられても 待っていれば帰ってくると分かっていたから・・・』

姿は見えない

『希望は捨てられなかった・・・過ぎた思い出が私を支えてくれたから・・・』

憂いを見せ

『ああ 君達の演劇 ありがとう・・・ もう二度と公演など 出来ないとおもっていた・・・』

恩人に礼を重ね

『ありがとう・・・ありがとう・・・』

声は消えていった 



「これは・・・劇場の声なのか・・・?」





-エルラ島 劇場外-

外に出ると眩しい日差しが差し込んだ 劇場の中にいて気付かなかったが

どうやら一晩を劇場の中で過ごしたようで 朝となっていた


「終わり・・・でしょうか・・・なんとか劇は最後まで行いましたが・・・」

「ボリスのラストシーンのおかげだよ 演劇がいっぺんに整理された感じがしたからな」

「ああ ボリスの台詞・・・本当に最高だった! 普段とても無口だから あんな台詞は言えないと思っていたが 本当にカッコよかったよ もしかして経験談か?」

「ボリス きざ」

全員がボリスを褒め称えた そこへ突然あの少女が現れる

「それなりに面白かったわ 最後の場面も悪くなかったし めちゃくちゃな演劇だから 成功しないと思ったけれど」

「アナベル!?」

「アナベル・・・? そうね アナイスという名前で呼んでみるのはどう?」

「アナイス・・・」

「今回の賭けは私達の勝利のようですね 約束通り秘密を教えてくださいますか」

「秘密・・・ この劇場は随分前に捨てられたの でも残っている物は消えない 確かにここで公演が行われていたし その思い出は残っているから・・・ あの時あの場所に送られた人々も きっと帰ることを望んだはずよ でも帰れなかった だから彼らは その場所で再び思い出を作るしかなかったの 過ぎた思い出を上から覆ってやれるそんな思い出を・・・」

「・・・・」

「それであなた達に公演を頼んだの 過去に戻れないなら 新しいもので満たせばいいから 表現は出来なくても きっとこの劇場 物語を 公演を恋しがっていたはずよ エタは自分が物語りだと言う事を知っているから・・・ ・・・そして私も・・・」

「・・・・アナイス?」

「前に手に入れた紙切れ 持ってる?」

アナイスは小さな本を取り出した

「紙切れ・・・ やはりエタと関連しているのでしょうか?」

「うん 紙切れ持ってる」

「これを受け取って これは[約束の本] 残りが何枚あるか分からないけど 持ち運びに便利なはずよ」

「それは 残っている紙切れが まだたくさんあるということですか?」

「さあ・・・エタはあなた達が考える形態でだけ 存在しているんじゃない 紙切れで残っている場合もあるし そうじゃないこともある 言ったでしょ? エタは物語に過ぎないと」

「物語だって?」

「誰がどんな目的で何を書いたんだ? その内容は?」

「あせったところで何も始まらないわ あなた達に話して上げられる事は今はこれが全てなの 秘密はこれだけよ ・・・まさか ものすごいものを期待していたわけじゃないでしょう? 代わりにこれをあげるわ 毎晩来ていた商人が置いていったの 奪ったものではないから安心して 私の姿を見て逃げ出したのはあっちだから」

アナイスはボリスに シルバースカル予選参加券を手渡した

「商人? チェーザレさんが言ってたのは例の商人のことか?」

(うーんこのお嬢さんが幽霊の真似でもして追い出したようだな だから見つけられなかったのは当然ってわけか・・・)

「君はまた消えるのかい?」

「名残惜しいようね? でもがっかりしないで また会えるから 近いうちにね」

「・・・・・・・」

「・・・・うー イサック! アナベルお腹すいた!」

(元に戻ったようだ・・・ それにしても無事に終わってよかった)

「とにかくこれで参加は出来るようだ あとは大会出場だけだな」

「シベリンさん・・・」

「私たち チェーザレのところに行けばいい?」

「だめ! アナベルお腹すいた! ご飯食べてから行く!」

「アナベル ちょっとだけ我慢しろ 途中でおやつを買ってあげるから」

「いつもアナベルの言う事は後回しじゃん! イサック嫌い!」

「じゃあ 来ないで」

「アナベルに命令しないでよ!」

「命令じゃないけど」

「すまないなぁ レイ お前が我慢してやってくれ」

「イサックは黙っててよ! これはアナベルのプライドの問題よ!! このお姉さんがアナベルに来るなって言ったんじゃん!」

「あなたが 行きたくないと言ったから」

「ふう・・・まったく困ったなあ」

「レイ すまない」

「もうやめてチェーザレさんの武器店へ行きましょう シベリンさん 移動してもいいでしょうか?」

「ああ・・・ 演劇で忘れていたが もう本当に始まるんだな・・・」







-武器店 グラディアトーレ-


街に戻ると さっそくチェーザレに予選参加券を渡した

「締め切りぎりぎりに持ってきたという・・・品物は確かに確認したという・・・これから広場にいってみろという・・・」

「広場?」

「そうだという 予選は広場で一対一の対決で行われるという・・・ 予選にパスしないと本選には出動できないいう・・・ 時間ぎりぎりに持ってきたという 街の中央に集まれという・・・」

「わかりました 直ぐに行ってみます」

「健闘を祈るという・・・」





-ブルーコーラル特設会場 シルバースカル予選-

会場に到着すると 予選は既にはじまりを見せていた 中央ではエンリコが司会として場を仕切っている

観覧席にはたくさんの観客が集まり 予選の始まりを見ていた

慌てて予選の登録をした一同は 早々に予選の第一試合を行う事となった

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「お待たせしました! 私はシルバースカルの司会を担当するエンリコと申します まずは初めていらっしゃった方の為に簡単な説明を致します シルバースカルは国籍 性別 年齢に関わらず誰でも出場でき 優勝した暁には インゲスビッヒ女王様の直属 守護騎士になれる資格を手にすることができます 今回のシルバースカルでは 捨てられた劇場 真夏の夜の夢にて予選参加券を手に入れるミッションが追加されました つまりここにいらっしゃる方は そのミッションを通過された素晴らしい方々なのです 私はそんな素晴らしい方々の試合を楽しみにしています」

大会の係員が シベリンを試合場へ案内した 同様に向こう側でもシベリンの相手となる選手が案内されている

「それでは今から予選を開始いたします!!」

相手はがっちりとした体格の傭兵だった 斧を構え シベリンを睨みつける

「いよいよか・・・」

シベリンもまた 槍を構え 相手に対峙する

「フン 一瞬で片付けてやるぜ」

「うまくいくかな?」

一言ずつ交わすと エンリコの掛け声が発せられた

「始め!!」

声と同時に互いがぶつかった 挨拶がてらに 軽く武器が交差する

すぐさまシベリンを潰そうと 男の斧が振り上げられたが それより先に 男の首元に槍の先が中てられていた 

「うッ!?」

「降参だろ?」

シベリンの真っ赤な髪が風に流れる 

「そこまで! 試合終了!」

試合は 一瞬で終わった








「さすがですねシベリンさん」

「あの人 弱かった」

「ああ 予選は問題無く行けそうですね」

その後 二度の予選を行ったがシベリンは難なく勝ち進み 本選への出場が決まった

観客はシベリンの強さに魅了され 歓喜に包まれたが シベリンは喜んではいない

この後に起こるであろう オルランヌの公女との事が 気掛かりで仕方がなかったからだった


-試合会場脇-

「試合お疲れ様でした シベリンさんの実力はよく分かっていますが それでも実際に見守っていると心配になりましたよ」

「ハハ おおげさだな」

「顔色よくない 心配事の多い表情 シベリンらしくない」

「そういえばオルランヌ公女の話はどうなった?」

「まだこれといった騒ぎが無いので・・・他の組に編成されたのではないかと思います」

「イスピン・・・」

「やはり身分が身分なので 非公式に参加している可能性は有ります」

「みんなー! あっちで1組と2組の予選通過者を告知するって! 見に行こうよ!」

「アナベル 走るなと言っただろ! まったく このおてんば娘は・・・」


-予選通過者 発表告知板-


「どれどれ 本選進出のリストは・・・」

「この名前は何かな? ロベルト・リカバリー? 変な名前! 他にも変な名前の人がたくさんいるよ!」

「それはシベリン様の偽名です 語呂がよくない点は 大目に見てください」

「うんうん このおじさんによく似合う名前だわ」

「ふむ・・・思ったより出場者が多いですね 有名な傭兵の名前もあるし・・・」

「・・・・これは!」

「どうした?」

「なになに~?」

「・・・ミラだと!?」

「ボリス ここにルシアンの名前がある」

「ルシアンが・・・シルバースカルに? ここにいる?」

「一体 どうなっているんだ・・・・・・」

一同は別れた仲間たちの名前を見つけ不安になった

順調に進むはずの計画は 少しずつ狂い始めたのか

始まりを見せたシルバースカルは 

国の陰謀と仲間への想いを飲み込み 前へ 前へと進んでいく
















-数日後 エルラ島 劇行前-



「この劇場に来るなんて いつ以来かしら 昔の思い出が次々と蘇りますわ 全て消え去って 痕跡だけ残っているなんて 歳月と言うのは本当に無情ですわね」

「アルビナさん それでも再建の話がでてよかったですね これまでの観光収益を通じて得た基金で この劇場を建て直すことが出来るなんて本当に嬉しいですよ」

「ハハ エンリコさん この劇場が修理されて昔のような名声を取り戻したら その何倍もの収益が収める事が出来るはずです」

「ディベスさんもそう思いますか! 早く昔の劇場の姿に戻してあげたいですね あそこにイスを置いて カーテンはあの色に合わせて・・・」

「エンリコさんの助言通りにすれば すぐ昔の姿を取り戻せますね いや 昔よりもずっと派手になりますよ ハハ」

「ああ・・・ またここで演劇を見られるなんて夢のようです・・・さあ 想像してみてください 公演が始まる様子を!」


cp5-22.jpg



多くの人がまたこの劇場に集まります ここで新しい物語が繰り広げられるのですから

子供達は演劇を見ながら夢を持ち 大人達は童心に帰ることが出来るはずです

俳優の小さな動きひとつひとつに意味が込められ 全ての場面が美しい思い出として刻まれるでしょう

私達の幼い日が そうであったように

また 新しい物語を

また 新しい思い出を 

胸に刻む日が・・・











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ローゼンバーグで活動中
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